ヲタッキーズ168 萌えるラギィ Part-2
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第167話「萌えるラギィ Part-2」。さて、2話完結、スーパーヒロインによる連続殺人事件の後編です。
前回、仲間の部屋を爆破されたヲタッキーズは、カメレオンのようにヲタクになりすます連続殺人鬼に手を焼きますが、ついに犯人を廃倉庫に追い詰めて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 元カノは見せない
「ラギィ、生きてるか?」
ドアを体当たりで破りサイクロナイトで爆破された室内へ飛び込む。オレンジ色の焔がメラメラと萌え、残骸が崩れる。
「ラギィ!返事をしてくれ!」
リビングは全壊だ。全てが吹っ飛び、焼け焦げてる。原型を止めるモノは何1つなく残ったモノは全て火を噴いて炎上w
「ラギィ!キッチンもダメか…」
バスルームを覗く。すると、浴槽の中から黒い手が伸びてラギィが顔を出す。手以上に顔も真っ黒…しかし、生きてるw
「ラギィ!大丈夫か(オールヌードだけどw)?」
「きゃー!おまわりさん、痴漢です!」
「今は恥ずかしがっている場合じゃないぞ。部屋を爆破されたんだ!」
しかし、ラギィは警戒を解かない。
「テリィたん、もう元カノなのょ!タオルとって」
「萌えちゃってるなー」
「じゃあバスローブ」
「炎上中。萌えない服は無いのか?」
「ちょっと!」
振り向くと怒りと共に胸を隠す(オールヌードの)ラギィ。
「失礼(ガンプラ、じゃなかった、眼福だー)」
「テリィたん、ジャケットを脱いで!」
「お安い御用」
ちょうど熱かったしなw
「見ないで!」
「見てない」
「ホントに?」
「だから、見てないって」
「じゃ良い?」
振り向く。彼シャツならぬ元カレジャケットだ。萌え。
「直ぐバスタブに飛び込んだの」
「歩ける?」
「うーん少し怪我したカモ」
傷ついた元カノに肩を貸す僕。カッコ良い。
「さぁ外までゆっくりだ。大丈夫だぞ。痛みは?」
「テリィたんの方が辛いんじゃないの?」
「おや?足を引きずってるな」
すると、ラギィは唇をスボめる。
「なぜ来たの?ってか、来るなら遅っ」
サイレンが近づいて止まり、消防士が入って来る。
僕はコレまでの経緯を話したくてウズウズしてる。
「じゃ最初から話すょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
バッチを示すショア。警官が敬礼し殺人現場に入れる。
「WIB(women in black:MIBの女子版)」
「どうぞ」
「…ラギィ、どう?」
救急車の後部ドアを開けて、イケメン看護士にかしずかれ、大層に包帯を巻かれているラギィを見つけて、声をかける。
「大丈夫ょ」
「部屋に何か異変はあった?」
「なかった。ドアは施錠されてたし…事件は解決したと思ってたから気がつかなかっただけカモ」
ソレだけ聞いて即決するショア。
「貴女を外すわ」
目をむくラギィ。
「はい?」
「犯人逮捕まで外れて」
「待って。部屋が爆破されたのょ?コレは私の事件。私が最後まで担当するべきだわ」
煤けた顔の額から血が噴き出し鬼気迫る様相w
「…わ、わかった。でも忘れないで。私のルールに従って。私の言う通りに動くコト。警備も常時つける。OK?」
「…OK」
「みんな、もう入っても大丈夫だって」
この最悪タイミングで声をかけたバカな僕。ソレを聞きクルリと背を向け、左右に歩き去る2人。僕は呆気にとられるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、ラギィは神田消防のジャンパーを着てる。ピッタリのサイズがあったのだ。現場の残骸の中からチェーンを発見。
「父の時計のチェーンだわ。肝心の時計は何処かしら?」
「廊下にはなかったな」
「ラギィ。寝室はまだマシょ。でも、服は全部煙臭い」
ヲタッキーズのエアリが顔を出して報告。因みに、彼女はメイド服だ。ココはアキバだからね。
「クリーニング代も保険が下りるかしら」
「無理じゃない?」
「ココで爆発したみたいょ」
ショアがリビングのフロアで残骸をかき分け指差す。
「見逃すほど小さかったのね」
「ペンコの部屋にあったサイクロナイトね。しかし、仕掛けられてると、なぜわかったの?」
「テリィたんが気がついたの」
僕の出番だ。
「実は、ペンコは右手で自殺をしたが、僕とラギィが窓越しに見た人影は、左手に音波銃を持っていた。撃つ瞬間は視界から姿を消したが、手を変える時間はない。真犯人がペンコを撃ち、自殺に見せかけた」
「部屋の外で銃声を聞き、WIBは直ぐ突入した。犯人が部屋から出る隙はなかったわ」
「真犯人はずっと部屋に隠れてた。私達は、ソレを見逃したってコト?今頃、ペンコのベッドでヌクヌクと寝てるのかしら?」
そうはさせるかw
「起こしに逝こう」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
剥製士ペンコの住居は、神田リバー沿いの安アパート2F。
「ねぇ。ちょっと来てこれを見て。何か見つけた」
「どうした?」
「クローゼットの奥に隠し部屋を見つけたわ。中に洋服が置いてアル。うわ、ペンコが着てたのと同じ服ばかり」
ライトで照らしながら確認するラギィ。
「見て!ペンコそっくりのウィッグまであるわ。真犯人は、ペンコ推しの(コスプ)レイヤーさん?」
「うーん確かに目撃証言と同じ格好で現れれば、誰でもペンコだと思ってしまうわ」
「つまり、モノホンのペンコは、ずっと監禁されてたってコト?自分が殺人犯に仕立て上げられてるとは露知らずに…粘着テープで自由を奪われたママ」
ショアは、床に散乱するガムテープの屑を指差す。
「そして、3人の被害者はペンコにつながるよう、慎重に選ばれた。濡れ衣を着せるために…犯人はカメレオンょ。身元を変幻自在に変える。しかも、ペンコになり切ればなり切るほど、自分に捜査が及ばなくなるコトも知っている」
「そして、容疑者が死ねば、事件は解決したコトになるし」
「その間ずっとココで息を潜めてた。こんな近くにいたのに見逃してたわ」
ラギィのスマホが鳴動。犯人からだw
「ギャバ子。貴女、なぜ死んでないの?」
「御愁傷サマ」←
「今宵で全てが終わるハズだった。でも、続けないといけないみたいね」
