26話 アネスタ王国 (5)
宿屋は銀貨2枚から泊まれるらしい。
食事は銅貨3枚なのでメノウの稼ぎでは宿に泊まる
だけで精一杯だった。
「くっそぉ〜あの受付のやつのせいで……」
「自分のせいでしょ?師匠はもっと鮮度を保つ魔法
をかけながら採取してましたよ?僕には魔力が少
ないので無理ですが…」
ハルカは、なんでも出来るわけではない。
元々もている魔力は渡り人なので多いらしいのだが
問題はその出し方に問題がある。
異世界から落ちた人は魔力を使う事がなかったせい
か、うまく魔力を外に出せないらしい。
そのせいで魔力が身体に溜まっていって耐えきれず
に早く亡くなるのだと教えてもらった。
だが、ハルカは錬金術という方法で外に出す方法を
知ったおかげで、魔力回路を描く事で大量の魔力を
使う事ができている。
さっきのカンテラもその一つだった。
外に出せる少量の魔力でも扱えるモノを作ったのだ
った。
「そういえば、さっきのボアはなんで出さないん
だ?」
「本当に貴方はバカですか?薬草採取をして居て
ボアにあったので討伐しました?そう言うつも
りですか?」
「あぁ……何が悪いんだ?」
「……はぁ〜……本当に貴方は……」
呆れるくらいにメノウはバカだったらしい。
討伐を受けたパーティーが逃げたのだ。
そして、それに巻き込まれたと言う事実を忘れてい
るのだ。
ボアはなかなかに倒し難い魔物で、剣は通らず魔法
が通じにくい。
それはボアの身体を覆う体毛にある。
それを、倒したのだ。
もし、ギルドへ出していたらどうなっていたか?
考えれば分かる事だった。
依頼を受けたパーティーがボア討伐を途中で投げ出
した事がバレて、そのパーティーは降格の恐れがあ
るのだ。
それを見ていたハルカ達はそのパーティーからあら
ぬ疑いをかけられた挙句、恨みを買うだろう。
それだけならいいが、横取りされたと言われたらた
まらない。
最近来たばかりの冒険者と、長年そこで活動してい
る冒険者とでは信頼関係も違ってくる。
その上で、さっき受付けに難癖つけたとあれば、尚
更信用などないだろう。
「なら、どーすんだよ?売れないのかよ?」
「売りますよ。でも、ここは冒険者なんですから。
商人ギルドの方に直接持っていけばいいんです」
「それって安く叩かれないのか?」
「叩かれるでしょうね。普通なら……ですが」
そう言って、ハルカは地図の冒険者ギルドから一番
離れた場所にある商人ギルドへと来たのだった。
「すいませ〜ん。買取りいいですかー?」
ドアを開けて入っても誰もいない。
仕方ないので、声を上げたのだった。
「おー。待ってろ。すぐに行くからな」
奥から声がすると、メガネをかけた少し偏屈そうな老
人が出てきたのだった。
「こちらでこう言うものは買い取ってもらえますか?」
そう言って出したのはボアではなかった。
なんの変哲もない回復ポーションだった。




