25話 アネスタ王国 (4)
映像を見ている限りでは、冒険者達が不利に見える。
だが、下手に手を出して文句を言われるのは避けた
かった。
ハルカもメノウも目立つつもりはないからだ。
難癖をつけられると、お金を稼ぐのにも支障が出てく
るだろう。
早く船代を稼いでこの国を離れたいのだが、付いてく
るというメノウの分もとなると、金銭的に心許ない。
いっそ、放って一人で船に乗ればいい。
そうも思ったが、なんだか煩くついて来そうなので、
仕方なく一緒に稼ぐ方向で考えている
自分の食い扶持は自分で稼ぐ。
それを徹底的に教え込もうと思った。
一応ハルカだけなら、魔道具で稼いだ分があるが、
メノウにはこの際、自分で稼ぐ事を覚えさせようと
思ったのだ。
こうして簡単な採取依頼だったはずなのだが、今は
なぜか緊迫した戦闘場面を見守っているというわけ
だった。
「なんか後ろの魔法師おかしくないか?」
「ん?……なるほど……メノウさん、ここから出な
いで下さいよ?」
「ん?なんでだ?」
その言葉と共と、近くで爆発音が響いたのだった。
数人の足音が通り過ぎるとハルカはカンテラの下の
つまみををもう一度回した。
今度は青い色に変わる。
「僕は非戦闘員って分かってますかね〜」
文句を言いながらも、近づいてくるボアが横を通り
過ぎようとしたところでカンテラを翳した。
少しの魔力を込めるだけでいい。
それだけで、辺り一面が氷の彫刻のように凍てつい
たのだった。
本当に一瞬だった。
魔法を唱えるよりも早く。
ボアすら気づく前に凍らせたのだった。
「これで終わりですね」
「おいおい、なんだよ……それ」
「魔道具ですが?」
「そんな魔道具見た事ねーよ?」
「そうですか?戦えないのだから、これくらいの準
備をするのは当然でしょう?」
唖然とした顔のメノウをよそに、ハルカはボアに触
れるとマジックバッグの中へと回収したのだった。
「おい、それってマジックバックかよ!」
「はい……そうですがなにか?」
「俺にはないのかよ?」
「ないです。ご自分で稼いで買ったらいいのでは?」
「ぐっ……ケチだな……」
「ケチで結構です」
ハルカはギルドへと戻ると依頼された薬草だけを取
り出したのだった。
隣ではソワソワしながら、メノウが自分で取った薬
草を提出して居た。
「こちらは依頼通りなので、銀貨5枚ですね。またお
願いします」
「はい、ありがとうございます」
丁寧に挨拶をするとハルカは銀貨をしまった。
その横の受付ではメノウが報酬を受け取っていた。
「こちらは依頼通りの数でしたが……薬草の質が悪
いので銀貨2枚になります」
「おい、依頼は4枚だろ?なんで半分なんだよ?」
「それはですね。薬草の品質が悪いからです。本来
ならば買い取らないところですが、依頼者が早急
にとなっておりますので、仕方なく半額で買取り
させていただいているのです」
「取ってくればいいんだろ?それにハルカは同じ量
でも銀貨5枚じゃねーか!」
「ですから、それは先程も言った通りで……」
メノウは納得できないとでも言うように苛立ちを募
らせたのだった。
そこでハルカは横まで来ると、ハルカの取った薬草
とメノウの取った薬草を並べて置いてみたのだった。
「メノウさん。これを見て違いが分かりますか?」
「なんだよ?遅かったせいでお前の方が鮮度が保た
れてるって言いたいのか?」
不貞腐れたように言うメノウに、ハルカは薬草の切
り口を指す。
「これを見てもわからないですか?メノウさんのは
無理矢理千切ってきたように見えますよね?でも、
僕のは違うんです。一本一本斜めに切っているの
が分かりますか?これで、鮮度が格段に変わるん
です」
「なんだよそれ……早く教えろよ?」
「採取の際に説明がありましたよね?聞いてなかっ
たのですか?」
「あ………」
一応受付けの人が教えてくれてはいたのだった。
だが、メノウはボア狩り依頼が取られた事で全く聞
いて居なかったのだ。
「薬草採取でも、意外とやり方次第では稼げると言
っているでしょ?これからはしっかり説明は聞く
事をお勧めしますよ」
「なんだよ……年下のくせに……」
「その年下に負けてるんですよ?」
大人な対応をするハルカに、メノウはぐうの音も出
なかった。