断末魔の悲鳴。音波銃の発射音。3発。
第2章 スマートボードと地下鉄
殺人現場。ビルで囲まれた路地裏。外壁にもたれかかるように倒れてる死体。ラギィがライトで照らしながら屈み込む。
「スマホのGPSから身元が割れた。ロリア・ロドリ。勤務先のホテルのIDで確認」
「帰宅の途中?」
「銃弾を見つけたわ」
ショアが外壁にめり込んだ弾丸を指差す。
「文字は…今回は彫られてナイわ」
「今までは計画的だった。でも、今回は怒りに任せた犯行みたいね」
「私が生きてたから?」
迷惑そうなラギィ。そりゃそーだ。ショアがつなぐ。
「ラギィ、自分を責めないで。でも、犯人は貴女の生存を知ってた」
「私を観てたから。私の部屋を爆破した後も…犯人は、他の現場でも犯行後に止まっていたのかしら」
「現場の写真は、十分に見比べた。野次馬は毎回、全員顔認証済みょ」
さすがWIB(women in black:MIBの女子版)←
「野次馬の中にはいなかったってコト?」
「カメレオンは、その場に溶け込んでるわ」
「野次馬じゃないなら仲間の格好をしてた?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に設置されたWIBのウォールーム。
「この婦警。まともに写ってる写真がナイ。決して偶然じゃないわね。上手くカメラを避けてる。警察の捜査手法を熟知してるわ」
「他の警官から情報を集めましょう」
「ソレは無理ょ。ペンコにコスプレした時の姿しかワカラナイんだから。彼女のリアルは、誰も知らない」
冷静な指摘なのだが、ラギィはオカンムリだw
「テリィたん!じゃ他に何か良い案があるの?早く捕まえなきゃ!また殺人が起きるわ」
「ラギィ警部。感情的だわ、落ち着いて」
「ショアは黙ってて。感情的?当然でしょ。部屋を吹っ飛ばされたのょ?冷静でいられる方がおかしいんじゃないの?」
どーやらナダメ役はショアに交代だ。
「ラギィ。"いろは"を覚えてる?」
僕は、元気良く挙手。だが、指されないw
「スーパーヒロインによる連続殺人だった。犯人は交通違反の切符から捕まえた」
「お見事。サスガはWIBだわ。で、だから?」
「そーゆー小さな手がかりを積み重ねれば、逮捕に結びつくコトもアルってコトょ。犯人には、大きな欠点がアル。ソレは、自惚れが強いってコト」
確かにそうだ。
「警察を出し抜いた自分の能力を自慢したがってる。彼女の犠牲者は弁護士。犬の散歩係。剥製士。全員ペンコの愛犬に繋がってる。なぜ犯人は、ペンコの私生活をそこまで知ったのかしら」
「ソレは…ペンコの知り合いだから?」
「ソコがスタートょ!ペンコを犯人ではなく、事件の第一被害者と考えるの」
腹落ちするラギィ。
「ペンコと犯人の接点を探すのね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバーの向こうの"秋葉原マンハッタン"に日が昇る。オレンジ色の朝焼けが摩天楼を染める頃、僕は御帰宅スル。
「テリィたん!」
歓声を挙げ抱きついて来るのはスピア。
自称、僕の"元カノ会"の会長サマだ。
「なんだ。大丈夫さ。無事だょ」
「ラギィはどこ?」
「まだ署だ。働いてる」
肩に手を置かれ、振り向くとミユリさんだ。
「しかし、スゴい爆発でした。私も吹き飛ばされて…ラギィが助かったのは奇跡ですね」
「リビングにいたんだけど、直ぐにバスルームに駆け込み、バスタブに飛び込んだそうだ。ドアとバスタブが彼女を救った」
「スゴい。さすがはテリィ様の元カノ」
今カノの余裕発言←
「でも、なぜ犯人はラギィを狙うの?」
「まだ半分妄想の仮説しか立てられないけど、情報に厚みが増した。コレで戦略が立てられる」
「…テリィたんは狙われないの?」
ミユリさんが気を効かして?パントリーに姿を消す。
「もちろん、狙われる。でも、死なないから、当分僕の元カノ会を仕切ってくれょ」
胸がスイカみたいなスピアをギュッとハグ。天国だー。
「テリィ様。お着替えです」
「ありがと。直ぐ署に戻らなきゃ」
「御屋敷のコトは御心配なく」
着替えた僕が去ると、今度はミユリさんがスピアをハグ。
「ほらね。テリィ様は無事だったでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に立ち上がった捜査本部。僕はギャレーでコーヒーを2つピックアップ。階段から降りて来たラギィに1つ渡す。
「みんなは?」
「エアリとマリレは、ペンコの妹に会ってるわ…わ、パーコレーターの出涸らし?」
「ソレがウマいんだょ」
僕は、断然パーコレーター派だ。
「ショアは…市長と会ってお話し中ょ多分」
「解決したと思ってたのに、市長もさぞかしショックだろうな。スーパーヒロインの連続殺人鬼が野放しとあってはインバウンドも離れてくぞ」
「でも、世間は未だに事件は解決したと思い込んでる」
公表のタイミングが難しい。
「ペンコと言えば、彼女についての情報は?」
「34才。独身。"blood type BLUE"。サイコキネシスでグレード0.2」
「マッチ箱も動かせないな。他にも当てようか?愛犬バンプキンの異常なかわいがり方からみて、恋人、犬友、共にナシ」
スラスラ妄想スルw
「犬友?」
「犬を通した友達だ。まぁリアル友達もいないだろうけど。だって、飼い犬犬の剥製を強盗スルんだぜ?」
「妹に聞いたけど、ペンコは一匹狼だって」
妹に聞き込みに逝ってたエアリとマリレが戻る。
「何ヶ月か前に解雇されてからは、毎日スターボックスに座って職探しをしていたらしいわ」
「犬以外だと、奴は"腐女子ズ"のファンだった」
「気の毒に」
"腐女子ズ"は、アキバ発のランジェリーフットボールのチームなんだがメチャクチャ弱い。もともとヲタクだからねw
「ショアは、犯人からペンコに近づいたと分析してた。友達でないなら、世間話をして知り合いになった可能性がある」
「なるほど。ペンコがコーヒーショップで職探し中に席が隣になったとか?」
「ペンコが腐女子ズのファンと知って接近したのね?」
なぜか大きくうなずくマリレ。スポーツ好きなのか?
「この部屋に欠けているモノは?」
ホワイトボードに貼られたペンコの部屋の写真を指差しながらラギィは僕達に尋ねる。次々と鋭く本質を看破スル僕達。
「センスだな」
「オトコね」
「あのね…正解はTV。絶対にランジェリーフットボールの試合を見にスポーツバーに通ってたハズょ」
そっか、さすがだ!
