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 壇上から見える景色は、圧巻で……少し足のすくむ思いもあるけど、それでも私のこの力が誰かの役に立ったことが素直に嬉しい。歓声と拍手を受けながら、両手を頭上に上げ意識を集中させた。大きめの光の輪を放ち会場中に祝福の雪が舞う。光がふわふわ天井から舞い降り、まるで雪景色のような美しさを演出して見せた。


「綺麗……」

「なんだか、とっても温かいわ」

「幸せな気持ちになれるね」


 私の欲しい言葉が聞こえてくる。

 みんなが幸せな気持ちで過ごせるように祈りを込めた。心が穏やかになれるように。


「この祝福が、また新しい我らの時代を作るだろう!そして、このよき日にもう一つ報告がある。アプリコーゼ嬢の横に立つのは、アインツェルゲンガー公爵家ロイファーだ」

 ざわざわ……会場が響めく。

 人間の家系に、なぜ狼族が。聡い者は閃き、鈍い者は疑心の顔を覗かせる。

「クロイツ・ティアーズ、その名を聞けば思い出す者もいるだろう。先代王弟殿下にあたり、命を落としたと公表されていたが、命を狙われ公爵家へと預けられた身であった。その血を継いだのが現公爵と、ここにいるロイファーである。世継ぎがベフォーアしかいない事、また王立騎士団の騎士団長として国を守り、多大な貢献をしている。よってロイファー・アインツェルゲンガーに王位継承権を与える物とする。そして、双方の願いを叶え、婚約を結ぶに至った。皆で祝福し、我が国の未来永劫を讃えようではないか!」


 更に大きな歓声と鳴り止まぬ拍手に、ロイが私の腰を抱き寄せて見つめ合った。ロイが指をくるっと回して、いつもの人型に戻れば今にもくっついてしまいそうな程に顔が近付き……大勢の前で、優しい口付けが落とされた。

 長く感じるこの一瞬が、どれだけ多くのため息を生んだんだろう。それにしても……ロイが王位継承権を持つなんて。


 その時、ふと映り込んだのはマルメラーデ様の姿だった。カトレアからは使者しか来てないと思っていたのに……まさかマルメラーデ様がいらっしゃるなんて。

「アプリコーゼ……」

 微かな呟きを耳にし、ロイを引いてマルメラーデ様の元に来た。

「アプリコーゼ、もう私を選んではくれないんだね……」

「申し訳ございません。私はロイ……ロイファーとこの先の人生を歩みたいのです、もうカトレアには戻りません。どうか、マルメラーデ様にも幸多き事をお祈りしております」

「ありがとう……諦めて国に帰ろう。美しいその姿を見れただけ幸せだ」

 ふふっと微笑んで、再びロイと会場中央へ移動した。今日のファーストダンスはもちろん私たち。人集りが円形に開かれ、向き合う私たちにワルツの演奏が流れ始めた。密着させてリズムに乗れば、自然と身体が揺れ動く。

「綺麗だ、リコ」

「ロイの姿が格好良すぎるのよ……見て、令嬢たちのあの眼差し」

「いや、違う。君に向けてだよ、私の婚約者は鈍くて困る」

「ひ、ひどいわ!足でも踏んであげましょうか?」

「リコになら何をされたって構わない」

「ふふっ」


 楽しい時間は、あっという間に終わりを迎えた。ダンスパーティーが始まると、私とロイはダンスどころではなく様々な方から挨拶を受け自己紹介をして回った。嫌味を言われたりする覚悟もしてたけど……パフォーマンスのおかげか終始平和に進んでいった。

 


 突然会場に女性の声が響き渡る。

「本日の集いが、誰のためのものですって!?」

「で、ですから……アプリコーゼ様とロイファー騎士団長の、」

「そんな訳ないじゃない!」

 聞こえてきた声に覚えがある!これは、カメーリエ様だわ。声が段々近付いてくる……!

「止めないか、カメーリエ!今までどこにいた!」

「お父様、どうしてですの!?今夜の夜会がアプリコーゼ様のための集いというのは本当ですか?」

「そうだ!この方は“女神に愛されし癒しの加護”で我々を救ってくださったんだ。家族といえど、無礼は許されないぞ」

「なっ……!加護……!?そんなはず……、で、ではロイファー様はなぜ彼女の隣にいるのです!ロイファー様は私と婚約してくださるんでしょう?」

 夜会に遅れるなど上位貴族として有るまじき失態なのに、悪びれず来るあたり強い方のようね……。それに遅れてきたから、パフォーマンスで降らせた癒しの力はカメーリエ様には効いてない。そこへ、ベフォーア様が私の前に立ちはだかった。

 

 小声で「癒しは必要ない」と。

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