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 光が収まり、回ってたはずの球体が空中で止まった。……次の瞬間、ゴンっ!!と鈍い音を立てて地面に落ち、真っ二つに割れた。力を吸い取られたダルさと、今まで味わったことのないような気持ち悪さが身体中を巡り、頭痛、吐き気、倦怠感……倒れた地面から起き上がることができない。誰かが叫ぶ声だけが、遠く聞こえる。でも……。




「……他に方法はなかった。すまない、ロイファー……」

「俺は、ずっと待ちます」




 天気の良い日は、その気持ちいい空気がたくさん部屋に入るよう大きく窓を開けた。

 ジュニスを初め、様々な動物達が窓際に集まる。その中にはカトレアから連れて来たウサギのお母さんや弟妹たちの姿もあった。日替わりで様々な方が見舞いの品を持って来たけど、誰も部屋には入れない。


 雨の日も、嵐の日も、雪の日も……毎日同じ時間にユリーが花を替え、掃除をする。任務を終えたロイもまた、帰ってすぐリコの元を訪れ額にキスをした。

「ただいま、リコ。今日は騎士団の昇格試験だったんだ。ミミが正式にティアーズ王立騎士団の団員になったんだ。それに、サイアスが……」

 

 返事のない会話に肩を落としたくなる。




 あの日、リコが球体に触れて意識を失った。

 キルシュによって穢された国民の心に、癒しの力が降り注いだ。穢れは祓われ、正気を取り戻した国民は力を取り戻しトルシアンに立ち向かった。トルシアンの兵もまた、強制的に戦争に参加させられた者が多かった事や自分の置かれた立場から逃れたいと思う者が多く、闘いを放棄する者が大勢いた。多くの怒りがトルシアンに向かい、武力を笠に戦争ではなく対話を持って決着。事実上の停戦となった。

 キルシュ様は、カトレアの法で裁かれ処刑。トルシアンは今後二度とカトレアに攻め入る事が出来ぬよう協定が結ばれた。


 しかし、どんなに国が前に進もうとリコが目覚めない。キルシュから受けた攻撃の傷は幸い大事に至らなかったが、国民の穢れを一身に受け、力を出し尽くしたリコは……アインツェルゲンガー邸の自室で眠り続けている。


 俺は、リコが目覚めた時「おかげでこんなに豊かになったんだ」と胸を張って言えるように尽力しようと決めた。王室に囚われていたエーデルシュタイン公爵も今まで限られた階級にしか流通出来ていなかっ魔鉱石を全国民が手に出来るよう、研究と開発に力を注ぎもうすぐ実を結ぼうとしている。


「ロイファー、来週の式典の準備は順調か?」

 王城の廊下でベフォーア王子に声を掛けられたロイファーは、経過と残りの作業を伝えた。

「……以上が経過報告になります」

「ご苦労だった、その……まだアプリコーゼ嬢は眠りについたままなんだな……」

「……変わりありません」

「来週に式典の主役が不在なんて、延期も視野に入れていただろう?」

 ティアーズ王国から流行病が消え国民の暮らしが豊かになった事を祈念して、毎年国を挙げて盛大に祝おうと王が告げた。国民も大いに喜び、一年も前から計画が進められ、露店やイベント、どのような催しにするか話し合われて来た。まさか……カトレアで意識を失ったままこの日を迎えようとしているなんて誰が想像できただろう。


 リコの事を知る者は、多くない。

 目が覚め、今まで通りに生活出来るなら、いつか式典で披露目すればいい。目が覚め、どこか不自由な暮らしを強いられるのであれば俺が職を辞し献身的に見てやればいい。目が覚め、俺を忘れていたとしたら……もう一度絆を深めればいい。


 しかし……。毎晩ベッドに入り目を閉じると一抹の不安に襲われる。


「今日も眠れそうにないな」

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