55
トルシアン王国って、キルシュ様の母国だわ。攻め入るって……
「今はここまでだ、これ以上話すと食事が喉を通らないだろ?」
「いや、もう通らないわよ」
食堂の扉が開かれ、先に待たせてしまっていたご両親に謝罪を述べ席についた。運ばれてくる料理はどれも美味しそうなのに、進まない。見かねたロイに「あーん」って言われたけど、そんな恥ずかしいことするなら自分で食べる!と結局食事を頂いた。
頃合いを見計らってお義父様が「状況を説明しなさい」と話題を振ってくれたけど……。
「昨日までにカトレアの北と東の街まで侵攻されています。密かに向かわせていた、こちらの軍のおかげで住人のほとんどは退避させていたので大きな負傷はありません。狙いは東の街から王都に入り、王城を目指すものと見られます」
「そうか……、ベフォーア殿下の作戦は?」
ロイが黙って私を見つめた。瞳が揺れてる……怯えてる?
「今のカトレアは、もはや戦地です。そこへ俺と共にリコを連れていくと……」
なんとなく話の流れから、私のこの力を使うなら現地に行かなきゃダメだよなーって思ってた。けど、いざ戦地という言葉を聞くと言葉が出ない。それでも私には、自分の道は自分で切り開くっていう信念がある。今、ここで行かない選択肢はない。
「参ります。ロイ、すぐベフォーア様に伝えて。一刻も早く向かいましょう?」
「だけどリコ!君を敵としている以上、どんな危険が待っているか分からない!」
「そのためのロイ……でしょ?守ってくれるんでしょ?」
私の守りたいものは、家族。
ウサギのリコとして育ててくれたお母さんや妹弟たち、人間のリコとして育ててくれたエーデルシュタイン家の人たち。それに家族に限らず、この戦争に勝手に巻き込まれたカトレアの国民たちを救いたい。人間の勝手で巻き込まれた動物たちも見過ごせない。私には守りたいものがこんなにもある。ロイが側にいてくれればきっと大丈夫。
「私は、二度貴方に助けられたわ」
「?」
「だから二度あることは三度あるって事で、今回もよろしくね」
「ロイファー、全力で守り切って帰ってらっしゃい」
「我々も援護しよう。帰ってきたら盛大な式を上げようじゃないか、なぁ我が息子よ」
「わかりました……。明日朝一でベフォーアに伝えてきます。リコ、出立の準備だけ頼む」
「えぇ、いつでも出れるように準備しておくわ」
どうか、みんな無事でいて。