「確かに腐女子ズの弱さを1人で見るコトほど、辛いモノは無いしね」
「全くだわ」
「OK。じゃ2人は、コーヒーショップでペンコを見た人がいないかを調べて。私とテリィたんは、スポーツバーを調べる…ソレから、今度ショアの話をしたら、ぶっとばす」
スゴいジェラシーだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昭和通りの昼下がり。首都高下の騒音と渋滞の合間をぬい行き交う人々。メイドバー&グリルと描かれたネオンサイン。
「バーのハシゴは楽しいハズなのに、ソレがどうせまた"知らねぇよ"と追い返されるだけだと思うと、何だか虚しいな」
「ボヤかないで。ココは違うわ。ほら!」
「おおっ!」
店内に"連続殺人犯が来た店"との横断幕wインバウンド向けにHome of Akiba's very own serial killer PENKO!←
「今、捜査中だから、その幕は外してください」
「客集めのためなのに。ほら、秋葉原で御屋敷を続けて行くのって大変ナンだから」
「ペンコは最近愛犬が死んだって話をしてましたか?」
応対に出たメイド長は呆れ顔だ。
「しょっちゅうょ。妹が死んだと悲劇を嘆いて泣くコトもあったわ。オスなのに」←
「他の客と何か話してましたか?」
「いつも1人で試合を観てたけど…そーいえば、この前、誰かと話をしてたわ」
犯人か?
「どんな人?特徴は?」
「ちょっと変わり者だったわ。確かあっちに座ってた」
「どっち?」
メイド長が指差す先に、今日は客が1人で飲んでるw
「類は友を呼ぶって奴ね。女同士で何やら話してた」
「その彼女はカードで支払いを?」
「私達と口を聞いたのは"カーシェア呼んで"って一言ょ。ハッキリ覚えてる。試合が延長戦に突入した時。お陰で結果を見逃しちゃったわ」
スポーツメイドバーって楽しそうだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「警部。その夜10時45分にカーシェアが呼ばれてます」
「どこで車を降りたの?」
「バリク通りとダウグ通りの角」
ホワイトボードに張った地図に赤丸をつけるラギィ。
「自宅かな?ソレとも勤務先?」
「いずれにせよ、その周辺に5万人は住んでる。手がかりは女性とだけ。外見スラわからナイ」
「人を探す手がかりは外見だけではなく、行動からも割り出せるわ…お2人さん、ウォールームに来て」
ショアの声かけ。ココは大人しくついて逝く。
「行動パターンから犯人を特定出来るのか?」
「今まで、彼女は他人のフリをしてたから、行動にバラツキがあったわ。でも、今ならわかる。自己顕示欲が強く勝負好き。IQが並外れて高い。そして自分のIQを常に自覚したがっている。だから、メンサやプロメテウスなどの高知能団体に属しているハズ。しかも、カメレオンだから他人を名乗って生活してる…ソレと文学に興味がある。ソレは彼女の"宇宙女刑事ギャバ子"への執着からも伺えるわ。文学好きという前提で、彼女が購読してそうな雑誌もリストにしてみた」
「それ、ほとんど僕も購読してるな」
ウソなんだけど、ショアは大きくうなずく。
「テリィたんも人を殺すでしょ?SF小説の中で」
「でも、コレじゃ範囲が広くない?」
「確かに、その住所に住んでいる人も、その雑誌の購読者も多い。でも、両者を組み合わせれば、上手くいく場合もアルわ」
ラギィが皮肉っぽく続ける。
「違反切符の時と同じみたいに?」
「そうはいかないわ。絵が出来上がるまでは、パズルのピースを地道にハメる作業を、根気よく繰り返す必要がアル。スマートボードが…エボリ捜査官?」
「はい。バリクとダウグ周辺の雑誌の購読者と高知能団体メンバーを調べています」
エボリがキーボードを叩き、次々とデータがリストアップされ、スマートボードのマップに続々と電子的にプロット。
「ヒットは17人」
「データと照会して」
「連続殺人犯なら前歴や通院歴があるハズょ」
答えは瞬時に出る。
「誰も一致しません」
「まぁ仕方ナイわね。じゃ2時間以内に全員を連行して…何?どうしたの?」
「見てください。クリス・ドハテ。免許証はあるが、社会保障番号を見ると、クリス・ドハテは6年前に死亡しています」
ウォールームに衝撃w
「他人を名乗って生活してるワケね?」
「YES。カメレオンのように」
「その死んだ女の住所は?」
スマートボードにデータが走って明滅。同時に表示されたのは"キャリアガール殺害される Akiba daily ledger local businessperson found murdered"の雑誌記事。
「バリクとダウグの角の近くです」
「うーん…さすがにコレには感心したわ」
「ソレは捕まえてからょ。さ、行きましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ライト付きの短機関銃を上下左右に向けながら進む、迷彩服に完全武装、対テレパス用フリッツヘルメットの女戦闘員。
高速ドリルで瞬時に鍵ごと抜き、ドアを蹴破って突入する。「クリア!」「クリア!」「クリア!」…モヌケのカラだ。
「エボリ捜査官、誰もいません」
「くそっ」
「しかし、異様な部屋だ」
天井から無数のメモが吊るされている。活字のモノもあれば殴り書きもアル。息を呑む女戦闘員達。
壁と逝う壁には、今までラギィが解決した事件の切り抜き、写真などが、ビッシリと張られている。
そして、部屋の奥にラギィの写真の超アップ。
「キモい。結局、いわゆるストーカー?」
「過去にも同じコトを誰かにしてたのかしら」
「…僕のサイン本だ」
"to Scotte write what you know(スコテ、執筆頑張れ)"
「あらあら。テリィたんったら、連続殺人犯を励ましてるわ。スコテって覚えてる?」
「さっぱりだ。毎回星の数ほどサインするからね」
「こんなのがありました」
女戦闘員が"ギャバ子ヒート"と描かれた草稿を発見スル。
「犯行声明?」
「いいや、原稿だ」
「何なの?」
僕は、草稿を読み上げる。
「"…ギャバ子が音波弾を見ると、それぞれに文字が彫られている。並び替えると、彼女の名前になった…"何なんだょコレ?小説のために事件を起こしたってコト?」
「他にも執筆してるわ」
ラギィが別の草稿を発見w
「"Wotaku terrors"。乙女ロードでスーパーヒロインを殺す話みたいね」
「実際にあったよな。確か犯人は逮捕された」
「捕まったというか…犯人は自殺したのょ」
草稿をめくりながら話に割り込むショア。
「身代わりだったのかな?ペンコの時と同じに」
「しかし…殺人の証拠になるだけなのに、なぜこうやって記録を残すの?」
