恋
「やだっ!結構やるじゃんー!」
姫が俺に抱きついてきた。柔らかいふくらみが俺の身体に当たる。
おぉーっ!
思わず心の中でガッツポーズ。なんかこれだけで幸せ。
「んんー」
姫が顔を俺の胸にスリスリと押し付ける。その仕草があまりにも可愛らしくて、思わず頭を撫でてしまった。
姫が、顔をあげ俺の顔を見る。
やばい、馴れ馴れしすぎた。女の子は頭を撫でられるのが好きと、Yahoo!の知恵袋に書いてあったが釣りだったのか。
と思ったが、そんな心配とは裏腹に彼女は、とろけそうな目でこちらを見ていた。その目はまるで甘えた子猫ちゃん。なんてな。
俺たちは抱き合ったまま少しの間見つめあっていた。
「うぉっほん!」
先ほどの初老の男が、わざとらしく咳払いする。
それで、我に帰った俺たちは、パッと身体を離す。彼女は、ぼーっとして目が虚ろになっている。
そして、恥ずかしそうにこちらをチラチラと見てくる。
これは、俺の事が好きなのかっ!?いや、でも初対面だし、さっきまでツンツンだったし!しかし!あの顔は間違いなく恋してる顔だな!ふふふ
俺は――
何故か悲しかった。何故なら彼女は俺の事を好きなはずないと知っていたからだ。俺みたいな陰気で不細工な奴を好きになる奴なんていないのだ。
俺は今までそう決めつけてきた。無駄に期待して、後で裏切られるのが怖いからだ。
だから――
そんな目で俺を見るな。
俺はおかしくない。