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 結局、気を利かせたお兄様がタイヤの付いた椅子を持ってきてくれて移動が楽になったけど。この便利な椅子は車椅子と言うらしい。人間って面白い事考えるな〜。……いやいや、それより!早く知らなきゃいけないことが多すぎる。まずは私の年齢から探らなくちゃ。


「リコが寝たきりになる前のこと覚えてる?」

 

 首を横に振った。

「元々身体が弱かったのに、リコが11歳の夏に熱を出して倒れた後、意識がなくなってしまったんだ。王都に来ていた有名な医師を陛下に紹介してもらい、もし処方された薬が効けば目を覚まして回復するだろうが……薬を身体が拒否すればそのまま……。家族みんなで祈る思いだったよ、約一年掛かったけどこうして目が覚めたんだ。リコが頑張った証だ。一番嬉しいのは、目が覚めたリコが以前より明るい気がすることかな。前は体調が悪かったせいもあるかもしれないけど、俯きがちで元気がなかったからね。目の前にいるのが同じ人物とは思えないよ」


 お兄様が嬉しそうに微笑んだ。この子の家族のためにも、もっと元気で明るく生きてあげなきゃいけない気がする。まずは歩く練習と喋る練習ね!それにしてもちょっとお腹空いたな~……ぐぅ。身体は正直だ。「アプリコーゼ様!すぐに準備しますね」ってまた慌てて出ていっちゃった。

「嬉しいんだよ、食欲は元気な証だからね。支度が出来るまで横になるかい?」

 頷いてベッドまで運んでもらった。横になった私の頭をお兄様がまた優しく撫でて「早くお散歩出来るようにたくさん食べるんだよ」と言い残して部屋を後にした。


 そういえば、私の名前似てない!?ウサギの時はリコ、人間になったらアプリコーゼで家族からは愛称でリコって呼ばれてる。偶然にしては出来すぎてるけど……。


「あ、い、う、え、お」

 何回か口の動かし方、声の大きさ、お腹の力加減を確認しながら練習して割とコツを掴んできた。言葉も知ってるし、単語だってある程度わかる。病気で部屋にいることが多かったけど、本をたくさん読んでたのだって記憶にあるもの。無駄になんてさせない!そう意気込んで発声練習を繰り返していると、クンクン……鼻を刺激する良い香りを感じ取った。この感じ、リコの頃と同じだ……匂いに敏感なのはリコの力を引き継いだ?と不思議に感じながらも開くであろうドアが気になって仕方ない。


 コンコン!

「お嬢様入りますね」とユリーが台車を押して何かを持ってきてくれた。ベッドに横付け出来るカウンターを用意して並べられたお皿には、湯気のたった甘い香りのスープとすり下ろしのリンゴが乗っている。スプーンを持って、初めて人間の食事を口に運ぶと……ほんのり甘味のある優しいミルクのスープがお腹の中を温めた。


「おいしい!」


 発声練習の成果か、思った言葉がスムーズに出てきた。私を見てまたユリーの目がウルっとしてる。「ありがとう」と口にした。

「お嬢様……!本当に良かったです……。さぁ、お腹いっぱい食べてくださいませ。料理長もさぞお喜びになりますよ」

 スプーンを使うのは問題なさそうだと思った私は、スープを綺麗に飲み干して大好きなリンゴに手をつけると、これまた美味しい!!!!今までは、そのままかじって食べてたのに……こんな風に食べれるなんて知らなかった!これは弟妹たちにも教えてあげたいな。


 会えたら絶対教えてあげよう!

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