「きっと精神疾患の症状ね。記念品を残したいのょ。記念品として残すとともに、フィクションとして事件との距離を保ってた。そこにギャバ子が現れた。彼女の小説と同じように1部は事実。1部はフィクションだから、対決したくなった」
迷惑な女だ。
「ラギィさえ狙わなければ、ペンコが犯人だったで幕だったのにな」
「刺激を感じるために、さらにエスカレートした。それか、実は強迫性人格で、小説の結末は自分で決めないと気が済まないとかね」
「ショア捜査官、指紋を採取してますが、1つもありません」
ショアの草稿をめくる手が止まる。
「指紋を残さずに生活するコトは不可能だわ」
「指紋がないのね。子供の頃の火遊びで火傷をしたとか…」
「わからなくていいわ。全部、元に戻して!引き上げるわ。奴の帰りを狙って待ち伏せしましょう」
自ら現場を去るショア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
WIB移動指揮車。指揮卓の前にキャスター付きチェアに座って忙しくスイッチングするエボリ。
狭い車内の奥には(何もしないw)ショアとラギィと僕が、冬眠してる鯉みたいにトグロを巻くw
「ショア捜査官。監視チームが配置につきました」
「了解。スタンバイして」
「みんな、聞いてくれ。犯人は半島系の女子165cm、推定50kg…」
隣のバンの中で短機関銃を構え待機スル女戦闘員。タクシードライバー。バッグを提げたメッセンジャー。犬の散歩係…
全員ヘッドホンをつけている。
「奴は我々の戦術に詳しく、常に不測の事態に備えている。注意してくれ。奴が現れても、ショア捜査官の指示があるまで動くな」
"no poets cafe"のオープンテラス。1人はテーブルに頬杖しコーヒーを口にスル。向かいの男はフードを被ってる。
テーブルの上には、今どき珍しいソーサー付きのコーヒーカップ。ピーナッツサンド。シュガーポット。ブロッコリー。
「全部ココに描いてアル」
僕は、ヘッドホン付きのマイクを抑えながら小声で話す。
「音波弾に刻まれた文字。電話での指示。暗号。でも、ギャバ子は、いつまでも犯人には追いつけない…」
「でも、リアルは違うわ」
「テリィたん。元に戻して、と私は言ったわょね?」
ショアは狭い車内で紙コップのコーヒーを口にスル。
「だっけ?でも、覆水盆に返らず、元カノ元に戻らずだ」
「はい?…とにかく、何も持ち出すなって意味だったんだけど。何でその原稿を持ち出したの?」
「お?そのセリフ、カッコ良いなぁ。今度使わせてくれょ。もう1回お願いします」
真剣にメモとるフリw
「いつもこうなの?」
「もちろん。テリィたんの集中力は、犬並みなの」
「貴女に対する忠誠心も犬並みね。これまで、私が見てきた限りでは、異例のパートナーシップはうまくいってるようね」
異形のパートナーシップ?
「今はね」
「ラギィ。ソレで貴女は満足なの?」
「そーゆーショアは、全国を飛び回る捜査をしながら、子育てスル生活に満足してるの?」
溜め息つくショア。
「確かに楽だと言ったらウソになるわ」
「良く出来るわね」
「ポイントは2つ。誕生日は忘れずに。電話はコマメに」
笑うショア。
「娘によく言うの。ママはドラゴンを退治してるんだって…捜査に戻るわ。こういった作戦では、犯人逮捕に人手が必要だけど、あまり多いと犯人に気づかれる。特に、この捜査官は、下がってもらわないと」
屋上から双眼鏡で見下ろしている捜査官の画像を指差す。
「エボリ。屋上の捜査官を移動させて。コッチからも丸見えでバレバレだわ」
「屋上?誰のコトです?」
「いるでしょ?南東の屋上に配置して双眼鏡を持ってるわ」
エボリは画像を確認スル。
「ショア捜査官。ソコには誰も配置していません」
「犯人だわ!全員聞いて。犯人を発見。ベドフとダウグ通りの角。南東の建物の屋上にいる」
「(一斉にダブルクリック音:了解の合図)」
メッセンジャー、ドライバー、カフェ客などが、一斉に耳に手を当て立ち上がり音波銃を抜く。屋上から姿を消す人影w
「気づかれたわ」
指令車から飛び出すエボリ。続いてショア。さらにラギィ…
「ダメょ。犯人の狙いは貴女」
目の前でバックドアを閉められるw
「いつもの僕の気持ちがわかるだろ?」
ラギィは溜め息。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「やって」
メッセンジャーが破城槌でドアを吹っ飛ばす!一斉に突入スル女戦闘員(全員コスプレしてるが)w
一方、指揮車のモニターの1つに外付けの非常階段に飛び出して来たフードを被った人影が映る。
「彼女よ。屋根を伝って逃げる気だわ!」
「ラギィ待て!」
「待てない」
今度は僕が目の前でドアを閉められる。ラギィは飛び出し、僕は鼻をドアにぶつける。犯人は非常階段から飛び降りるw
犯人は、ダッシュした途端に初老の紳士とぶつかる。
「すみません」
礼儀正しく謝る。次の瞬間、ラギィと目が合うw
「アキバP.D.!伏せなさい!」
音波銃を構えるラギィ。ところが、射線上にベビーカーから起き上がった主婦が現れラギィの銃口を見て凍りつき悲鳴。
「どいて!」
先程の紳士を突き飛ばし群衆を掻き分け逃げる犯人。
「わ?何なの!」
「気を付けろ、バカ野郎!」
「待て!アキバP.D.!」
地底超特急グランド末広町ステーションの出入口を駆け下り、インバウンドをかき分け、改札を飛び越えてホームへ。
「どいてどいて!」
犯人が突き飛ばしたインバウンドがゴロゴロ転がる階段を飛び降り追うラギィ…無情にも目の前でホームドアが閉まる。
「23番線より地底超特急"ドン底69号 杜の都逝き"は…」
アナウンスが流れる中、ドア越しに指鉄砲を撃つ犯人。
(こーゆー時は迷わズ"緊急停止ボタン"を推しましょう)
第3章 みんな元カノ
万世橋のウォールーム。グランド末広町ステーションの防犯カメラの画像を繰り返し見る。
犯人は、階段を談笑しながら下りるインバウンドを突き落とし、追い越しがてら振り返る。
「画像を止めて。拡大して」
モニターの中の顔面画像が拡大され、直ちにデータ化されて顔が正面を向く。新たに輪郭がデータ化されて、忽ち解析。
「顔認証中…スコテ・ダウン。里子ですね。非行歴あり。精神療養施設2〜3年。東秋葉原SOHOでも捕まってる。"blood type RED"」
「"覚醒"してない?」
「多分"覚醒"してる。秋葉原デジマ法の検査がザルなだけ。見つけたわ、クソ野郎」
エボリがスマートボードに明滅するデータを読み上げる。
「その時に手を火傷したのね」
「プロファイル通りだわ」
「最後の目撃は2022年。それから地下に潜った…隅から隅まで調べて、30分後報告しに来るように」
