昔
俺たちは、しばしショッピングを楽しんだ。もちろん、俺は女の子とこんな風に買い物するのははじめてで緊張した。
とても幸せだった。例えそれが嘘だとしても。
「あなた、結構似合うね!」
アヤちゃんが俺に着せたのは黒いパーカーに、太めのジーンズ、黄土色のブーツ。頭には、ツバがまっすぐなストリート系の帽子。
どうやら、アヤちゃんはストリート系が好きらしい。うーむ。
「そっちのほうが全然かっこいいよ!」
アヤちゃんは、俺の身体にぴったりとひっついてきて、賛美の言葉を送った。
俺は、なんともいえない高揚感に包まれた。
今までにない快感。
人に容姿を誉められるのはこんなに気持ちいいものなのか。今頃気付いた。
といっても、人から容姿をほめられるのは初めてではない。
俺は中学生になるまでは、美形だったのだ。これは、思い込みでない。
なぜなら、親や友人に可愛い、かっこいい、ジャニーズ事務所には入れる。などと言われていたからだ。
しかし、中学生の頃から劣化したのだろうか?そんな言葉は聞かなくなった。
昔、かっこいいと言われたとき対応に困っていたものだったが、今やキモイと言われたとき対応に困る。
ましてや、かっこいいと言われチヤホヤされていた時の記憶があるから、余計に劣等感を感じる。
あの頃の俺だったら・・・
あの頃が一番自信に満ちあふれていたのかもしれない・・・
「さあ、装備も整ったことだし、早速出発だ!」
「うんっ!」
アヤちゃんは、満面の笑みを浮かべる。
彼女の笑顔は可愛かった。