45 ティアーズ学園
翌日、ロイファーが急遽休みを取ってくれたので、エーデルシュタイン家から持参したドレスに着替えアインツェルゲンガー家へ赴いた。急な予定にも関わらず、ロイファーのご両親は人間の私を温かく迎え入れてくれた。てっきり獣人の姿を想像してたけど、私に気を使ってか人型の姿で挨拶をしてくださり、用意したという部屋を見せてもらった。
「こんなに可愛い素敵な娘が出来るなんて夢のようね、あなた」
「本当だな、わからない事は遠慮なく聞くんだよ?」
「ありがとうございます、こんなに良くして頂いて……私、こちらで色々学ばせて頂きます」
さすが筆頭公爵家なだけあって、広大な敷地に大きなお屋敷、使用人の大半は獣人族みたい……少し時間があるからと屋敷を案内してもらっている。歩きながら昔話を聞いた。お祖父様が王弟であった事や命の危機にあった事、存在を隠すため人間として暮らしていた歴史が今も続いていた事。ロイファーも幼い頃から人間の姿を保てるよう訓練をしたそうで、今では獣人の姿になる事はほぼない。
「この国の貴族の中で人間なのはネネン侯爵家と我が家と思われている。よくこんなに隠し通せたなと思うけど、キッカケがない限りは今のままでいいと思っている」
「私としては、狼の姿をするロイファーも格好良くて好きだけど……私だけが独占出来ると思えば悪くないわ」
「……嬉しい事を言ってくれるな。リコ、リコさえ良ければロイと呼んでくれ」
愛称!特別な関係になった実感が更に湧く。
「…‥ロイ、大好きっ」
いつの間にか私たちの周りには様々な動物たちが集まってた。たぶん、ロイが感じる“香り”が強くなると動物たちにとっては“癒し”が増えるのか、そこかしこから『幸せ〜』と声が漏れている。遠目から見ているユリーやご両親は、その幸せな光景に微笑まずにはいられなかった。
無事にロイの屋敷へ荷物を移し終え、今日から学園に通う。
はっきりとした留学期間は分からないけど、真新しい制服に袖を通し髪は下ろしたままふわふわ靡かせる。本当は、歩いて行ける距離だけどロイの過保護とカトレアの事情を考慮して公爵邸の馬車をお借りする事になった。申し訳ないな……と思っていたけど、何だか御者の方も張り切っているみたいだからお言葉に甘えてしまおう。
「はぁ〜……行かせたくない……」
小さな呟きが聞こえたけど、ロイとご両親に見送られてミミと共に馬車が動き出した。
カバンの中身をチェックして、身だしなみを整えてティアーズ王立学園の校門に到着した。
「リコ、まずは事務室へ行きましょう。学園長先生や受け持つ先生方は事情を知ってるから安心して!」
「ありがとう、ミミ。制服がとってもお似合いよ」
「リコ、それはこっちのセリフよ?……ほら、もう注目の的」
少し遠巻きではあるけど、初めて見る顔に興味があるのか他の生徒がこちらを見ている。人間も多少なりいるけど、この時期に留学っていうのがそもそも珍しいもの。そりゃ見ちゃうわよね!
「この時期の留学はあんまりないもの、人間だし注目されちゃうわよね」
「…………、ねぇ自分のこと鏡で見た?いい?変なのに付いて行っちゃダメだからね?」
「ちょっと!子供じゃないんだから!」
そんなやりとりをしながら目的の事務室で先生方に挨拶を済ませ、クラスへ向かった。私は最高学年のAクラス、どうやら成績順にクラス分けされてるみたいで……教室に入るとほとんどの生徒が机で自習している。扉の音に反応して、一斉にこちらに視線が注がれる。
ちょうど先生も教室に入り「本日より留学されるカトレア学園から来た生徒の紹介をしますね」と手を差し伸べてくださり壇上前まで進んだ。
「おはようございます、本日より留学して参りましたアプリコーゼ・エーデルシュタインと申します」
「ミミ・シュヴァルツです」
小さめな拍手の後に、席に着席した。
(ここで感じる視線はどちらかと言えば、ライバル登場?負けないんだから!っていう雰囲気がすごい。でもそれだけ皆様努力家という証拠ね。とても良いことだわ)




