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朝から支度を手伝ってもらい、ピカピカに磨かれた身体と敢えて香油を塗らずフワフワの髪を少し大人っぽくまとめれば、ドレスと揃いで用意されていたアクセサリーと、愛用のペンダントを見せ女神のような仕上がりに思わず目を見張った。
「お嬢様これは、注目の的どころではないかもしれません、絶対ロイファー様から離れてはいけませんよ?」
「まぁ、ユリーそれは言い過ぎよ。でも皆んなのおかげでこんなに素敵に仕上げてもらえて……ありがとう」
「ロイファー様がお待ちですよ、参りましょう」
部屋からエントランスへ向かい、ご両親と話すロイを見つけた。ゆっくり、淑やかに歩みを進め私に気付いたお義母様がロイに目配せすれば、振り向いたロイに「お待たせしました」と微笑む。
「まぁ〜なんて素敵なのかしら、こんなお嫁さんがいてロイも幸せ者ね。ね、お父さん」
「本当だな、アプリコーゼ嬢とても綺麗だよ。今日の夜会は我々も参列するから何かあればすぐ来なさい」
「はい、お義父さまお義母さま。ありがとうございます」
ロイは、見惚れたまま動けない。
「変ですか?」
「いや、今とても後悔している……」
「……え?」
「披露目など、夜会の参加など拒否すれば良かった……美しい私の婚約者を誰にも見せたくない」
「は、恥ずかしいです……。ロイの隣を堂々と歩く勇気を、このドレスとユリー達、そして貴方から貰いました。連れて行って下さいませ」
「敵わないな、ではリコ……お手を」
エスコートされ、ご両親に礼をして先に馬車へ乗り込んだ。私たちは、今回の主役のような立場なので王城の裏門から入り王族側の控室で待機することになっている。
必要最低限の出迎えで裏門に着いた後は、王族側の控室に通され入場する時間まで待機となった。そこへ、ベフォーア様を始めティアーズ王国の国王陛下と王妃殿下が私たちの控室へ来てくださった。
「君がエーデルシュタイン公爵家のアプリコーゼ嬢だね?」
「はい、国王陛下、王妃殿下にご挨拶申し上げます。カトレアから参りましたアプリコーゼ・エーデルシュタインです」
「堅苦しい挨拶はここまでだ。君のおかげでどれだけの命が救われたか……礼を言うのが遅くなってすまない、本当にありがとう」
「勿体無いお言葉です、陛下」
「こんなに素敵で可愛らしいお嬢さんだったのね、ベフォーアの番いだったら……なんて無粋ね、ふふっ」
「母上、ロイファーがすごい顔してますよ。まぁ僕も同じ事思ったことあるけどね」
「おっ、おい……!」
「まぁまぁ、まずは今日の披露目の成功を願おうではないか。アプリコーゼ嬢、君の功績を私から国民へ伝えさせてもらうよ?それと、ロイファーとの婚約が成立したと聞き及んだ。同時に発表しても構わないかな?」
「もちろんです、よろしくお願いします」
「では、私と王妃は先に会場へ行くとしよう。ベフォーアは、きちんと詳細を伝えてから来なさい」
「父上、協力してくださりありがとうございます」
「健闘を祈る」
やっぱり王族のオーラはすごい!部屋の空気が違かったもの……それでも隣にロイがいてくれるおかげで緊張せずにいれてる。
「さて、アプリコーゼ嬢。君に一つお願いがある」
「何でも仰って下さい」
「ありがとう、君の功績を父上から伝えた後少しパフォーマンスして欲しい。エデン先生から聞いた話によれば、割とコントロールが上手になったらしいから会場中に癒しの力を振り撒いてその力を証明して見せて欲しい」
「分かりました、少し大袈裟にパフォーマンスしますわ」
「ははっ、楽しみにしておこう。それとロイファー、君は獣人の姿で入場してくれ。君の獣人の姿を見た事のある者があまりに少ないからな、君にとっても良い披露目の機会だろう」
「……、それはベフォーアにとって利になるのか?」
「いつまでも隠せるものではない。父上からその件についても言及があるだろう」
「わかった」
「いやー、今日は楽しい夜会になりそうだ!アプリコーゼ嬢、何があってもロイや我々が守るからね、心配はいらないよ」
「心強いお言葉をありがとうございます、私も楽しみたいと思います」
「よし、では私も先に会場に行こう。最終の入場になったら使いの者が来るからね」
獣人の姿になったロイと隣合わせでソファーに座り、手を握り合っていた。「本当は今すぐにでもここから抜け出して二人きりになりたいのに……」なんて胸がギュッてなる事を言うロイの顔が切な過ぎて、思わず頬を触った。「夜会が終わったら、貴方の時間を下さい」可愛い事を言ってみる。顔が近い……綺麗な瞳に射抜かれる。
良い雰囲気のところで、ノックの音と共に案内の方が来た。いよいよだ……!




