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 記憶があるのと実際に体験するのは、別物だ。

 食事を終えた私を見て「お風呂に入りませんか?」と聞いてくれたけど、とりあえず「怖い?」と尋ねてみた。一瞬キョトンとしたけど「怖くありませんよ、きっとスッキリされると思います」と言う言葉を信じて、お風呂に繋がるドアを開け、されるがままに身を託した。初めて見る自分の身体にドキッとしたけど、頭を洗われ良い匂いのする何かで洗われてとっても気持ちいい。身体を沈めてる温かいお湯も、初めてなのにどこか懐かしい気がして手で掬ったり、パシャっと遊んでみたり終始楽しかった。身体をふわふわのタオルで拭いて温かい風で髪を乾かすと、初めて見た時の私よりももっと綺麗な髪になっててビックリした。思わず指で撫でた髪は背中の真ん中くらいまでスルーっと滑ってこれまた気持ちいい!


「お顔も明るくなって、髪もふわふわ!さすがお嬢様ですわ!皆様きっとビックリされますよ、今日はもうこれで眠られて、」

「んーん、お父様とお母様に会いたい」

「……!きっと喜ばれます!髪を整えて着替えたら、お知らせしてきますね」

 ユリーが髪と服をセットし終えると、部屋を出て行った。それにしても鏡に映る私、可愛すぎる。これは、もう少ししっかり食べて身体を動かして、健康的な私が笑ったら……自分に惚れてしまうかもしれない。良い感じにセットしてもらったし、気分も良いからと車椅子から降りて再び自分の足で立つ挑戦を始めた。さっきより行ける!と一歩また一歩と前にゆっくり進む。側から見ればまるで初めて歩く赤ちゃんね……それでも膝の曲げ方、身体の支え方さえ分かれば意外に簡単だった。


 コンコン!

「お嬢様、旦那様と奥様がみえられました」と、ドアが開く。整った姿で自分の脚で立つアプリコーゼが目に入ったお父様は、駆け寄って抱きしめた。

「もう立ち上がって大丈夫なのかい!?無理はダメだ、だってお前は、」

「大丈夫よ、お父様」

 お母様も傍にきて優しく背中をさすってくれた。

「貴方のこんな姿を見れる日が来るなんて、生きててくれてありがとうリコ」


 ……リコ。不思議な気持ちだけど、嫌じゃない。んーん、リコもアプリコーゼもどっちも私だもの。この気持ち、忘れずいよう。ウサギのリコから、突然公爵令嬢のアプリコーゼになって、歩いたり喋ったり食べたりお風呂に入ったり……濃厚な一日がゆっくり終わった。

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