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 トルシアンから攻められた時、幸いにもこの森にはまだ戦の手が伸びる前にリコの加護に救われていた。あるいは、家族に与えられた加護が効いていたのかもしれない。

「リコが……」

 それまで知らなかったリコの話を全て聞いた。神様から授かった加護が癒しの力であったこと。その加護でカトレアを救ったこと。目が覚めず寝たきりになった事を聞いて居ても経ってもいられなかった。

「ジュニス、私をリコの元へ連れてって」

 ジュニスはその願いをどう叶えるか一生懸命思案した。ウサギの足では到底辿り着けない。かと言ってジュニスが運べるわけもない。

「ジュニス、以前話していたロイファー様に全てを話すわ。ここに連れてこれないかしら……お願いよ」


 お母さんの熱に負け、ティアーズにいるロイファーに相談しに行ってもらった。その願いはあっさりと快諾され、ものの数日でロイファー様が森に来た。ジュニスは自分の口から伝えるのは憚られるからと、詳細は何も伝えずリコのためだと良い森に連れてきたという。

 ロイファー様の前に出た私は大きく深呼吸して深々とお辞儀をした。

「ロイファー様、このような森へ足を運んで頂きありがとうございます。リコの事で話がありジュニスにお願いしました」

「えぇ、聞きました。リコの話というのは……」

「あの子は、私の子でもありました」

「……!?」

「ウサギのリコとして、私たちとここで暮らしていたのです。ある日、突然消えてしまったあの子を何日も何日も探して……時を司るカイロス様という神様によって、アプリコーゼという人間になった事をジュニスに教えてもらいました」

「そ、そんな事……があるのですか?」

「実際にあったの、私もエーデルシュタイン家でリコの気配を見つけて驚いたもの。あの子は、受け入れて一生懸命頑張ってたわ」

 ジュニスもあの頃を思い出して懐かしさを噛み締めていた。

「ロイファー様、無理を承知でお願いします……私をリコの元へ連れて行ってもらえませんか?」

「…………」

「あの子は、昔野犬に襲われお父さんを亡くしているのです。私はもう……家族を失いたくない……」

「野犬……?この森で?」

「はい、リコが弟を守り、さらに主人が駆けつけた所で、どなたかに救われたと後からリコに聞きました」

「それは、この子ウサギではありませんか!?」

 服の内ポケットから出したのは、いつかリコから貰った刺繍のブローチだ。ワッペンをブローチに替え、いつも身に付けていたが……。

「これは、誰から!?」

「リコがもっと幼い頃に、刺繍をプレゼントされました」

「まさにウサギの頃のリコそのものよ」

 ロイファー様の顔が何とも言えぬ複雑そうな表情に変わり、どうしたのかと尋ねた。すると……


「リコと……それからリコのお父さんを助けたのは私だと思います……。正確には、リコしか守れていなかったのかもしれませんが……」

「……そう、ロイファー様が……。あの人に変わってお礼を言うわ、ありがとう」

 無性に涙が溢れた。主人が亡くなったのは、野犬から受けた傷が深く、自宅に戻った数日後。だから、野犬にズタズタにされてその場で亡くならなかっただけ不幸中の幸いだったのだ。看取ってあげれたんですもの。

「リコもとても感謝していたんです……まさか人間になってロイファー様と巡り会えるなんて、運命だったのですね」

「運命……か。私は獣人です、そして私の番いがリコなんです……。もしウサギのリコのままだったら私は巡り会えていない。お母様にとっては酷だったかもしれませんが……私にとっては……神に感謝しかありません」

「それで良いのです。あの子の幸せが私の幸せだわ。それでも傍であの子を見守りたい……最後の親心をどうか……」

「行きましょう。どうか傍で見守ってください、絶対目を覚ましますから」


 そうして、ロイファー様の乗ってこられた馬車に家族総出でお邪魔した。そのまま屋敷に住めば良いと有難い申し出も頂き、目覚めたリコに相談して決めると伝えた。

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