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旅立ち編Ⅳ 護る

 行商人を助けた後、修理を終えた馬車に乗せてもらった二人。

 再び魔獣に襲われることなく順調に次の街へと進んでいく。

 けして快適ではない乗り心地も、少女にとっては良い旅のスパイスとなり悪路で体が跳ねるたびに笑い転げていた。


 荒野から、徐々に緑が見え始めるとすぐに高い外壁が姿を見せる。

 道なりに進むと門に守衛が二人。

 行商人は顔なじみなのか、馬車を止め二人と話を始める。

 程なくして話している最中に少女たちの方に視線を向け、また話し込む。

 和やかなまま会話を終え街の中へと馬車はまた、揺れ始める。

 すれ違いざま、ぺこりと頭を下げる守衛と、少女に手を振る守衛。

 身体を覆うローブから片手だけ出し、手を振り返す少女を見ながら男は少し思考する。


(どうやら、旅人が嫌われているわけでは無いようだな。

 少しはゆっくりできそうか。これからの旅支度も整えなくてはな。)


 再び馬車が止まった所で、思考を止めると行商人から声がかかる。


「お疲れさまでした。二人とも到着しましたよ!」


「おじちゃん。ありがとっ!」


「世話になったな。」


「こちらこそ、本当にありがとうございました。」


 挨拶の後、馬車を飛び降りると初めて訪れる街に興奮しうろうろし始める少女。

 男は施設の大まかな位置などを聞いた後、行商人と別れ少女と合流する。


 宿の手配を済ませギルドの受付がある酒場に向かうと、行商人から既に話しが通っていたようで名前を記入する程度でとんとん拍子で2人分の冒険ギルドの登録証が発行された。


「早速で悪いのだけど、二人の腕を見込んで手伝ってほしい。

 詳しい話は街の入口にいる守衛に聞いてもらえるかしら。」


 手渡されると同時に受付の女性にそう言われる。

 少女は二つ返事で承諾し、男は頭を抱えながら承諾していた。

 そんなやり取りを済ませ二人は守衛の元へと向かっていた。



街の入口――


 2人に気づいた守衛の一人から申し訳なさそうに声がかかる。


「おぉ。着いたばかりなのに悪いね。」


「急いでいるのだろう?で、俺たちは何をしたらいい?」


 男は少し肩をすくめやれやれといった態度を取るが、気にするなと用件を聞き始める。


「近くの国の先で王国軍と魔王軍が領土争いをしているのは知っているか?

 最近も派手にやってたんだが、まぁ膠着状態ってやつだな。」


「・・・。」


 魔王軍と聞いて、殺気立つ少女。

 その頭をぐしゃぐしゃと撫でまわし、男が答える。


「王国軍が優勢と聞いているが?」


「あ~。そうだね。攻められているが返り討ちに出来ている状態だね。

 まぁあそこが墜とされる事は無いと私も思っている。」


 そこまで話して、少し表情の曇る守衛。


「それ自体は問題じゃなかったんだが、

 あの戦闘の後位からかな、

 この街の付近でも魔獣の目撃情報が相次いでいてね。

 関連性も含めて、まだ判らない事が多いから、

 安全に暮らす為にも、腕の立つ人を集めて調査をしようって話しになっているんだよ。」


「なるほど。歓迎されていたのはそういう事情か。」


「私としては、普通に歓迎したい所なんだけどね。

 そっちのお嬢さんも腕は立つと聞いている。

 請けてはもらえないだろうか?」


「そういう事であれば、協力しよう。お前も良いよな?」


「あぁ。もちろんだっ!」


 2人とも二つ返事で承諾する。


「ありがとう。心強いよ。

 とはいえ着いたばかりだし、まずは旅の疲れを取ってほしい。

 泊っている宿を教えてくれるかい?

