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 たぶんお母さんと言いたかったんだ……。

 窓を開けて中へ招き入れた。


「……リコ、君が眠りについたすぐ後にジュニスの案内でライゼの森へ足を運んだんだ」

「えっ?ライゼの森……」

「そこで全てを聞いたよ。前世のことも、前世のお母さん達のことも」

 はっ!とリコの顔が母親に向いた。目に涙を浮かべて弟妹たちを見てから俯いてしまった。

「リコ、ここで暮らしてもらわないか?庭園は広いし、不自由なく過ごせると約束しよう。家族を大切にする君のことだ、本当はずっと気にしていたんだろう?」

「……いいの?迷惑じゃ……」

「俺がリコの事で迷惑だと思うとでも思っているのか?まだ俺がどれだけリコを愛しているか分かってないようだな」

 顔を赤くして目に浮かべた涙が頬を伝う姿は、なんて美しいんだろう。母親のそばへ膝をついたリコは、母親と話しここで共に暮らす事を決めたらしい。こんな可愛い家族が増えるなら使用人たちもさぞ喜ぶだろう。あとで伝えねば。


『ロイファー様、本当に何とお礼を言えば良いのでしょう。何から何までありがとうございます』

「こちらこそ、ありがとうございます。全てを話して頂けなければ、リコの心を埋めてやる事は出来ませんでしたから」

『リコの事、どうぞ末永くよろしくお願いします』

「もちろんです、私の生涯を掛けて添い遂げると誓います。リコ、ほらベッドへ」

 ベッドに戻しながら、ずっと言いたかった話をした。

「幼い頃野犬に襲われた話しがあっただろう……あの時、リコを助けたのは俺だ。君のお母さんから話を聞いてピンと来たんだ。私たちはずっと前から出会っていたんだよ?」

「……知ってたよ。これを貰った日からずっと……」

 首元から出されたサファイヤのネックレス。これを贈ったのは……あの誕生日?

「ロイが屋敷からいなくなる前の日、私が渡したワッペンを見たロイが言ったの。森でウサギを助けたことがあるって……。子供の頃のことで顔もすっかり忘れてしまってたけど、ロイの事だってすぐ分かったわ」

 俺も内ポケットから出したブローチをそっとリコのそばへ置いた。ライゼ森から帰ってすぐ提案した式典公式マスコットの件、謝らなくては。

「前世も今もリコが確かに生きている事を示したかった。だから寝ている君に黙って、この刺繍を使ってしまった。すまない……」

「ううん、嬉しかったの。広場の色々なところで見て最初は驚いたけど、私という存在を受け入れてもらえたような気がして。ありがとう、ロイ」


 そっと俺の首にリコの腕が伸ばされ、優しく抱きしめられた。

「ロイ、大好きっ」

 耳元で囁かれる愛の言葉ほど破壊力のあるものはない。俺は……抱きしめられたまま無性にジュニスを見た。そして心の声で訴える。


 “頼む、出てけ”


『ぷっ、心の声が顔に出てるわよロイファー。さて邪魔者は退散しようかしら、リコがもう少し元気になったらお散歩しましょうね』

 周りの目があった事を今更再認識したリコの顔が真っ赤になった。……このリコの感情の高まり、俺を誘う香りの強まる。開け放たれた窓からピョンピョン飛び出ていくのを確認した俺は理性をギリギリ保ちつつリコにキスをした。

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