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 それから、四年があっという間に過ぎた。12歳から通い始めた学園も今年卒業の予定で、卒業と同時にマルメラーデ様と結婚という話しになっている。……しかし、ロイファーがいなくなった日から私は一回も癒しの力が使えない。王太子妃教育とは別に、力のコントロールや発動条件、範囲検証も行う予定だったけど、救護院に行っても神殿に行っても手から光は放たれなかった。エデン先生に会いたいとお願いしても「こちらの教師で十分だ」と合わせてもらえず、挙げ句の果てに発現するまで自宅には帰さないと言われた。この四年間ほとんど王城と学園の往復しかしていない。それに学園にいても、私が名ばかりの加護持ちだとほとんどの生徒が知っていて、殿下の婚約者に相応しくないと蔑んだ目で見られた。


 そんな私は次第に笑顔が少なくなり、マルメラーデ様との時間も仮面を被った作り笑い。それが一層私から気力を奪う。それでも、成長する度に美しさが増し、作り笑いでも私は社交界の華になった。


 城の廊下を歩いていると、マルメラーデ様とすれ違った。

「アプリコーゼ、今日はどこで茶会の予定なんだい?」

「本日は王妃さまのお茶会で温室にお招き頂いております」

「では、終わる頃に迎えに行こう。ちょうど渡したいものが仕上がってくるはずだから」

「はい、お待ちしております」


 温室へ向かいながら空を見上げた。ロイファーがいなくなった日と同じくして、ジュニスも全く見なくなった。あの日ジュニスを助けた後、動揺した私を気遣って誰かがジュニスを介抱してくれてたはず。でも全く姿を見なくなってしまった。あの時の癒しが効かず飛べなくなってしまったのか……あんな事件があったから怖くなってしまったのかもしれない。唯一、私とお母さんを繋いでくれた優しい友人。


 そもそも今日のお茶会も気乗りしない。最初こそ婚約者として王太子妃教育を受けている私を気遣い優しく接してくれた王妃様も、力を発揮しない名ばかりの加護持ちと分かれば上辺だけの関係になるのも時間の問題だった。


「王妃様、本日はお招き頂きありがとうございます」

「あらアプリコーゼ、いらっしゃい。今日はお客様がいらっしゃるの。あっ、来ましたね」

 扉が開くとフワッと広がるドレスに綺麗なブロンドの髪を靡かせる令嬢が入ってきた。

「まぁ、王妃様。遅くなりまして申し訳ございません」

「構いませんよ、紹介します。こちらマルメラーデの婚約者アプリコーゼ・エーデルシュタインよ」

「アプリコーゼ・エーデルシュタインと申します」

「なんて可愛らしいの!さすがマルメラーデ様ね。わたくしは、隣国トルシアン王国第三王女キルシュです。キルシュで結構よ、よろしくね」

「キルシュ様、よろしくお願いします」


 隣国の王女様がなぜ私とお茶会なのかしら。

「今日は私の国のオススメをお持ちしましたの、砂糖を入れずとも茶葉が甘いの!とっても美味しいのよ」

 出されたお茶は、香り豊かで口に含めば優しい甘さに包まれた。

「とても美味しいお茶ですね!」

「気に入ってくれて嬉しいわ」

 王妃様は静かに口をつけカップを置いた。

「アプリコーゼ、今日ここにキルシュ様をお呼びしたのは婚約者交代の話しをするためよ」

「……。」

「貴方の力はとても不安定でしょ?四年も待ってあげたのに全く気配がないじゃない?加護があるから婚約者にしたのに、これじゃ詐欺と一緒だわ。だから貴方には婚約者の座を降りてもらおうと思うの。まだマルメラーデが首を縦に振らないんだけどね」

 

 やっぱりそういう話しになりますよね。別にマルメラーデ様を愛してるかって聞かれたら、それは否で。私は婚約者なんて今すぐにでも辞退したい。だけど……これから加護の力で国を豊かにする可能性があるから手放せなかっただけ。

「キルシュ様は、調和の女神の加護を持つの。簡単に言えば平和をもたらす力ですから、我が国にピッタリではなくて?マルメラーデとはすでに対面も済ませてます。城を訪れる際に会う事も増えるでしょうから、色々学びなさい」

「……はい、王妃様」


 トルシアン王国やキルシュ様の話しで終始蚊帳の外だった私は、冷めた甘い紅茶を含みながら終わりの時間を待った。

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