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俺は、六歳で初めてこの国に来た。
実家は隣国ティアーズ王国にあり、アインツェルゲンガー公爵家の嫡男である。先代国王の弟である祖父は、出生後すぐに命を狙われ危機を感じた両親の希望によりアインツェルゲンガー公爵家に保護という形で匿われた。保護とは言うが、周りには病死と伝え出生自体を隠した。運良く公爵家の長女が番いと分かり、そのまま婿養子として継いだのが現在に至る。以来、父も俺も狼族の血を色濃く受け継ぎ、獣人の姿が本来の姿ではあるが……祖父の教えから人間の家系として秘匿されてきた。
俺は、父さんのような騎士になるべく騎士選抜生としてティアーズ学校へ進学を予定していたが、カトレア王国からマルメラーデ王子との交流、それに伴う交易増進の目的で選ばれし子供たちの一人としてカトレア学園へ留学した。
同い年という事もあり、お互い気を許す友人になった俺は、マルメラーデから側近騎士としてこの国にいて欲しいと打診を受けた。嫡男ではあるが、やり甲斐のある仕事だと感じ両親に相談した。両親は俺の意思を尊重し、嫡男であることに囚われる必要はないと背中を押してくれた。
しかし、祖父が王弟であった血筋から俺にも王位継承権が付いている。現在のティアーズ王家は、ベフォーア王子のみであり、俺が密かに継承順位第二位となっている。気にしなくて良いという両親に甘え、カトレア王国の見習い騎士として、騎士寮で過ごしながら日々鍛錬に明け暮れていた。成人の儀は国民の義務でもあり、これをカトレアで受ける事ができない事情で、マルメラーデとサイアスには獣人である事を告げていた。
「ロイファー、成人の儀で番いは見つからなかったのか?」
「……残念ながらな、サイアスもだろ?」
「全然残念に見えないのはなぜだろうな。獣人の多くは、同い年で見つかるって言うけど……まぁ気長に待つさ」
「そうだな……、大半は同い年だけど例外もある。人間相手なら、獣人の神殿では見つからないし、獣人だとしても同い年でない夫婦もいるから」
…………あの時は、まさか自分の番いがカトレア王国にいるなんて想像もしていなかった。
両親に、お嬢様の事を報告するか悩んだが……結局伝えずにいる。相手が人間で、ましてやマルメラーデの事もある。確かな約束もできないお嬢様の事を報告するわけにはいかなかった。




