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初体験まで

アヤちゃんは俺が機嫌悪くなったと思ったのか謝ってきた。

「ごめんね・・・」

「別に」

俺は一言返すだけだった。

その後、アヤちゃんは気をつかってか話しかけてきてくれたが

話す気分にはなれず、適当に返事をするくらいだった。

そんな俺を見て呆れたかのかどうかは分からないが

アヤちゃんは俺に話しかけてこなくなった。

俺達はただ黙って宿屋へ向かう道を歩いた。


宿屋に着くと、アヤちゃんが慣れた手つきで受け付けを済ませ、

案内された部屋へ向かう。俺はただついていくだけ。

カッコワルイ。


今日は、休日前で部屋がいっぱいらしく、俺達は一人用の部屋で

二人泊まることになった。部屋の奥には、ふかふかのシングルベット。

ほかにも、ソファにテーブル、テレビまである。びっくりだ。

この世界にはテレビもあるのか。何を流すんだ?まじで。

アヤちゃんに聞きたがったが、話したくなかったので聞かないでおいた。

トイレと風呂もある。これじゃまるで普通のホテルじゃないか。

いったいどういう時代なんだ。文明はどこまで進んでいるんだ。

分からなかったけど、ただ、ここにいれば元の世界にいる気持ちになれると思った。


アヤちゃんは怒っているらしかった。

当たり前だ。

謝っても許してくれない、話しかけてもしゃべらない。

怒って当然だ。俺だって怒る。

きっと、アヤちゃんは場を和ませようとしたんだ。

だから、ちょっとした冗談のつもりだったんだろう。

俺を傷つける気はなかった。

きっと、そうだ。そうだろ?

そうなんだろ?


俺は―――

「ごめんね、アヤちゃん」

謝った。

勝手な被害妄想で自らの殻に閉じこもってしまった。

いつだって、避けていたのは僕の方だったんだ。

「何が?」

アヤちゃんはまだ怒っているらしかった。

ちょっと涙ぐんでいてるが、不機嫌そうな表情だ。

「いや、なんか怒らせちゃって…」

上手く言葉が出てこない。

「……」

「もういいよ」

アヤちゃんの声は優しかった。可愛いかった。

「あたしのほうこそ、ごめんね。傷つけちゃった…」

申しわけなさそうに、こっちを上目使いでみてくる。あまりの可愛さに思わず抱きしめる。肉食なのさ、実は。

アヤちゃんに顔を近づける。

アヤちゃんはキスをしたそうにこちらを見ている。

キスをしますか?

→はい

俺の初めてのキスを捧げた。アヤちゃんに。出会って間もない女に。彼女でもないのに。

そう考えると興奮してくる。もう、これは、OKのサイン、だよね。

俺は―――

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