ショアがテキパキ指示を飛ばす。
「スコテの家族に連絡するわ」
「ラギィ。貴女は外れて」
「え。なんで?」
またまた衝突スル両巨乳…じゃなかった、両巨頭←
「車の外に出た。私は車の中にいてと言ったのに」
「でも、そのお陰で顔認証データが取れた」
「貴女は信用出来ナイ。ソレが問題なの」
慌てるラギィ。
「ちょっと待って」
「悪いけど降りてもらうわ
バタンとドアを閉め、歩き去るショア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗するために設置された防衛組織だ。
SATO司令部は、パーツ通りのとあるゲーセンの地下深く秘密裡に作られ、沈着冷静なレイカ最高司令官の下…
あれ?沈着冷静なレイカが取り乱してるw
「あのね、テリィたん。コレは警察の管轄なの。SATOは干渉出来ないわ」
「でも、レイカ。コレはラギィの事件だ。犯人の狙いもラギィで、否が応でも彼女は最前線に立っている」
「ラギィは、良くやったわ。口座は凍結したし、奴の顔写真は全国に行き渡った。もう捕まえたも同然でしょ?」
因みに、レイカは、月面基地時代に着てた銀ラメの華麗なコスモルックだ。ギリギリだがカラダの線をキープしている。
「でもさ。作戦の終盤でターゲットを追い詰めた時、相手が予想外の行動に出るから最も危険ナンだぜ?」
「その通りょ。一方、追い詰めた方は、そーゆー時にこそミスが多くなる。WIBに任せて。ラギィは少しカラダを休ませないとダメょ」
「彼女の部屋は爆破されたんだ」
ニッコリ微笑むレイカ。しまったワナだったかw
「じゃ"潜り酒場"はどう?ムーンライトセレナーダーが一緒なら安全でしょ?ミユリ姉様もきっと大歓迎スルわ。何ならSATOの戦術チームを護衛につけようか?心配はいらないわ」
「あのさ。ミユリさんは何も言わないだろうけど、僕が困るんだょ。仮にも元カノだぜ?」
「あら、テリィたん。私、相談してナイわ。誤解しないで」
僕の推しミユリさんが率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"はSATO傘下の民間軍事会社で、僕はCEOなのだ。
つまり、レイカは僕のボス←
「ROG。毎度、困難な任務をありがとうございます」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「まさか1日の内に、自分の部屋と担当してる事件の2つを両方同時に失うナンて!」
「ラギィ。私が言うのも変だけど、ラギィは犯人を追いかけて正解だったと思うの」
「でしょ姉様?でも、ショアの対応も正解だった。私も彼女の立場だったら同じコトをスル。確かに、私は事件に近過ぎるわ」
カウンターを挟んで今カノと元カノが向き合う。最悪。
「ねぇ君達。僕のコト、邪魔に感じてるだろ?さすがに、僕もそう思ったょ」
「え。思ってないわ」
「全然。何で?」
カウンターを挟んで今カノと元カノが僕を見る。悪夢。
「テリィたんには、普段はイライラさせられるけどね。テリィたんこそ"宇宙女刑事ギャバ子"を描いたコトを後悔してルンじゃナイの?」
「後悔はしてないさ。おかげで優秀な人が事件の担当になった。描いてなけりゃスコテは今も野放しだ」
にっこり微笑むラギィ。
「あ。優秀な人っていうのはショアの事だぜ?」
雑巾が飛んで来る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ココは万世橋警察署の地下駐車場だ。
スマホ片手に笑いながら階段を降りるショア。
「宿題は明日の朝、見てあげるから…だってもう寝なきゃダメょ…わかったわ。ママも大好きょ。おやすみなさい」
ショアは車に乗りエンジンをかけバックに入れて振り向くと目の前にラッパ型に開いた音波銃の銃口。息を呑むショア。
「あら。ショア捜査官?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。"秋葉原マンハッタン"の摩天楼に日が昇る。ソレは夕焼けのようなオレンジ色の朝焼けだ。雲が流れて飛ぶ。
カウンターの中で、ラギィは、包帯を巻いた左手でフライパンを揺すりながら、右手では器用にタマゴを焼いている。
ソロッと御帰宅スル人影w
「スピア!朝帰り?」
「ラギィ?何してるの?貴女は…お泊まり愛?」
「いいえ。コレはSATOの命令ょ。泊めてもらっただけ」
朝食を作っているラギィを見て驚くスピア。2人共元カノw
「あらあら。私が元カノ会の会長だからって気を使わなくて良いのょ?」
「(上から目線うざっ)ごめんねー。遠慮したんだけど(レイカに言われた)テリィたんがゼヒって言うから泊まっちゃった。困っちゃうウフフ」
「お部屋を吹っ飛ばされたんだって?物騒ねぇ。ソレで私、御屋敷の前でイヤホンつけたイケメンマッチョにボディチェックされちゃったヲホホ」
ココで無防備にも寝ぼけ眼で現れる僕w
「エスプレッソの香りがするな。あっ!ベーコンもある!…どーした、スピア?同棲失敗で出戻り?」
頭ポリポリで苦笑いのスピア。ベーコンをつまもうとしたら、僕の手の甲をフライパン返しでピシャリと叩くラギィ。
「料理出来ルンだ?」
「母が料理上手で、日曜はブランチを作ってくれたわ。パンケーキ。オムレツ。ワッフル。好きなの食べて」
「最近、日曜の朝は粉末コーヒーばかりでさ。もはや、習慣だったよね」
階段を降りて来るミユリさん。
「ソレはテリィ様がパーコレーターがお好きだから…あら、みんなお揃いね」
階段の途中で立ち止まり、ワザとらしく、余裕で乱れた寝巻きを直すミユリさん。ソレを見てゲンナリする元カノ2人。
微妙な間…ラギィのスマホが鳴る。
「…了解。今、行くわ」
「何だって?」
「ショアが行方不明らしいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の地下駐車場。
「9時頃に署を出たけど、そのママ帰宅してません」
「ショアの車は?」
「120分前までココに駐車してたようです。発信機が作動して見つかったんです。恐らく奴は後部座席に隠れてた」
エボリ捜査官は悔しそうだ。
「ショアが乗るのを待ち伏せていたのね」
「鑑識が確認中です」
「弾痕はないわ。血が飛び散ってる」
路面の血痕を確認するラギィ。
「犯人に襲われてショアは、背後から襲われ犯人の鼻に肘鉄を食らわせた。犯人は、反動ではね返ったから、この方向に血しぶきが…」
「それとも殴ったか?」
「お陰で手がかりがアルわ。血が路面に落ちている。コッチにも」
ラギィは腕組み。
