想う気持ちは憎しみへと変わり殺意になる
俺は何度繰り返せば分かるのだろうか…。
いや、本当は気づいていたのだ。
だが、認めたくなかっただけだ。
どれくらいの時がたっただろう。あんなにも暗かった空も明るくなってきた。かすかに朝日が見える。
もうどうでもいいと思った。羞恥心も何も感じない。誰にどう思われようと別に構わない。だったら俺は何でもできるはずだ。逆に言えば、こういう状況にならなければ何もできない。だから、俺は不幸を望むのだ。不幸になった時だけ俺は自由になれる。
そんな高尚とも言える思考巡らせていると、誰かが近づいてくる気配がした。しかし、今の俺にはどうでも良かったので、仰向けで寝たまま視線だけ向けた。
そこには、一人の人間が俺を見下ろしていた。だが…
おかしい。空は明るいはずなのにそいつの顔は暗くぼんやりしている。全身黒ずくめで、まるで影のようだ。
「満たしてあげましょう」そいつは言う。
「意味が分からないな」
どこの誰かは知らないが今の俺にとっては何もかもが腹立たしい。殺すぞ。
「ははは、わかってるくせに。あなたはもう何をしても満たされない。満足できないわ。」
………。
どきりとした。図星だった。
俺は初めてのsexをも逃げ出した。それは、俺が今まで最も望んでいたものだったのに。
何故か怖くなって虚しくなって……仮想空間だというのに。
仮想空間だから何したって夢みたいなものだ。なのに俺にはまだ自由がなかった。勇気がなかった。
「あなたは病気なのです。今すぐに治療をしなければいけません。なあに、治療はすぐに終わりますよ。さすれば、あなたは幸せを享受できるでしょう。」
そいつはニヤリとはにかんだ。
「いいですか?」
俺は救いを求めた。この、何をしてても満たされずなんの感情も沸いてこなくなった俺を――
殺してくれ
そいつは手を伸ばしてこういった。
「悪魔の契約を。」
俺も手を伸ばし握り返す。
「ようこそ。世界の終わりへ。」