妄想
その日、世界は一変した。
その世界は私を殺した。
大学に入ってもう二年と半年が経つが、俺は未だにクラスの奴らと馴染めずにいる。いや、友達がいないわけじゃないんだ。いるんだけど、上辺だけみたいな。会話もイマイチ盛り上がらない。
昼食の時間、俺は聞き役に徹する。特に、会話に参加するわけでもなく、ただうなずき愛想笑いをする。いつもかわらない。くっだらない。
今日も授業が終わり、自宅へ帰る。もちろん、直帰だ。寄り道の誘いもない。学校と家の往復、これをあと二年続けるのか。アホらしい。死にたい。
自殺願望が湧いてきたのは、大学に入ってから。友人ともあまり馴染めず、顔も悪い、スタイルは百七十センチの四十八キロのガリガリと、劣等感の塊になってしまった。おかげさまで、性格もひねくれてしまった。いや、これは自分次第なのだろうけど、それでも劣等感の影響は大きい。
学校から家までは、電車を乗り継ぎ約一時間半。毎日三時間も移動に使っているのだ。あほか。時間が勿体無い。時給八百円で計算すると、週に一万二千円も稼げる計算だ。まあ、こんなことを考えながら、いつも帰っている。無駄ではないだろ?ふふふ。
家に帰ると、俺宛の荷物が届けられていた。何か頼んだ覚えはない。差出人はアヤとだけ書かれていた。
怪しい。これは、新手の詐欺か?考えてみたが、めんどうなので開けてみた。
世界は一瞬で変わる。
それは、ふとしたキッカケだったんだ。
ちょっとした綻びが、原因みたいなの?
なぜ、疑問形か?
それは俺が知りたい。
アルナタ王国は、魔王討伐に力を注いでる国の一つ。一年前の、第三魔王軍自爆テロにより、王様を失って以来、魔王討伐に躍起になっている。魔法の研究も、世界でかなり進んでいるほうと言われている。
「姫!召喚装置の起動に成功しましたぞ!」
「ほんとに!?これで、魔王を殺せる剛腕勇者を召喚できるし!」
おおー。研究室内がざわめき出す。装置が、ガタガタと古臭い音を出しながら、動いている。そこに、いたのは
意味が分からなかった。
目の前がブラックアウトしたかと思ったら、目の前に超可愛い女の子がいる。
彼女は、上にグレーのパーカーに、下はデニムのミニスカートにレギンス、でもってスニーカー。
俺好みの格好だ。周りにはちょっとおかしいと言われるが。
「ちょっと!」
つい、舐めまわすように見てしまったか。訴えられたらマズいな。
「いや、俺はあなたの後ろのその本棚を見てい…」
「うるさいっっ!」
突然大きな声を出すので、俺はびっくりして後ずさりしてしまった。
「あんたみたいなのが本当に魔王を倒せんの!?」
意味が分からない。そういえば、ここは何処だ?俺は…何を…
周りを見ると、白い白衣を着た、いかにも研究員ってやつがかなりいる。
ここは、俺の家じゃない…?何処だ…魔王?ドラクエかよ。
考えていると、リーダーであろう初老の男が話し出す。
「あなたは勇者に選ばれました。魔王を殺してもらいます。」
「異世界から来られたので分からないことも多いとは思いますが、こちらとしても全力でサポートしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。」
胡散臭い喋り方だ。俺が何年か前にネットで知り合ったビジネス仲間に似ている。
結局、そいつは共有の運転資金を持ち逃げして消えてしまった。
思い出すだけで腹が立つ。
だが、今の状況が分からないので、詳しく説明してもらうことにした。
すると、初老の男は待ってましたと言わんばかりに、得意気な顔で語り出す。