表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/74

6

 綺麗に整備された芝の上で休憩していると、ピピピッと小鳥が肩に飛んできた。あれ、もしかして……

「……ジュニス?」

『リコ!?リコなの?……気配を辿ってきたらここに』

「私よ!まさかまたジュニスに会えるなんて!」

『リコがいなくなって大騒ぎだったんだ。まさか人間に……何があったの!?』

「色々ね……。ねぇ、お母さん元気にしてる?」

『元気だよ、今朝も子どもたちと見かけたから』

「そっか……、ねぇお母さん達に伝言を頼める?」

『いいよ!』

「突然いなくなってごめんねって……。必ず会いに行くから、その時にきちんと説明するね、元気でいるから心配しないでって」

『任せて、必ず伝える!ねぇ、たまにこうやって会いに来てもいい?』

「もちろんよ!私はいつもここにいるから」

『わかった、ひとまずリコを見つけられた報告しに戻るね!』

「気をつけて、待ってるからね」


 ほんの少しの時間だったけど、ウサギのリコとして誰かと会話出来たのが嬉しい!未練がないなんていったら嘘になる……みんなの傍にいたかった。でも、ここで触れた優しさもまた温かい……病気で命を落とす寸前だったアプリコーゼに入った私は、私じゃないようで、私。この子のために私が出来ることをしてあげたいと思う。しばらくして、お兄様とユリーがお昼ご飯の用意が出来るよと呼びにきてくれて、お外にシートを広げてサンドイッチっていうパンに野菜が挟んであるご飯を食べた。やっぱり美味しい!


 それから毎日お外に出てお散歩したり、ジュニスと近況報告みたいなお喋りをしたり、庭師っていうお庭の手入れをしているおじいさんにお花のお世話の仕方を教わった。身体の調子もすごく良くて、走り方も覚えたからお兄様やユリーが一緒に遊んでくれる。明日から家庭教師の先生も来ることになって、とっても楽しい日々を過ごした。


「リコー、入るね」

 お母様が夕食後に部屋を訪ねて、明日からの家庭教師の説明をしてくれるという。

「一般的に女の子は学校へ通うまでの間に、マナーや一般教養、刺繍にダンスといった社交に必要なお勉強をするけれど大丈夫?無理はしなくて良いのよ?」

「たぶん大丈夫!でもお母様……私、ついていけるかしら?とても覚えるのが遅かったり迷惑を掛けてしまうかも、」

「いいえ、リコのペースでいいのよ。それに先生もとっても良い方たちだから分からない事は何でも聞けばいいわ。明日から二人の先生が見えるけど、一人は女性でニーレイ先生、もう一人は男性でエデン先生よ。エデン先生は獣人族の方なの」

「お母様、獣人族って何?」

「獣人族は動物と人間の特性を持つ種族よ。明日お会いした時にまた紹介するわね、明日のためにもゆっくり身体を休めましょうね」

「はい、お母様。お休みなさい」



 その夜、夢を見た。お父さんが死んじゃった時の夢。


 まだ赤ちゃんだった弟の一人が飛び出して走って行ってしまったから追いかけた。必死に帰ろうと叫びながら追いかけた先に、黒くて口から涎を垂らした野犬が目に入り、大急ぎで弟を止めて庇おうとした。野犬が今にも飛びかかりそうな唸り声と体勢をとったのを見て、覚悟を決め目を瞑った。衝撃がこない代わりに別の叫び声がする。「リコ!急いで逃げなさい!早く!」お父さんが飛びかかって時間を稼いでくれてる様を見て弟を口に咥えたけど、恐怖で力が入らない。このままじゃお父さんも死んじゃう!溢れる涙をどうすることも出来ずにいたら、目の前に大きな影が現れてあっという間に野犬を退治してくれた。傷を負ったお父さんと私たちを優しく抱えてくれた腕がとっても優しくて、お礼を言おうと顔を上げたら、



「お嬢様、朝ですよ。あら?何か悲しい夢でもみたんですか?涙の跡が……」

「おはよう、涙の跡……?……うん、懐かしい夢を見ただけ」

「すぐタオルお持ちしますね」

 夢で見たお父さん格好良かったな。あの時助けてくれたのは誰だったんだろう……顔が思い出せそうで思い出せない。せっかく人間になったんだから、いつか会ってお礼が言えたら良いのに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