ふたつの村
昔話風?
まんなかに大きな川をもつ、豊かな村がありました。
そのとなりにも、川のないちいさな村が。
ちいさな村は、川がないため、あまり豊かではなく。
ことあるごとに豊かな村へ助けを求めました。
「食うものが足りないから米を貸してくれ」
豊かな村は惜しげもなく、ちいさな村へと米を貸してくれました。
「人手が足りないから、若者を貸してくれ」
豊かな村は、各家の次男坊、三男坊を集めて、ちいさな村へと派遣しました。
「困ったことになったから、知恵を貸してくれ」
豊かな村は、その村民の知恵を集めて、ちいさな村を救ってやったのです。
そして、今年は。
梅雨の季節に雨が少なく、川を持たないちいさな村は、渇きはじめます。
ゆたかな村には、ちょっとやそっとの干魃など、ものともしない大きな川があったので。ちいさな村にも水を汲んで、わけてやりました。
でも、干魃は長く続き。ちいさな村の限界は近づいてきます。
そしてついに!
ちいさな村は、豊かな村にこう助けを求めたのです。
「水が足りないから、川をかしてくれ」
けれども、川だけは豊かな村の生命線。
その水をいくらかわけてやれはしても、川じたいを貸してやることはできません。
豊かな村はその願いを断って。かわりに水路を、ちいさな村へと曳いてやることにしました。
ちいさな村はそれを頼りに、なんとか干魃を乗り切ることができたのです。
水路を曳いてやるくらいで、大きな川は涸れたりはしませんでしたが。
それでも、やはり。
いくら豊かな村でもあのとき。川じたいをちいさな村に貸してやることはできませんでしたし、貸してやるべきでもなかったのです。
河川だけは、貸せん!!
こんなオチ。