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副士団長様の元に集められた希望者は12名。クジで対戦表に名前を埋め、早々に試合が始まった。ルールは私にはよくわからないけど、きっと訓練と同じような感じかなと……ふと、視線を感じて目を向けると、何やら苦しい表情を浮かべ胸に手を押さえながら私を見る騎士様を見つけた。
どうしてあんなに苦しそうなの……?
気になって目で追ってしまう。騎士様も私から視線を外さない。
「リコ?大丈夫かい?」
黙ったまま動かない私を心配してお父様が飲み物を差し出してくれたけど、目を離しちゃいけないような気持ちになって、気になるその騎士様の試合を見守った。周りに比べて小柄で、でも素早い動きとキレのある剣さばきであっという間に倒してしまった。思わず小さく拍手を送ると口元を手で隠し補給所へ行ってしまった。そんな様子を見ていたマルメラーデが「彼が気になる?」と問いかけた。
「いえ、少し様子が変でしたので」
「彼は、第一騎士団の見習い騎士なんだ。いずれ私の護衛になる、この試合は腕試しといったところだろう」
「腕試し……」
(なるつもりもない私の護衛選びの試合に参加させられて……苦しいの?)
「……。」
「アプリコーゼ嬢、もし貴方の許しを頂けるならぜひ私のティータイムに付き合ってくれないか?」
「私が、ですか?」
「あぁ、無事に騎士が決まった後は少々手続きに時間がかかる。その間の暇つぶしだけ私に付き合って欲しい」
お父様を見るとコクンと頷き私を見るので「はい」と返事して試合の続きを見ていた。大丈夫、難しいこと聞かれても答えられるようにニーレイ先生とエデン先生から色々教えてもらってるし、リコの記憶もある!それにしても先ほどの騎士様は順調に勝ち上がっていくのね。このまま勝っても私の騎士になるわけじゃないのに。なんだか少し胸の引っ掛かりを覚えつつ、最終的に決勝は行わず準決勝止まりで二名が選出された。
一人は、とても爽やかな笑顔の男性でカリオスト様、もう一人は……
「エ、エーデルシュタイン公爵様、私ロイファー・アインツェルゲンガーから一つお願いがございます」
「申してみよ」
「私は第一騎士団の見習い騎士で、まだ半人前でございます。しかし、お嬢様を護衛したく試合に名乗りを上げました。もしお許しを頂けるのならば、お嬢様の護衛と第一騎士団の鍛錬を掛け持ちさせては頂けませんでしょうか?専属でお傍に付く者をどうしても希望とあらば諦めましょう。ですが、お許し頂けた暁には全力でお嬢様をお守りすると誓います」
「なるほど、では、リコが決めなさい」
「えっ……?」
この方は、ただの腕試しで参加されていただけではないの?
「ロイファー、掛け持ちだなんて第一騎士団の鍛錬はそんなに甘くないだろう?私の護衛に就くため筆頭見習いとして精を出しているじゃないか。彼女の護衛は他に任せれば、」
「私の意思は変わりません、マルメラーデ殿下。お嬢様をお守りするため強くなりたいのです。掛け持ちしても手を抜くつもりは一切ございません」
殿下に話すその拳が固く閉じられ、やはり苦悶の表情が見て取れる。お父様は私に決めろと仰った。それならば……
「掛け持ちを許可します、ロイファー様……私は強くなる貴方をもっと見たいです。お父様いいですか?」
「リコが決めたのなら異論はない。来週から正式に護衛騎士として勤務できるよう二名の手続きを行おう」
ロイファー様の顔が幾分か和らいだのが見えて少し嬉しかった。ただ、隣のマルメラーデがどんな表情をしていたのか……知る由もなかった。




