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「キルシュ……!」
その姿を見た瞬間、キッと睨むようにマルメラーデ様が怒りを露わにした。
それを見たキルシュ様は、口の端を上げて勝ち誇ったような微笑みを浮かべる。背筋が凍るような感覚……なんて異質な雰囲気だろう。
「貴方達にはもう無理よ、この国は終わったの。私たちトルシアンのものになるんだもの。そして私は女王よ」
「女王だと?」
「そうよ、お父様とそういう約束になっているの。この国を私が手に入れれば、女王に据えて下さるって。私はこの国の頂点に立つの、第三王女だと侮られて来たけど……今こそ私の実力が証明できる時が来るのよ。だから……」
キルシュ様の手のひらから湧き上がる暗い光が鋭利な姿に変わり、容赦なく私に向けて発射された。
攻撃よりも早く私を庇い身を呈したのは、ロイだった。勢いのあまり二人で転がり込むが、すぐに態勢を整えたロイから殺気が漏れている。
「よくも……!」
「あ〜あ、本当邪魔。だからティアーズで大人しくしていて欲しかったのに、」
次から次に同じ攻撃で私たちを追い詰める。加護の力を具現化出来るなんて……すごい。私には真似出来ないわ。ロイは、軽々私を抱えて飛び回るけど防御しか出来ないんじゃ意味がない。
それにしても、私だけを狙うのは……癒しの力を使われる前に始末したいということ。まだ勝算はあるわ。
「ロイ、逃げながら私を球体へ連れてって」
「でも、ジュニスが言ってた!リコの命の保証が、」
「ダメよ、今迷ってはダメ。お願い、私は大丈夫だから」
「…………」
「信じて」
「……くそっ!」
攻撃を交わしつつ、ロイの胸元に忍ばせた短剣をキルシュ様に向けて投げた。腕を掠めてキルシュ様の意識が逸れた瞬間を見逃しはしない。一気に球体へダッシュして、手を伸ばした。
あと少しで触れる!
すんでの所で、私に気付いたキルシュ様がすごい形相で攻撃を繰り出しロイが叫ぶ。
「リコ!!」
ロイの叫ぶ声と私が球体に触れるのが重なって、それまでゆっくり静かに回ってた球体が、触れた途端にキィィィィィーーン!と特殊な音を出して淡く光り始めた。攻撃の痛みに耐え、手を翳しながら私は祈った。
「お願い、みんなを助けたい……穢れを祓って!カトレアに祝福を!」
光が強くなる程、自分の手から力が吸い取られる感覚も強くなる。グッと堪えて自分の限界まで立ち続けた。
気付けば、ロイの反撃で拘束されたキルシュ様が暴れてる姿が横目に映り、安堵と疲弊で膝から崩れた。でもまだ、終わってない。もう少し。この感じは間違ってないはず。お願い……私の大切な人たちを助けて!




