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ティアーズ王国に来てから数日が経過した。
あれからカトレアの使者は帰ったようで、特に接触してくる様子はない。せっかくお父様が手続きして下さったんだもの、早くティアーズ学園に行きたくてウズウズしていた。そんな私に気付いてか、制服やカバンなどが着々と揃い始め明後日から登校することになった。
「リコ、少しいいかな?いくつか相談したいんだ」
「ロイファー!どうぞ、お茶用意するわね」
いつも何種類か紅茶や果実水を用意してくれるユリーは、王城の使用人方とも仲良くなったようで城下街の情報を手に入れては私へ持ってきてくれる。その中で最近のオススメをロイに準備した。ちなみに、今まで敬語だったロイだけど私からお願いして普通に喋ってもらえるようになったばかり。
「明後日から学園に行くんだろう?……不安はない?」
「もちろん、初めての所だから不安がないと言ったら嘘になるけど…… 楽しみの方が大きいわ」
「大丈夫そうだね。まずリコの護衛だけど、学園内も警備が万全というわけではないから、ミミを学生として潜入警護に付ける。女子同士なら気負わないだろ?」
「それは嬉しいわ!ミミと一緒に学生生活が送れるのなら大賛成」
「それと、住まいのことだ。今は、保護の事もあって王城にいるが……その、」
「学生寮?」
「いや、私の屋敷に……来ないか?」
「え?」
「本来、番いは片時も離れたくないくらい大切な存在なんだ。カトレアにいたリコの事は両親にも今まで黙っていたけど……リコさえ良ければきちんと紹介したいと思っている。明日、俺と一緒に屋敷に来てくれないか?」
「……うん。行く、ロイファーのご両親の許可が頂けるなら一緒にいたい」
手を広げたロイファーに応えて胸に飛び込んだ。優しく抱き合えばロイファーの香りにドキドキする。背中に回した手をなかなか離せない……離れたくないな。抱きしめたまま上を向くと、耐えるロイファーの苦悶の顔に思わず笑ってしまった。口付けくらいなら、って思うけど自分からは勇気がない。それに私の部屋との続き部屋にはユリーも控えてる。
「また一層香りが強くなるな……、どんな鍛錬より辛いよ」
「もう私には会いに来てくれない……の?」
あざとく上目遣いで甘えてみれば、更に顔が強張るのが何だか面白くなってきちゃった!ほんの少し、ほんの少し笑っただけなのに、私の顎をクイっと持ち上げて「俺の我慢がいつか解放されたら容赦しないぞ」って、強引に唇を奪われた。
優しい口付けが次第に熱を帯びて、息継ぎの仕方が分からない。
「はぁ……あ、ロイファー……」
「止められないっ」
隣の部屋にユリーがいるのもすっかり忘れて、舌を交わしたキスが深みにハマっていく。
「んっ……、も、ダメ……」
膝から崩れ落ちて、腰を支えられたままお姫様抱っこしてもらってるけど……このまま私……。
「俺の理性が崩壊する前に部屋を出るから、鍵をかけてから眠りについてくれ」
火照った身体を優しくベッドに降ろされ、小走りで部屋を出たロイファーに「おやすみ」も言えなかった。突然襲った嵐は、あっという間に通り過ぎてしまった。
「こ、これは……恥ずかしいわ……」




