第6話『武術大会1回戦!!』
さて、僕は今、机を挟んでメイド服姿の女性と対峙しています。
彼女の名前は、セレナ。見た目どおり、僕の家のメイドです。
髪は肩にかかるぐらいの長さで、綺麗な銀髪。瞳は碧眼で、
美人で、ボディーラインもいい感じの美人です。
種族は一応人間です。残念ながら獣人ではないので、猫耳とかは付いてません。
ちなみに一応と言うのは、セレナは、封印状態の僕と余裕で渡り合えるんです。
身体能力か魔力を50パーセント開放すれば勝てますが、そう簡単には勝負がつきません。
所謂、『天才』と言う奴です。
さすがに、完全に封印を解いた僕とじゃ勝負にはなりませんが、
それにしても、凄いことです。尊敬します。
僕は親があれですから、この力を持っていますが、
ああいう純粋な天才にはあこがれるものです。
「捕まえました!!♪」
「あ」
説明なんてしていたら掴まってしまいましたね。まあ気配には気付いていたんですが、
仕方ないでしょう、たまには甘えさせてあげますか。
「分かりました。僕の負けです」
「わーい♪桔梗様いい匂いがするー、暖かーい、幸せー♪」
「なんかキャラ崩壊してますが、ありがとう御座います。
それにしても、急にどうしたんですか?」
「何となくですよー」
「ふむ」
まあ、たまにはいいですね。
そうして、桔梗は夜遅くまでセレナにくっつかれていた。
そんな感じで翌日。
「まったく、なんで一緒に寝ないといけないんでしょうかね」
あの後、なんとか風呂に入って、さっさと寝ようとした所、
セレナも一緒に寝たいと言い出して、大変でした。
結局一緒に寝る羽目になりましたよ。そのせいで、眠れませんでした。
「まあ、僕は数日は寝なくても大丈夫ですけどね」
そんな感じで独り言を呟いていると、
「おーい、桔梗!!」
後ろから、正人の声が、
「おはよう御座います、正人」
「おう!それより、昨日の電話、誰だったんだ?」
「秘密だと言ったじゃないですか」
「言っちまえよー」
「嫌です」
「はぁ、まあいいさ。それよりも、今日は武術大会だな」
あー、忘れてましたね。やばいですね、昨日もでしたけど、本当に忘れっぽいですね。
どうしましょうかね。年ですかね?
僕一応不老不死なんで、歳は取らないはずなんですけどね。
ちなみに、僕の外見は、まだ少しずつ成長してます。
大体20歳ぐらいで成長は止まるそうです。
「くくく、今一瞬表情が動いたな、忘れてただろう」
「ふむ、無駄に鋭いですねぇー」
「俺をなめちゃいけないぜ!」
「別になめてなどいませんがね」
「まあ、いいや、お互い頑張ろうぜ!!」
「正人も出るんですか」
「ああ!!」
「まあ、頑張りましょう」
そんな感じで雑談をしながら僕達2人は学院へと向かった。
そして教室には既に瀬名と美雪が来ていて、4人で色々と雑談をして時間を潰す。
しばらくすると、信也先生がやってきて、朝の連絡を済ませた後、闘技場に移動、
いよいよ、武術大会の開始である。
ほかの見知らぬ人の戦闘の様子は省略。
そして、いよいよ僕の番です。
「1年1組、十六夜桔梗さん!! VS 1年2組、クレア・アイレスさん!!」
僕の相手は獣人の女性のようです。美少女ですね。猫耳ですね。
「クライシス set up」
《イエスマスター、set up》
リニスはナックルみたいですね。やはり獣人ですから近距離を得意としてるんでしょう。
それにしても、喋るリニスと、この力の波動。結構強いみたいですね。
それにあの瞳、完全に好戦的な性格ですね。
ここは、用心しときますか。
「神龍凰 set up」
《イエスマイロード、set up》
そして、僕が二丁銃を頭の中に思い浮かべると、神龍凰の形が、鎌から二丁銃に変化。
これで、接近される前に、倒してしまいましょう。
しかしあの笑顔、なんか嫌な予感がするんですよねー。
まあ、どうにかなるでしょう。
「それでは、両者構えて!!」
審判の声で相手の女性、クレアが構えを取る。
僕はあくまで自然体。でも、隙は全てなくなるようにする。
「試合・・・・・・開始!!」
審判のその合図と全く同時に、神龍凰が銃口から火を吹き、切れ目無く銃声が鳴り響く。
しかし、
「甘いわよ!!」
そう言うと同時に、クレアは全ての弾丸を避けながら、桔梗へと走り出す。
あまりの速さに、クレアの姿が分身して見えるほどである。
会場に、驚きやら感嘆の声が溢れる。
そして、その速さで一瞬で間合いを詰める。
