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夜会が終わった後から、学園でも些か過ごしやすくなった。今までは遠巻きにしていた生徒も、気軽に声を掛けてくるようになり楽しい学園生活を過ごしている。もっぱら、ドレスの事や私とロイについて聞かれることが多いけど、関心のある方からは癒しの力を見せてほしいと言われることもある。小さな傷を治す程度のヒールは、学園でも使う許可が降りているから披露するにはちょうど良い。
でも最近、ジュニスを見かけない事がとても気がかりで……なにか、ベフォーア様から依頼されていたようだけど聞いていいのか分からなくてモヤモヤしていた。久しぶりにロイが公爵邸に帰ってくるそうだから聞いてみようかな?
学園から帰宅したアプリコーゼは、ユリーと共に図書館へ向かい勉強に取り掛かる。最終学年ということでやはり難問が多い。難問といっても数式を解いたりするのではなく、考察する問が多いのだ。隣国との貿易についてや、作物の収穫量について、貴族としての振る舞い方など多岐に渡る。だから図書館で調べ物をしながら勉強するのが一番捗るのだ。
フワッと後ろからストールが掛けられたのに気付いて振り向くと、そこには優しい笑みのロイがいた。
「ロイ!ごめんなさい、気付かなくて」
「集中して勉強してたんだから気にしてない。ただいま」
掛けられたストールの上からロイが覆い被さり、体の重みが帰ってきたことを実感させてくれる。温かい……。
「もうすぐ夕食の席だけど、行ける?」
「もちろん。あっ……ねぇ聞いても良い?」
「ん?」
「最近ジュニスを見なくて……ロイなら何か知ってるかなと思ったの」
「やっぱりこれだけ合わないと気になるよな、丁度今夜の食事の席で話そうと思ってた事があるんだ。……ジュニスと、それから今のカトレアのことをね」
「……カトレア」
「歩きながら話そう。おいで」
手を繋ぎながら廊下を移動していると使用人の方が微笑ましそうにお辞儀をする。は、恥ずかしい……。
「ジュニスは今、カトレアにいるよ。こちらと情報がやり取り出来る魔具を身に付けさせているんだ。ベフォーアの予見があるから、状況を見ていたけれど……向こうが動き出したから、一旦リコに報告がてら今日帰ってきたんだ。明日からまた城に泊まるか、 指示があれば俺も現地に赴かなければいけなくなる」
「ねぇ、カトレアで何が起きているの?」
「……キルシュ王女の企てで、トルシアン王国がカトレアに攻め入っている」
…………え?




