19話 赤の塔の主 (2)
結局、時間はかかってしまったが毒の進行を遅ら
せた事で、やっと解毒薬を作る事に成功した。
後遺症は残ったが、無事命を取り留める事が出来
たのだった。
「タヒソ・エクドール準男爵、よくやった。其方
には男爵の位を与えよう。これからも赤の錬金
塔の主としてイーサを支えてやってくれるだろ
うか?」
「はい、勿論でございます。公爵様」
オスタリアの一番の権力者でありマーロ公爵に言
われるとタヒソ男爵はイーサに一生仕える事を誓
ったのだった。
「それと……いまだに犯人であるメノウが逃げお
おせたままなのだ。あの、牢での看守も奇妙な
事を言っていたしなぁ〜」
「そ…それは…幻惑のポーションのせいかと…」
「幻惑のポーション?」
「はい、作るのはとても難しいですが、ありきた
りの材料でできるので、腕さえあれば…しかし
買うとなると、とても高価なモノなのです」
牢で使われた幻惑のポーションがどれほど高価な
モノなのかを説明した。
そして、牢に入れた時は、二人とも何も持ってい
なかったのだといっていた。
「兵士の身体検査をしたと言うからな。何も持ち
込んではいないはずだが…」
「それなのですが、牢の中に薬草の粉が残ってお
り………多分、そこで作ったものと…」
タヒソは自分で言っておいて、疑問が生じる。
何もない場所で錬金術など使えるだろうか?
錬金鍋や薬草、鉱物などの材料があって、それに
あった作業道具がいるのだ。
それも無しに作れたとなれば、天才としか思えな
かった。
牢の隅に転がっていた袋の中には、手のひらに
収まるほどの木の実が入っていた。
これは娼館の女性が自分の性器に入れて濡らす為
に使っていたと聞いた事があるものだ。
看守が渡したのだろう。
と、なるとやはり逃げた理由はそう言う事なのだ
ろう。
こんな計画性のある大それた事を、あのメノウ様
がやるとは到底思えなかった。
同じお茶にお菓子を食べていた、タヒソも大臣達
も無事で、どうやってイーサ様にだけ毒を盛れた
のだろう?
疑問は深まるばかりだった。
「もしかしたら……メノウ様の専属メイドの言って
いた言葉は全部が嘘で、本当は別に指示した人間
がいたとしたら……」
言葉にしてみて、ゾッとした。
まだ、この城にイーサ様の命を狙う者がいるといっ
ているのだ。
考えたくもない事だ。
タヒソはマーロ公爵からの褒美の言葉と爵位を貰う
とイーサの見舞いに来ていた。
そして、自分の考えが正しいかを聞いてもらおうと
部屋の前に来て、足をとめた。
すると、丁度ドアが開き、中から可愛らしい格好を
したアンバー様が出てきたのだった。
「あ!ごめんなさい。今、イーサ兄様のお見舞いに
来ていたんです。えーっと……イーサ兄様のお友
達?」
「私は、赤の錬金塔の主で、タヒソといいます。ア
ンバー様」
「タヒソ?」
「そうです。イーサ様の具合はいかがですか?」
「はい、お話してももんだいないと言っていました」
「それはよかったです」
にっこりと笑うとタヒソはドアの隙間から見えるイー
サの姿を確認すると、少し安堵したのだった。