「もらった!!」
クレアがそう言って、正拳突きを繰り出すが、そう簡単にやられる桔梗ではない。
「まさか全て避けるとは、驚きです」
呑気に考えなどを言った後、
《プロテクション》
『ガギィン!!』
光の障壁を展開して、クレアの攻撃を防ぐ。
しかし、クレアもそう簡単には負けない。
「まだまだぁ!!」
そう言うと、二撃目を放つ。
『ガギィン!、ピシィ』
「なっ!?」
光の障壁に罅が入り、さすがに驚いた声を出す桔梗。
「これで、とどめ!!」
クレアはそう言うと同時に、拳を目一杯振り被り、
『紅蓮!爆炎撃!!』
《ファイアー!》
クレアの拳が炎に包まれ、それが桔梗へと迫る。
「くっ!」
桔梗の焦った声が聞こえた次の瞬間、
『ドゴォォォォォォン!!』
あたりに爆発音が鳴り響き、桔梗は炎と煙に包まれた。
「十六夜桔梗、戦闘不能。しょ、勝者、クレア・アイレス!!」
「すげぇー!!」
「かっこいいー!!」
「つえー!!」
「ありがとう御座いまーす。ありがとう御座いまーす」
審判が、勝敗を発表し、クレアが、賞賛の言葉を受け取っている時。
「嘘だろ・・・・・・」
「嘘・・・・・・」
「桔梗君が、負けた?・・・・・・・・」
正人、瀬名、美雪の3人は、自分の目の前で起きたことが信じられなかった。
まさか、桔梗が負けるとは思っていなかったのだ。
しかし、それは早計に過ぎなかった。
「全く、皆さんは早とちりですねぇー」
戦闘不能になったはずの桔梗の、何時も通り、
落ち着き払った声が聞こえ、誰もが言葉を失う。
そして、静まり返った闘技場に、とてつもない暴風が吹き荒れた。
暴風によって、煙が全て晴れた先には、巨大な鎌形態の神龍凰を持ち、
先程と、なんら変わらぬ姿の桔梗が立っていた。
いや、ただ一箇所、先程と比べれば、目が好戦的な光を宿していた。
「う、嘘、なんで無傷なの!?」
クレアが、初めて動揺をあらわにする。
「まさか、たった三撃で障壁が破られるとは、さすがに驚きました」
そこでいったん言葉を切る桔梗。
「が、そう簡単にはやられませんよ?次は・・・・・・・・」
「こちらももう少し本気で行きましょう」
そういった瞬間、桔梗が一瞬でクレアとの間合いを詰める。
そして、黒光りする鎌が、クレアを両断せんと唸りを上げる。
「くっ!」
瞬時に状況を理解したクレアが、驚くべき反射神経で
後ろに跳び退り距離をとろうとするが、
「そうは行きませんよ?」
それをさらに上回る反応速度で、桔梗もすぐさま前に飛ぶ。
「なっ!?」
間合いが開くどころか、逆に近くなり、クレアが驚愕の表情を浮かべる。
『ヒュンッ!』
そこに風切り音を響かせながら、再び神龍凰がクレアへと迫る。
「くっ!」
『ガィィン!!』
今度は、両腕をクロスさせて、神龍凰を防ぎ、獣人の筋力で押し返そうとするが、
『ヒュオ!』
「くぅ!」
受け止められたと見るや、すぐさま神龍凰は方向を変え、別の方向からクレアを襲う。
押し返す時間など全く与えぬ変幻自在の攻撃。
戦闘の主導権は完全に桔梗に移っていた。
「すげぇ・・・・・」
「強すぎるだろ・・・・」
「かっこいい・・・・」
会場に驚きと感嘆の声が満ちる。
皆、先程まで一方的に攻撃されていたとは思えないほどの桔梗の強さに、
驚いているのだ。
そして、こちらでは、驚きや感嘆より、安堵の声が。
「ふぅ、本当にやられたかと思ったぜ」
「うん、桔梗が負けるなんて考えられないけど」
「さすがは、桔梗君ですよねー」
そんな感じで、会場中に驚きやら感嘆やら安堵の声が満ちる中、
勝敗は本当に決しようとしていた。
『ガィン!』
「やばっ!!」
攻撃を受けたクレアが、バランスを崩し、後ろに軽く吹き飛ぶ。
その瞬間、桔梗の表情が変わった。
「カートリッジロード」
《イエスマイロード、カートリッジロード》
『ガシャン!…カラン』
鎌の刃の付け根、つまり柄の先端と鎌の刃の根元の所に可動部が2つあり、
その下の方の可動部が動いて、蒼白い煙と共に薬莢が排出される。
リニスカートリッジシステム。喋るリニスよりも、さらに希少なシステム。
かなり上位のリニスでなければ搭載しておらず、
魔力を込めたカートリッジをリロードする機構が、
リニスに搭載されているシステムである。
カートリッジをリロードすることによって、リニスに魔力を込めることが可能になり、
それによって、そのリニス専用の技を繰り出せるようになる!!
