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 誕生日当日。

 本来なら敷地内のホールを使う予定だったけど……どうせやるなら私の好きな場所がいいと、ガーデンパーティーになった。部屋の窓を開け、準備してくれている使用人達に「ありがとうー」と大きく手を振ると、使用人達も嬉しそうに振り返してくれる。木陰が入る絶妙な場所。


「殿下からの贈り物は、とても良いお品ですねお嬢様」

「うん……私なんかが着ていいのか不安になるよ、ねぇドレスの色に意味ってあるの?」

「ありますとも!異性からの贈り物で、しかも愛する方へ身に付けるものを贈るときは、自分の色を選ぶのです」

「自分の色?」

「今日のドレスは、優しいシャンパンゴールド。殿下の瞳の色がまさに淡い金色ですから」

「自分の色を贈ることが意思表示になるんだ」


 優秀且つ見目麗しく、令嬢からの人気も相当だと聞くマルメラーデの事は、自分でも驚くほど本当に関心がない。……どちらかと言えば、チラッと目線を動かせば、そこにはロイファーが真っ直ぐ前を見て立っていた。屋敷にいない事も多いし、あんまり会話もないけれど、どうしてかいつも彼を探してしまう。いれば安心を、いなければ気落ちするこの気持ちにどんな名前が付くのか、この時のアプリコーゼは知る由もなかった。


「お客様がお見えですよ、リコも移動しましょう」

お母様とクライゼルお兄様が呼びにきてくれた。手を繋いで移動し、ガーデンパーティーの会場一歩手前に用意された控室でマルメラーデ様と落ち合う。

「アプリコーゼ、私が贈ったドレス……とても似合っている。今日君の隣を独占出来る喜びをどう伝えたら良いんだろう。本当に嬉しいよ、どうか私の手を取って欲しい」

「本日はよろしくお願いします。ドレスも……その、汚さない様に頑張ります」

「ははっ、汚れた時はまた新たなドレスを贈る口実になるから気にしなくて良い」

 手の甲に口付けを落とし、部屋の扉を抜けた。


 すでに集まる貴族の方々が注目する中、マルメラーデ様のエスコートで入場し、用意された壇上へ上がるとお父様の挨拶から始まった。身体が弱く表に出られなかった事、体調が戻りパーティーまで開ける様になった喜び、これからのよりよい関係を願い挨拶が締め括られた。各自、歓談しながら各テーブルを回る。


「リコー!」

「ミミ!」

 エデン先生の家族も来てくれてた。今ではミミと愛称で呼び合う仲だ。サイアス様は、私をエスコートするマルメラーデ様に驚きながらも礼を尽くした。



◇◇◇◇


 もし俺がお嬢様の隣に立てていたら……。

 胸の苦しみを抑えて気丈に振る舞い、後方からお嬢様を守る。わかっている、わかっているのに……可愛くも美しく着飾った俺の番いは、違う男の隣で笑っている。あの甘い香りを感じ取れるのが自分だけなのか、それともマルメラーデも。本当は今すぐにでも言ってしまいたい、本当は今すぐにでもお嬢様をこの腕に抱えたいのに。拳を握りしめる力が強くなる。


「ロイファー、大丈夫か?」

 はっ!として隣に並ぶカリオストを見上げた。

「職務中に失礼しました。大丈夫です、昨日の訓練がなかなかハードで……」

「第一騎士団は尋常じゃないからなー、俺でも厳しいよ。いつ昇格試験なんだ?」

「来月の初めです、そこで騎士として昇格出来れば……」

「護衛より第一騎士団希望だろ?殿下付きになるって以前話していたもんな」

「いや、それは……」



「きゃぁぁぁぁぁー!」


 はっ!!と叫び声の方を振り向き、横たわった小鳥と庭園の茂みから誰かの走り去る姿を見つけた。

「ロイファー、追え!」

 カリオストの声と同時に飛び出し、勢いよく追い掛けたが撒かれてしまった。顔は見えなかったが、体型からして男だろう。それにしてもこの匂い……。


「いやぁー!!ジュニス、ジュニス!!」

 今度は先ほどの庭園からお嬢様の声が聞こえ慌てて戻ると、傷付いたジュニスを優しく抱き大粒の涙を流すお嬢様の姿が飛び込んできた。急ぎ傍まで駆け寄ろうとしたのに、マルメラーデに制止され近づくことが出来ない。

「ジュニス……お願い、目を開けて……」

 パーティーに来た多くの者たちがお嬢様に注目し、肩を落としている。

「お誕生日なのに……」「何があったのかしら……」


 お嬢様と毎日のように庭園を飛んでいるジュニス?ん?……待てよ、この状況……しまった!!!!


「ねぇ、見て!」

 見守っていた者たちが異変に気付き口々に「えっ?」とこぼした。大粒の涙を流し、切り付けられたような傷に手をかざしたお嬢様から……あの日の様にキラキラ光る優しい光がジュニスを包み込んだ。


 (まずい!お嬢様の力が露見してしまう!)


 光が静まり、腕の中で目を覚ましたジュニスが鳴いた。

『リコ……』

「ジュニス!もう大丈夫だよ、ジュニス……」

 静まり返る庭園で、お嬢様の声だけが響く中、最初に口を開いたのはマルメラーデだった。

「ア、アプリコーゼ今のは?君は、癒しの加護があるのか!?……公爵!知っていたのか!?」

 力を使ってしまったと内心焦り下を向くお嬢様と、初めて見た光景に唖然とする旦那様。


 でも、俺は見逃さなかった。

 片方の口角を上げ、そっと微笑むマルメラーデの顔を……。

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