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開いた瞼に、また違った眩しさが襲いかかった。確かめるように鼻から大きく空気を入れて深呼吸した。
「…………」
視界がクリアになれば、見慣れた天井や部屋に様子が伺えた。眩しい窓に目をやると、こちらを見つめる様々な動物たちと目が合った。その中からピョンっと部屋に入り私のベッドへ飛んできたのは、
「お、かぁさん……?」
「リコ!!目覚めたのね!!リコ、もう大丈夫よ。ジュニス!!!!」
「リコー!!!!」
窓から勢いよく飛んで私の枕に衝突したジュニスは涙を流しながら、私の顔に触れた。
「私のこと、わかる?」
「えぇ、わか……るわ、ジュニス……」
「すぐ呼んでくる!」
ジュニスは再び飛び立ちどこかへ飛んでいってしまった。ゆっくり呼吸を繰り返し、目が覚めたらことを少しずつ認識しながら私のそばにいてくれるお母さんに微笑んだ。ふと、動かしにくい手元が濡れてる事に気付いた。誰かここで溢した?それになんだか懐かしい香りがする……。
「お嬢様!!」
ユリーはノックも忘れ勢いよく扉を開けた。
「お嬢様……」
「ただいま……ユリー……」
気付けば、何人かの人影が見える。あっ……ロイのご両親、それにお屋敷の使用人の方々まで。みんなハンカチで目頭を抑えて抱き合っている様子を見て、とても心配を掛けてしまったと事の大きさを感じた。それでも私が一番会いたい人が見えない……
「ロイ……は?」
私の掠れた声を聞いたロイのお父様がそっと私に寄り、今日の式典のことを教えてくれた。今は午前中、聞けばロイが部屋を後にしてからそんなに時間が経っていないという。一年もの間、動かすことのなかった身体は筋力が衰え自立する事が出来ない。ユリーに支えられて起こした身体は、驚くほど重かった。でも、同時に懐かしさも込み上げる。ウサギのリコが突然公爵令嬢になったあの日、同じような感覚で歩く事さえもままならなかった日があった事を今でも鮮明に覚えてる。
「私、ロイに……会いたい……」
「行きましょう、お嬢様!私が精一杯準備して差し上げます。車椅子だって用意します。まずは午前中掛けてお姿を整えましょう、いかがですか旦那様、奥様」
「無理はしてほしくないが……」
「でも、今日は貴方のための式典よ、アプリコーゼさん一緒に行きましょう」
ご両親も承諾してくれ、急ぎ準備が始まった。車椅子を巧みに使いながら、一年振りの入浴に心を癒され、締め付けのないワンピースに着替える。お化粧も血色良く見えるようにユリーが腕を振るい、準備をしながら倒れたあの日以降どうなったのか、自分が眠っていた期間が一年間に及んでいたこと……そしてこの一年間にどんな事があったのかたくさん聞いた。
支度を終え、運ばれてきたスープを口にして「美味しい……」そう心からの言葉が漏れた。
準備している様子を、窓際から見ていたウサギのお母さんは少し前にあった出来事を思い出していた。
リコが倒れ、目が覚めなくなったある日ジュニスが私の元へ飛んできた。