 明日、改めて担当を向かわせるよ。」


 男は宿泊している部屋などを説明し軽く挨拶を済ませた後、少女と二人で宿に戻っていった。



宿屋――


 翌日、朝食を済ませた二人は男の部屋で、来客を待っていた。

 少女は窓に腰掛け、街の様子を見ながら目を輝かせている。

 その近くで、男は椅子に腰かけ本を読みながら、時折コーヒーを嗜んでいる。


コンコン


「どうぞ。空いているよ。」


 男は読んでいた本を閉じると、開いたドアの方に目を向ける。

 入ってきたのは、20代前半の男性。


「失礼します。調査の件引き受けて頂きありがとうございます。

 お二人に同行させていただきますので、以後よろしくお願いします!」


 丁寧な言葉遣いに、勢いよく頭を下げる青年。

 態度からも緊張している様子がうかがえる。


「あたし達はこの街の周辺には詳しくないからな。

 色々と教えてもらえると助かるっ!」


 頭を下げている青年の元へ駆け寄り、挨拶をする少女。

 少女の声をうけ頭を上げ少女を見る青年。


「!若いとは聞いていたが、まだ子供じゃないかっ。

 それに君、その腕。大丈夫なのかい?!」


 驚きを隠せず、少し声を荒げてしまう青年。

 その様子は、心底少女を心配しているようだった。


「あ、あぁ。これは前からなんだ。気にしないでくれ。

 それに、ここに来る途中あたし一人で魔獣を倒してる。

 結構強いんだぞ、あたし!」


 そんな青年の様子を感じ取ったのか、少女は胸を張り自慢げに話す。

 が、青年は男を睨むようにして、言葉を放つ。


「一人でって、貴方はこの子の傍にいたのでは?

 何故、そんな危険な目に!」


「と言われてもな。勝手に突っ込んでいったのはこいつだ。」


「それを護るのが、私達大人の役目でしょ!」


 暫くの沈黙。

 二人は青年の行動に目を丸くしていた。

 感情のまま言葉を発していたことに気づきはっとなる青年。


「あ、い、いきなりすみません!

 事情も良く知らず、かっとなってしまいました。」


 青年は再び深々と頭を下げる。

 一連の流れを振り返り、堪えていた笑いがこみあげてくる男。


「っくく、あははっ。・・・いや、笑ってしまってすまない。

 謝らなくていいよ。君が言うことも一理ある。

 ふふっ、で、どうする?やめておくか?」


「お、おい。なんで止めるんだっ。

 放っておくと危ないんだろう?お前が行かなくてもあたしは行くぞっ!」


 男の提案に青年が応えるよりも早く、少女は被せる様に発言をする。

 そんな二人の様子を見て、難しい顔で悩みだす青年。

 暫く悩みぬくと、肩を下ろしまた話始める。


「お二人がどんな方達なのか、少しだけ、少しだけですが判った気がします。

 君が言うように、この調査を放っておくと街が危険にさらされる可能性もある。

 街に住んでいる人たちを護る為にも、やらなきゃいけないんだ。」


「本当は、貴方にだけついてきて欲しいのですが、

 そうするとこの子は勝手に動いてしまうのでしょう?」


「まぁ、そうなるだろうな。この様子じゃ。」


「であれば、近くで私と貴方が護っていた方が安全ですね。」


 青年は男にそう言うと、続けて屈んで目線を合わせ少女に話しかける。


「いいですか?

 調査ですが、これは遊びではありません。

 君も連れていきますが、何があっても私達から離れては駄目ですよ?

 約束できますか?」


「・・・。あぁ、判った。」


「良い子ですね。そうだ、今度私の妹を紹介しましょう。

 年も近そうだし、いいお友達になってあげてください。

 では、調査の方法など、具体的な内容を決めていきましょう。」


 青年が調査の話しに切り替え、

それを受けて男は、二人を椅子に座るように促す。

 全員が椅子に座り、そこからは具体的な調査の方法などが話し合われた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 名前ありましたね。ルーちゃんとレグナさんでした。 この二人の苗字が気になるところ。同じだったりするとそれだけで美味しいネタになりそうです。
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