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そんな加護があるんだ!そういえば……キルシュ王女の加護は、調和の加護と言っていたっけ。
「あの、トルシアン王国のキルシュ王女をご存知ですか?」
「あぁ、同じ王族だからね。交流はあるが、キルシュと言えば第三王女だったと記憶している」
「はい、私に変わりマルメラーデ様の婚約者としてカトレアにおります。キルシュ様の調和の加護というのは、どのような力なのですか?」
私のこの質問でベフォーア様やエデン先生の雰囲気が一変してしまった。
「……なるほど、謎が解けたよ」
「調和の力、トルシアンの狙いはそちらのようですな」
「ロイファー、お前の底上げされたその力が遺憾無く発揮できる機会かもしれない。近いうち、争い事が起きる。騎士団には申し訳ないが、少し準備を手伝ってもらうよ」
「べ、ベフォーア様!?争い事とは一体何のお話しですか?」
「いいかい、アプリコーゼ嬢 これから話す内容はあくまで推測に過ぎない。しかし先ほど言った通り私の予見の力は嘘ではないからね、出鱈目な話じゃない事は心に留めてくれ。恐らく、キルシュの狙いはカトレア王国だ。キルシュの力は調和でもあり不調和でもある。世を整える調和も、乱す不調和も同じ力だということだ。不調和は心の乱れを広め、人々から活力を奪う……軍事力があるカトレアの騎士・兵士の活力が奪われたら……」
「キルシュ様やトルシアン王国はカトレアを攻め入るという事ですか!?」
「そうだ、力を弱めたところで一気に攻め入る気だろう。騎士もそうだが、カトレアの市民も同じように操作されれば属国にするなど容易いだろう」
「そんな……」
「キルシュの最大の懸念はアプリコーゼ嬢、君だよ」
「私?」
「君の癒しの力は、身体を治癒するだけではない。心の安定にも非常に作用する、だから不調和最大の敵でもあるんだ。君が追放を言い渡されたキッカケもキルシュじゃないのかな?」
ま、まさか……。
『そこにいるキルシュ嬢が、密かに力を使う其方を見たと証言した』
嘘をつかれたのは、私を追放するため?エーデルシュタイン家の家族とも離れて、ウサギのリコとしての家族にも会えず、しかも攻めいられるような事になったら……。血の気が引いたように青ざめた私の肩を、優しくロイファーが支えてくれる。こんなに護りたいと思える人達がたくさんいるのに、私に一体何が出来るんだろう。
「アプリコーゼ嬢、我々としてもカトレアとしても君のその力がどうしても必要だ。学園に留学の間、一般授業とは別にエデン先生を付けるから制御とコントロールを学んでほしい。正直ゆっくりしている時間はあまりない、だが無理もダメだからね」
「分かりましたわ、私に出来ることをします」




