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無事、学園の卒業式を終え学生生活幕を閉じた。
そして、ドレスの最終確認、来賓の方々のリスト確認、当日のスケジュール調整…‥目まぐるしく日々が過ぎ、いよいよ明日結婚式を迎える。
「お嬢様、ネイルも仕上がりましたよ」
コンコン、
「アプリコーゼ様、ご実家の皆様が到着され応接室に通されております」
使用人の一人がドア越しに伝え、私も急ぎ向かった。
「お父様、お母様!」
姿を見て思わず駆け寄った。そっと抱きしめ合って顔を見合わせた。
「リコ、随分調子が良さそうだね」
「はい、とてもよくして頂いておりますので体調もバッチリですわ」
「本当に何から何まで……なんと感謝申し上げればいいのか。公爵殿、本当にありがちうございます」
同席しているロイのご両親に家族揃って一礼した。
「頭を上げてください。感謝しているのは我々の方ですから。こんな素晴らしいお嫁さんを貰って、ロイファーは幸せ者です。これからもどうかよろしくお願いします」
「良かったな、リコ」
私の頭をそっと撫でて微笑んだお父様のお顔が、少し寂しそうで、でもどこか誇らしそうで私も嬉しかった。
「公爵殿と交易の話をしてくるから、こちらで待ちなさい」
お父様同士で部屋を後にしてから、私のお気に入りの紅茶を用意して話に花を咲かせた。
どうやら夕食は、家族団欒がいいだろうとロイのご両親は同席しないそうで、食堂を貸してくださった。こうやって家族水入らずも……もうきっとないだろう。嫁ぐってこういうことなんだ……。
夕食を終えた頃、ロイが帰宅しそのまま私たちの所に顔を出した。
「ご挨拶遅くなり申し訳ありませんでした。遠いところもありがとうございます」
「こちらの騎士団もなかなか大変そうだな、明日は大丈夫そうか?」
「その為に切り詰めてきましたから!」
食後の紅茶を口にしながら、爪を見て思わずニヤけてしまった。だって可愛すぎるんですもの。
「これはまた力が入ってるなー」
後ろから覗き込んだお兄様が私の爪に食いついた。「でしょ〜」と自慢げに見せると、その細工に何か閃いたらしく徐にメモを取り始めた。
「リコ、ただいま」
「お帰りなさい」
そんな毎日のたわいも無い普通の会話がくすぐったい。
「俺はもう失礼するから家族団欒を楽しんで」
そう言ってロイはすぐ部屋を後にしてしまった。
「リコ、先ほど公爵と話してきた。我が領地から産出される魔鉱石だが、未だ他国への輸出が少なかったんだ。しかし今回の結婚を期に公爵家を窓口にティアーズへの輸出を強化する。そこでリコの力を借りたい。輸出した魔鉱石の加工を頼めないかな?癒しの加護を付与して欲しい」
「私の加護を……ですか?それは構いませんが、カトレアで加工されているものと差が出るかもしれませんよ?」
「むしろ、差別化になるだろう?より多くの効果を選べるようになれば理想的だ。それと、こちらでリコが加工して出来た魔鉱石の売上は全てリコの財産になる。これからリコがしたいと思うことに使えるお金を自分で稼ぐ事もなかなか楽しいものだ」
「リコ、僕さっき君の爪を見て思いついたんだけど……魔鉱石の加工中に出るクズ石ってそのネイルに使えないか?」
…………!それすごく良くないですか?
「効果は薄れるかもしれないけど、価格を抑えて色とりどりのクズ石を用意しておけば需要あるよね?」
「絶対ありますわ!お父様、お兄様ありがとうございます」
あとでロイにも相談しなくちゃいけないけど、この国で、このアインツェルゲンガー家で役に立てるかもしれないと思うと胸の高鳴りが止められそうにない。




