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「キルシュ様の仰る通り、ティアーズに来たわね。早速報告しなくては」

 自室の机でペンを走らせるカメーリエの横には、ピアノを模ったオルゴールが置かれている。以前から交流のあったキルシュ様から突然手紙と、このオルゴールが届いた。


 カトレア王国の第一王子マルメラーデ様と婚約に至り、カトレアに滞在されている事。使えもしない加護でマルメラーデ殿下を籠絡し、挙げ句国王陛下に見放され国外追放された令嬢の名が『アプリコーゼ・エーデルシュタイン』である事。この国の不利益とならぬ様、監視と報告をお願いしたい……と。そして、協力の暁にはわたくしの願いを一つ叶えてくれると認めてあった。お手紙を頂いた時は半信半疑だったけど、今日留学してきたのは間違いなくこの方。わたくしがキルシュ様のお力になれれば……願いはただ一つ。


 “ロイファー様との婚姻”


 幼い頃から想いを抱いていたのに、カトレア王国へ行ってしまった。何年も何年も諦めきれずにいたら、四年前突然帰国されそのまま騎士団長に就任。面影はあるものの、色気の漂う大人の男性になり、容姿も家柄も職業でさえも全てにおいて完璧だった。獣人族の多く暮らすこの国で、人間の貴族はわたくし達だけ。人間同士の恋ならば番いは関係ない。わたくしの努力次第でロイファー様を振り向かせる事ができる。

 そう意気込んで、お父様に夜会のお願いをしたり、贈り物をしたり、他のご令嬢方を押し除けて常に先頭にいたのに……。ロイファー様はちっとも私を見てくれない。こんなに自分を磨いているのに。


 だから、キルシュ様からの提案は渡りに船だった。どうせ上手くいくのなら、先に周りから固めてしまっても問題ないはず。友人たちにお茶会でロイファー様との婚約をチラつかせれば、あっという間に噂は広まり羨望の眼差しが向けられた。嘘が誠になるのも時間の問題。


何としてでも成果を残したくて、お父様に内緒で諜報員を集めアプリコーゼ様を監視させた。

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