「出血が続いたママ、ショアに銃を突きつけて、ココにあった車に乗せた。タイヤの跡がある。24時間以内に盗まれた車を調べましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ビルの谷間の駐車場。WIBの女戦闘員と万世橋の警官が数名。全てのドアを開放したショアの車を鑑識が調べている。
スマホ鳴動。
「ラギィ」
「女の友情は美しいわね、ギャバ子。彼女が恋しい?」
「ショアは?」
みんながラギィを振り向く。
「今のトコロ、無事みたいょ」
「もし彼女を傷つけたら…」
「あら。ソレは貴女次第だわ。今回の主人公はギャバ子、貴女なの。彼女は、単なるエキストラ。最後の決闘シーンは、ギャバ子と私。午前零時に和泉橋北詰の屋台船乗り場ょ。1人で来ないと彼女は死ぬ」
ラギィの冷静なネゴシエーション。
「生きてるかどうか、彼女の声を聞かせて」
「メールしたわ。添付を開いて」
「添付画像?」
ラギィが画像を開く。ガムテープで手足を椅子にグルグル巻きにされたショア。後頭部に音波銃の銃口が当てられてる。
「さ。みなさんに御挨拶して、捜査官」
「くたばりやがれ」
「彼女はエキストラじゃない!」
エボリ、怒るトコロはソコか?ラギィが制する。
「あのね。主人公は私ですらない。"ギャバ子"ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のウォールーム。
「ショアがココにいたら、きっと行くなと言うわね」
「当然だ。奴は罠を仕掛けているからね」
「わかってる。でも、行かないとショアが殺される」
ラギィは、罠に飛び込むつもりだw
「2人とも殺されたらどうする?」
「0時までに探し出します」
「エボリ捜査官、ソレじゃ間に合わないわ。ウチのハッカーに探させたけど、画像を添付したメールは、東秋葉原のインターネットカフェから送られてた。カフェの店内カメラは故障中で手がかりは皆無」
エアリは溜め息。添付画像を指差すエボリ。
「画面全体、光の反射は乏しい。窓も塞がれている。でも、全部じゃありません。ホラ」
「…少し明るい?何かしら?」
「ラギィ警部。捜査に復帰願います。ウォールームでお力、お貸しください」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「拡大」
ウォールームでスマートボードに命令するエボリ。ボードに"analyzing image"の文字が明滅し何かの影が巨大化。
「何かしら?建物の影?」
「橋だな。この"R"は…トラス構造のブリーストリブアーチじゃないか?」
「秋葉原D.A.の全橋梁データと照合します…松住町架道橋」
瞬時にアキバのランドマーク画像が出る。すげえw
「この角度で見えてるってコトは、ショアが囚われてる場所は南東の方向ってコトだ」
「もう1つ座標があれば、三角測量でショア捜査官のいるポイントが特定出来ます。テリィたん、何とかならないか?」
「(ヲレかょお前の推しだろ?)もう1度、画像を再生して。車の音だけ消せるか(うわっホントに出来たwどーやんの?)残ったのはコレ?電車の音だょな?何かアナウンスも聞こえる」
と話すより早くエボリ捜査官が答えを出す。すげぇw
「テリィたん。駅構内である確率72.8%。ただし、JR東京総合指令室の運航アーカイブをハッキングしたが、その時、総武本線の通過はナイ。ホントに電車の音なのか」
「もちろん。ただ、普通の電車じゃない。この音はリニアだ。地底超特急のリニア線は当たったか?」
「テリィたん。地底超特急は、グランド末広町ステーションを出たら、次は第3新仙台市まで駅はナイ。スマートボードを見てくれ」
スマートボードにマップが現れ松住町架道橋が南東に見える区域が赤く明滅。その区域を横切る地下鉄新幹線の青い線。
「エボリ捜査官。東京地下鐡道の路線図は出せるか(大正9年の創立だけどw)萬世橋假停留所の位置を知りたい」
瞬時にボード上の青い線に黒丸が現れる。マジすげぇw
「念のため、駅名を出してくれ」
旧漢字の駅名が次々表示される。赤い明滅区域内の駅は…
「ココだ。昭和に廃仮駅になった、東京地下鐡道の萬世橋假停留所、旧東京市神田区万世橋1756!…テリィたん。アンタ、超マジすげぇ。リスペクト!」
「でしょ?自慢の元カレょ。エボリ捜査官、女戦闘員を集めて。ショア捜査官を奪い返すわょ!全力出撃っ!」
「YES ma'am」
おいおい見つけたのは、僕ナンだけどなw
第4章 ハッタリと大ボラのコンチェルト
真夜中の神田リバー。黒い川面を見下ろす倉庫街。ラギィ警部率いる暗視装備に完全武装の女戦闘員達が配置につく。
「この廃倉庫です。熱画像だと4階に人がいる。女戦闘員チームがコレから侵入します。ラギィ警部?聞こえますか?」
「聞こえるわ、エボリ捜査官。今から女戦闘員を率いて突入スル」
「…うーん何か間違ってるな」
ココにおよんで違和感を覚える僕。
ミユリさんと指揮車でお留守番中w
「テリィ様。腹落ちしないコトでも?」
「どうも単純過ぎる。デス・スターを脱出したレイア姫の気分だ。何もカモ単純過ぎるょ」
「単純って何だ?」
逮捕を確信したか、エボリ捜査官はタメ口だ。
「だって、橋のトラスが見えたり、リニア新幹線の音が聞こえたり…まるで、僕達を誘き出そうとしてるかのようだ。きっと音が聞こえる時に録音したり、橋が見える場所で録画したりしてると思う」
「でも、ショア捜査官の可能性もアル。だから、何もしないワケにはいかない。私のパートナーなんだ」
「ドアを開けたら、彼女は死ぬ気がスル」
思い切りオドロオドロしく話してみたが効果ナシ←
「部屋には入らない。どのみち奴は、松本零士、じゃなかった、午前零時には屋形船乗り場に行く。その移動する時を狙う。ソレまでチームと所轄警部は部屋の前で立ちんボだ」
「スコテが出て来たら?」
「私が奴を射殺スル。クズには相応しい死に方だ」
音波銃を抜き、WIBのウィンドブレーカーを着て、指揮車を飛び出して逝くエボリ捜査官。完全に頭に血が上っているw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場では、全周警戒で短機関銃を構えながら女戦闘員達は、真っ暗闇の廃墟の中を1列になって進んで逝く。
移動指揮車から熱画像で見ると、はらぺこあおむしが廃墟の中を這い回るようだ。ドアの左右に張り付くw
鍵穴から熱監視装置で中を見るエボリ捜査官。2人の人影がいるように見える。ドアの左右に分かれる女戦闘員。
「ミユリさん。あの部屋にはステナはいない。なぜだかワカラナイけど、そう思うンだょ」
「テリィ様。どうしてそう思うの?」
「なんでって聞かれると、ワカラナイ」
普通のスーパーヒロインなら、ココで呆れて終わるトコロだが、ミユリさんは、とっても愉快そうに微笑む。素敵だろ?