桔梗は、カートリッジをリロードすると同時に、思いっきり神龍凰を後ろに振りかぶる。
通常なら大きな隙だが、今クレアは空中にいて、全く身動きが取れない状況である。
神龍凰は振りかぶられると同時に、その刃に漆黒の魔力を纏う。
そして、桔梗は神龍凰を振り切る直前に技名を紡ぐ。
「『黒龍斬』」
静かな宣言と共に、神龍凰を振り切る桔梗。
振り切られると同時に漆黒の魔力が打ち出され、
それは漆黒の龍へと姿を変えて、クレアに迫る。
「くっ!!プロテクション!!」
《プロテクション》
しかし、クレアもまだ粘る。光の障壁を展開して、漆黒の龍を防ごうとするが、
『ガギィン!!!!!』
「っ!!」
『ヒュオオオオ!!』
防ぎはしたものの、威力は衰えず、さらに空中にいたため足場が無く、
とてつもないスピードで、後ろへと押しやられていく。
そして、遂に、
『ドゴォォォォォォォン!!』
闘技場の外壁に激突して、ようやく桔梗の漆黒の龍は消滅した。
クレアは粉塵に包まれて全く姿が見えなくなる。
桔梗のカートリッジシステムを見たときからさらに驚きや感嘆の声が増えていた会場に、
緊張が走る。
あまりに速いスピードで外壁に激突したため、クレアの安否を心配しているのだ。
一応、リニスの設定は非殺傷にするのが出場条件なのだが、
さすがに心配なのだった。
しかし、再び吹き荒れた暴風と共にその心配は杞憂だと知れる。
晴れた粉塵の中から出てきたのは、クレアと、
クレアを庇うように立ち、光の障壁を展開している桔梗だったのだ。
再び会場に驚きの声が満ちる。
何せ誰も桔梗の姿どころか、残像さえも捉えられなかったのだ。
「あっ」
クレアがようやく状況を理解し、驚いた声を上げる。
「すいません、黒龍斬、消しても良かったんですけど、
それだとまた、勝負がつか無そうだったので。大丈夫でしたか?」
「あ、えと、大丈夫です」
「そうですか、良かった」
桔梗はまるで、自分に本当にいい事があったような笑顔を見せる。
そして、桔梗ほどの美形が笑えばそれはもう見事なわけで、
「はぅ////////////////」
「どうかしましたか?」
「い、いえ、なんでもないです!!////////////////」
「ふむ」
桔梗はそう言うと鎌形態の神龍凰を前に突き出す。
『ガシャン、シュウウウ』
すると、カートリッジシステムより上のほうにある、もう1つの可動部が動き、
真っ白な水蒸気があふれ出る。カートリッジを使ってリニスに魔力を込めれば、
リニスが熱を持つので、こうやって排熱をするのだ。
その後ろでは、いまだにクレアが惚けている。
「(かっこいい・・・・・・それに、優しそうな人//////////)」
どうやら桔梗の周りの人間は皆、人を見る目があるようだ。
実際桔梗は、かなり優しい部類に入るのだから。
瀬名、美雪、美羽も、そのような桔梗の内面があってこそ、
あそこまで桔梗を好きになれるのだろう。
それにしても、桔梗は本当に一目惚れされ易い野郎である。
男の敵である。
さて、なんか殺気を感じるけど気のせいでしょう。
排熱も終わったし、
「しょ、勝者!十六夜桔梗!!」
「すげーぞ!!」
「つえー!!」
「かっこいいー!!」
勝敗も決しましたし、そろそろ戻りますか。
僕が頭の中で、『待機形態』と念じると、神龍凰はネックレスの形に戻った。
「さて、改めて、僕の名前は十六夜桔梗です。」
「あ、えと、クレア・アイレスです。//////」
「さあ、それでは、行きましょう?」
「あ、はい/////////////////」
「?」
何で一緒に退場しようとしてるだけなのにそこまで、赤くなっているのでしょうか?
負けたのが悔しいんでしょうかね?
あ、そう言えば、
「クレア、あなた、口調そんなでしたっけ?」
「い、いえ、あの、その/////////////////」
「?まあ、僕は口調は気にしませんよ」
そんな感じで、クスクス笑う桔梗と、顔を真っ赤にしているクレアが、
並んで退場する様はそれはもう、奇妙な光景だった。
そうそう、余談だが、この光景を見た瀬名、美雪、美羽の3人は、
その後しばらく桔梗とは口を聞いてくれなかったとか。
桔梗は意味も分からず困惑していたが、それもまた鈍感男の宿命。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回は、戦闘に半分程を割きました。
新しいリニスのシステムと、ヒロインも登場。
これで総ヒロイン数、5人ですね。
まあ、これからも増えるかもしれませんが、
これ以上増えたら、物語を回す自信が・・・・・
まあ、頑張るのでよろしくお願いします。
それでは、また次回。お会いしましょう。
次回予告!!
武術大会二回戦!!
その相手はなんと正人だった!!
勝つか負けるか、桔梗はどうする!?
お楽しみに!!