67
立派な勲章をつけて、式典の最前列に席を構えても心は全く満たされない……。俺にはどうしたってリコが必要なんだ。
しかし今朝、自分でも驚くほど泣いた。式典までに目を覚ましてほしかった思いが強かったのか……?いや、一年という歳月を改めて再確認してしまった心の弱さだ。一週間経っても、三ヶ月経っても……部屋のドアを開けた風景はいつも一緒で、ため息を押し殺しては作り笑いでも自分を偽って過ごしてきた。
こうして式典会場に来てみれば、準備もあっという間だった。
リコがウサギから転生したと知ったあの日から、どうしてもどちらのリコも生きている証を残してやりたくてキャラクターと銘打って式典を彩れないかと打診してきた。これなら式典が開催される限り、どちらのリコも忘れられることはない。それに、私がどれだけリコを大切に思ってるか伝えたかった。どんな人生を送っていようと、私の番いは生涯で唯一貴方だけだと……。
陛下のお言葉に歓声が上がり、私もステージ上に視線を上げた。しかし、隣に立つベフォーアの様子がおかしい。なぜ目を見開き、驚きと共に顔を綻ばせるのだ?ベフォーアの視線の先に何があるんだ?客席側、自分の後方を見渡すが特別なものは見当たらない。気のせいか?
こうして式典が順調に進み、本来ならばリコが挨拶するはずだったプログラムに差し掛かった時、突然司会者が予定にない事を言い始めた。
「さて、それではここで特別ゲストでこの式典のマスコットであるウサギのリコちゃんの登場です!!」
「可愛い〜大きな人形が動いてるよっ」
「すごーい、きゃー手振ってくれてるよ」
子供達の興奮した様子に、思わず笑みが溢れた。
この様子、リコに見せてやりたかったな……
「それでは、ウサギさん一言お願いします」
「…………」
……ん?そもそも人形って、喋るのか?
等身大のウサギが、花を抱えたまま壇上から突然降り始めた。おい、このまま広場に行ったら囲まれて大変だぞ……え……?
「……貰ってください」
何だ?何が起きているんだ?……壇上から降りてきたウサギの人形は、少しぎこちない歩き方で俺の目の前にやってきて花束を差し出した。辺り一面花の匂いが溢れかえり、人形を着ているせいでくぐもった声は誰か判別出来ない。
「貰って?」
周りの視線を一身に浴び、差し出された花束を受け取った。
「ありがとう……君は……」
「ぷはー!!これ、あっついのね」
ウサギの頭がパカっと外され、目の前に見えた人物に固まった。抱きしめたいと……一年も前から願った……最愛の人が目の前に現れたのだ。
「……リ……リコ……なのか?」
「えへへ、こんな登場の仕方でごめんなさい。ロイ、ただいま」
人目なんて関係ない。俺は貰った花束を落として最愛の人を力いっぱい抱きしめた。朝あれだけ流したはずの涙が、瞳から嗚咽と共に流れ出た。生きてる……生きて俺の目の前にいる。これがどれほど幸福な事なのか、言葉に出来ないとはこういうことなんだろう。
「リコ……リコ!あぁ……本当に、どうやったら涙は止まるんだ……」
「ロイ、心配をかけて本当にごめんなさい……私も、会いたかった……」
俺にしがみついて泣いてるリコを更に強い力で抱きしめた。