「テリィ様に推していただくようになって、最近、ようやくわかって来たコトがあります。ソレは、テリィ様が絶好調で妄想しまくれば、1つぐらいは正しいコトも妄想スルってコトです」
「ソレは、つまり下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、って逝ってルンだょね?!」
「いいえ、決して…で、テリィ様がそうおっしゃるのは、何か理由がアルのでしょ。ソレを教えて」
ところで、僕達は話しに夢中になって気づかなかったンだけど、指揮車のモニターの中ではおかしなコトが起きている。
「理由って逝われてもなー。ただ、僕なら、自分のSFならそーゆー展開にはしないってコトさ」
「どーゆー展開になさるの?」
「先ずWIBには偽ヒントを与えて誘き出す。WIBが包囲スルとモチロン犯人はソコにはいない」
指揮車の画面の中では…あれ?女戦闘員達がラギィに音波銃を突きつけてる?何やってんの?でも、僕達は気づかないw
「テリィ様。では、犯人は何処にいるの?」
「うーん現場近くで捜査の様子を偵察してる。別のプランを用意しながらね…僕のSF小説ならそうスルょ」
「ソレで?」
ややや?駆けつけたエボリ捜査官も女戦闘員達に取り囲まれて、あっさりホールドアップだ。でも、僕達は気づかないw
「WIBが廃墟に入り、配置につくまで待つだろ?ソレで廃墟ごと爆破スルのさ。ドッカーン」
「で、テリィ様。犯人は何処から見てるの?」
「さぁ近くにいるハズだ。自分の能力を見せつけるために」
ミユリさん、人差し指を唇に当てて必殺ポーズ。萌え。
「先ずコッチの倉庫にはいないだろうな」
「だから?」
「ココさ」
向かいの廃倉庫の画像を指差す。
「では、テリィ様。参りましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南にオリオン座が輝く真夜中。身を切る冷たい空気の中、外付きの非常階段をムーンライトセレナーダーに続いて昇る。
ミユリさんはスーパーヒロインモードのムーンライトセレナーダーに変身してる。セパレートタイプのミニのメイド服。
「(テリィ様、パンツ見ないでw)ちょっちお待ちを」
「(げ。パンツ見てたのバレた?)靴ヒモでも解けた?」
「違うわ。万一のためにコレを携帯してください」
銃口がラッパ型に開いた音波銃を渡される。
「さぁ参りましょう」
音波銃の撃鉄を起こす。海外ドラマみたいに目線で構え廃墟の中に入ると、椅子にガムテープでグルグル巻きのショア。
「結末を迎えるのは残念ょ。とっても寂しいわ。貴女なら、もっと力があると思っていたのに」
スコテの声がスル。
「テリィ様。スコテがいます。私が気を引くので、テリィ様はショアを助けてWIBを呼んでください。テリィ様、貴方だけが頼りです」
スターウォーズ?恐る恐る中を見ると崩れかけた窓から双眼鏡で外を見ているスコテ。背後から声をかけるミユリさん。
「ねぇ狙いは私でしょ?」
ゆっくり振り向くスコテ。
「ムーンライトセレナーダー?…ギャバ子?そうだったの?ついに来たのね?」
「手を挙げて、スコテ。さもないと黒焦げょ」
「わかった。武器を置くわ」
音波銃と双眼鏡をサイドテーブルに置くスコテ。だが、ショアの視線の先には椅子の影に置いた別の音波銃が見えてる。
「ねぇギャバ子。もっと良い案があるわ。貴女が"雷キネシス"のポーズを解くの。さもないと、向かいの倉庫に仕掛けたサイクロナイトを起爆スル。ラギィもエボリも一瞬で赤い霧になるわ。ソレでも私を撃つ?ギャバ子、撃たれた瞬間、カラダに力が入ってボタンを押してしまうわ。ソレじゃ貴女も困るでしょ?」
しかし"雷キネシス"のポーズは解かない。
空気中の電荷が高まり、放電現象が始まるw
「あら残念。向かいの倉庫なら全員退去済みょ。貴女を騙すために侵入するフリをしただけだから」
「ふふふ。嘘だわ。ソレに"オーダー69"を発動した」
「何?そのエッチなオーダー?追加料金?」←
え?と逝う顔で戸惑うスコテ。畳み掛けるミユリさん。
「あら、ホントょ。だって、他に私だけコッチに来る理由がナイでしょ?"オーダー69"は実行されなかった」
「そ、そんな…ウソよっ!」
「認めなさい。貴女の負け。ギャバ子の勝利よっ!」
声にならない絶叫を上げ、椅子の上の音波銃に向かって手を伸ばすスコテ。椅子ごと蹴飛ばすショア。
そのショアを盾にとり音波銃を連射しながら闇に消えるスコテ。後を追うムーンライトセレナーダー。
「大丈夫か?ショア捜査官」
駆け寄る僕は、ショアの口のガムテープを剥ぎ取る。
「私の女戦闘員チームは?」
「向こうの廃倉庫。サイクロナイトの横にいる」
「ハッタリをカマしたの?…ってか"オーダー69"は?」
みんな何でソンな"体位"にこだわルンだ?
「ハッタリ?単なるプロファイルだ」
「何してるの?!ムーンライトセレナーダーを追って!"69"なのょ?早く!」
「え。ミユリさんと"69"?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
廃倉庫の暗闇の中を"雷キネシス"のポーズのママ進むムーンライトセレナーダー。左右を警戒しながら、慎重に進む。
「スコテ、諦めて。貴女は死ぬ必要は無いのょ」
突然、四方から女戦闘員に襲撃される。壁に叩きつけられ、床に倒され、ツープラトンロメロスペシャルをキメられる!
「ぎゃあああああっ!」
音波銃を手にしたスコテが不敵に微笑む。
「WIBの女戦闘員?なぜ?」
「だから"オーダー69"を発動したと言ったでしょ?私の小説の最後では、必ず誰かが死ぬの。ソレは貴女ょムーンライトセレナーダー」
「ヤメろ!僕のメイドに手を出すな!」
僕は、スコテの真正面に飛び出し音波銃を撃つ!スコテの手から音波銃が弾け飛ぶ。転がる音波銃に手を伸ばすスコテ。
その手を踏みつけるハイヒール。スコテが顔を上げると、ショア捜査官が、その鼻先にラッパ型の銃口を突きつけてる。
「"宇宙女刑事ギャバ子"、貴女が逮捕して」
立ち上がるムーンライトセレナーダー。女戦闘員達は、駆けつけたヲタッキーズが片付け、クタバってピクピクしてる。
「未だ終わってないわ、ギャバ子」
「ギャバ子じゃなくてミユリょ。貴女には黙秘権がある。だから…クソ黙ってて!」
「クソw」
hallelujah!ショアにスコテを引き渡す。
「ありがとう、ムーンライトセレナーダー」
「コッチこそ…でも、テリィ様。良く音波銃を狙えましたね?」
「うーん」
ソコが悩ましいポイントだ。
「アレでも頭を狙ったんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
解散が決まった万世橋の捜査本部。
WIBのウォールームもお片付け中。
「テリィたん!あのスマートボード、ゲーム用に譲ってもらってょ」
「OK。ついでにバットモービルも買ってもらおう。いや、ラットパトロールのジープが良いかな」
「あのね。私達はホワイトボードで充分だから」
ヲタッキーズのエアリ&マリレがヤイノヤイノ騒ぐ。
「私達は原始人?」
「まったくヒドい扱いだ、PMCナメてる」
「ショア捜査官」
変身を解いたミユリさんがショアを呼び止める。
「ミユリ姉様?メモを残そうと思ってたわ。スコテは、まもなく蔵前橋に収監されるわ。危険な女囚達と一緒に徹底的に監視されるわ」
「とりあえず望み通りニュースにはなったわね」
「ヲタッキーズのお手柄ょ。女戦闘員達は再手術」
女戦闘員は、全員クローンで脳にチップを仕込まれ"オーダー69"により即座に悪事を働くよう仕組まれていたのだ。
廃倉庫で突入直前に"オーダー69"を発動された彼女達はラギィとエボリを縛り上げてから、僕達を襲ったワケだw
"オーダー69"をテレパシー発信するスコテは"覚醒"した催眠能力者だったと逝える。
「この事件で、私は貴女からは色々と教わったわ」
「ほとんど貴女の力だわ」
「最後に貴女とテリィたんが入って来た時には脱帽したわ」
口に手を当てケラケラ笑うショア。
「ヲタクなだけカモ」
「使えるリソースを使い、決断を下し、タフな行動に出た。勇敢だと思うわ。ホント今回の事件はキレイにまとまった。ソレにスコテは最後にモノホンの"宇宙女刑事ギャバ子"と対決出来た…ところで、ギャバ子のインスパイアは、結局ミユリさんだったのね。ラギィ警部じゃなかった。ラギィ、ちょっと可哀想。今でも自分がインスパイアだと思ってる。所詮は元カノってコト?」
「そうは言ってません。ただ、彼女は誤解してる。テリィ様は確かに私のTOだけど、私もテリィ様のTOなの」
このタイミングで僕が割って入る。
「お2人さん」
「じゃあね、ムーンライトセレナーダー」
「お世話様でした。ショア捜査官」
2人は握手。
「テリィたん、助かったわ。もはやラギィ警部のチームに欠かせない存在ね」
「タマにラギィに話して釘を刺してくれょ」
「ふふふ」
ショアは去る。僕はラギィのデスクにプレゼントを置く。
「あら、テリィ様。ラギィに何か?」
「お父さんの時計だ。探して直しておいたンだ。ところでミユリさん、素晴らしい妄想、じゃなかった、アイデアがあるンだ」
「まぁ素敵。何でしょう?」
愉快そうに笑うミユリさん。GO!
「SATOにケッテンクラートを買ってもらおうと思うんだ。パンツァーファウストを搭載して、サイドに"SF作家"と大描きスル…」
却下w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜。"潜り酒場"に御帰宅したら、ミユリさんとラギィがUper Eatsで新秋楼のタンニララーメンを食べているw
「テリィたん、おかえり。夕飯作ったわ」
ラーメン丼を指差すスピア。
「スピア、なぜいる?同棲は?」
「なぜって…ヲタ友とゴハンしてる。だって、ヲタ友は家族ナンでしょ?テリィたん、おかえり」
「た、ただいま…」
なんか逝いくるめられてる感w
「そもそも、私は相手に縛られるような同棲はしたくないの。ミステリアスなハッカーでいたいし。そのイメージを保つには、時間と場所を使い分ける必要がアルわ」
「二重国籍みたいだな」
「そうよ。それと同じなの」
いや、違うだろうw
「その方が、相手との関係が良いの。だから、決めたわ。タマにココで食事スル。洗濯もコッチでスルわ」
「良いアイディアだと思います、テリィ様」
「待て待て待て。ミユリさん、ホントにソレで良いのか?仮にもココは御屋敷だぞ?」
2人は麺をススるのをヤメない。
「そっか…わかったょ。まぁラギィも寝る時はソファしかなかったけど我慢してくれょ。リクライニングはスルから」
僕は炭酸水をラッパ飲みスル。
あ!と小さく嘆息するスピアw
スピアの困った顔に萌え←
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"他人になりすます犯人"をテーマに、ついに明らかになる精神を病んだ犯人、さらに増えて逝く犠牲者、スーパーヒロインの連続殺人鬼を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、部屋を爆破された敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公の元カノの同棲騒ぎ、作品のヒロインのインスパイアは結局誰なのか、といった話もサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、最後?の円安景気を謳歌するインバウンドで溢れた秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。