第13話『桔梗とセレナの優雅な(?)休日!!~partⅠ~』
「ふぁー」
さて、反逆(といっても悪いのは神王大帝ですが)宣言から一夜明け、
現在時刻は朝の6時。
僕は何時もこの時間に起床します。
今日は土曜日で学校は休みです。
反逆宣言といっても、もう少し前から動き始めてましたし、
別に表立って何かするわけでもありませんので、
何時もどおり、休日を過ごすとしましょう。
あ、ちなみに昨日の、危うく正人が殺害される所だった
試合の真相は、少し変更を加えて公表されました。
変更点は、キングトリックスパイダーのその後とかですね。
僕じゃなく、美羽が倒したことになっています。
今回のような事件がおきるというのは仕方の無いことなので、
たいした混乱もなく済んだそうです。
さて、いつまでもベッドに座っていると、また眠くなるので、
そろそろ起きますか。
「おはようございます」
「あ、おはようございます桔梗様」
キッチンではセレナが朝食の用意をしていました。
毎日かなり早くから起きて家事をこなしているようです。
仕事とはいえ、少々頑張りすぎなきがしますねぇ。
そのせいで、この前の『甘えたい事件』(命名僕)も起きたのでしょうし、
今日は1つ、セレナと一緒に出かけてみましょうかね。
「セレナ」
「?なんでしょうか、桔梗様」
「今日、一緒に出かけませんか?」
「…え?」
沈黙の後に聞き返されるほどのことでしょうか?
「いえ、ですから、一緒に出かけないかと聞いたのです」
「私がですか?」
「あなた以外に誰がいるのか疑問です」
「え!?私と出かける!?いいのですか!?」
「いや、なぜだめなのか僕には理解できかねますが、
まぁ、嫌だというのなら――」
「行きます!!」
よく言葉を途中で遮られますねぇ。
「分かりました、なら朝食を食べてから出かけましょう」
「はい!!」
そんな感じでめでたく今日の予定が決定しました。
朝食を食べるときのセレナは物凄く満面の笑みでした。
仕事から解放されたのがそんなに嬉しいのでしょうか?
そんな斜め方向に疑問を持ちながら、桔梗とセレナは朝食を摂った。
それから30分後。
『ザワザワ』
2人は休日を楽しむ人で溢れる町の中心部に来ていた。
ちなみに、この世界の科学技術の発達は物凄く偏っている。
発達してはいるのだが、根本的な部分は魔法に頼っているのだ。
魔法がなければ、全く成り立たない科学技術なのだ。
そして、偏っているのは技術面だけではない。
街中を見ると、通るのは徒歩の人か騎乗の人、馬車のみ。
そう、この世界には自動車や自転車と言う物は存在しない。
つまり科学技術が使われる物も偏っているのだ。
町は完全に中世のヨーロッパといった感じである。
中世のつくりの建物の店頭に、携帯電話が並んでいるというのは、
かなりの違和感を覚える物である。
まぁ、この世界の住人としてはそれが当たり前なのだが。
以上、閑話休題
「さて、どこに行きましょうかねぇ」
「私は桔梗様が行きたいところならどこでも」
ん、そう言えば、
「セレナ、今日は仕事は休みにしてあげますから、
その桔梗様と言う呼び方はやめてください」
「ふぇ!?」
「いえ、ふぇ!?じゃなくて、というか、
そんなに驚くことでしょうか?
とにかく、今日は普通に呼んで下さい」
「え?え?普通って、一体なんと呼べば…」
「桔梗でも、桔梗君でも、まぁ桔梗さんでも構いません」
「え、えっと、それじゃあ、桔梗…君」
「はい、なんでしょうか?」
「ふぁ、あ、ああああああああ////////////」
「ちょ、セレナ!?」
いきなり頭を抱えて座り込むほど恥ずかしいことでしょうか?
疑問です。
「ちょっと、物凄く目立ってますから!!セレナ!?」
「あぁ、桔梗君…ああああああああ/////////」
『ちょっと、あれ大丈夫なの?』
『うわーあんな美人なのに、壊れてんのか?』
「くっ」
ちょっとこれはまずいですね。仕方ない。
「無属性、上級魔法、『複数転移』」
『シュン』
人前であまり上級魔法詠唱破棄はしたくないんですが、
仕方なかったので複数転移を行使、
公園にやってきました。
幸い周りに人はいませんね。
「セレナ」
「あうあう////////」
「セレナー」
「あうあう////////」
「セレナ、セレナ、セレナさーん」
「あう////////」
「セレナーーーーー!!!」
それから約30分後
「すいません、本当に申し訳ありません!」
「いや、だから別に構いませんって」
結局あれからしばらく、セレナは壊れたまんまだった。
そして、直った後も、ご覧の通り謝りまくりで埒が明かない。
「本当に申し訳ありません、桔梗様!!」
「むぅ、分かりました、なら1つ僕の命令を聞いてください」
「どんな罰でもお受けします」
「ならば、今日一日、僕のことを桔梗君と呼んで下さい」
「………ふぇ?」
「いえ、ふぇ?ではありません」
「いえ、ですが!しかし!」
「しかしもかかしもありません。これは命令です」
「で、でも」
「命令です」
「うぅー…わ、分かりました、き、桔梗君」
「はい、それで良いのです。それでは、行きましょう」
満面の笑顔の桔梗は、いまだに顔を赤くして、
可愛らしくうぅーなんて唸っているセレナを引き連れて、
いよいよ、休日を謳歌するために町に戻った。
「さて、今度こそ本当にどこに行きましょう」
「わ、私は、桔梗君が行きたい所ならどこでも構いません///////」
「ふむ、ならば、しばらく歩いてみるとしますか」
そう言って、桔梗とセレナは大通りを並んで歩き始めた。
周りの人々の注目を集めながら。
まぁ、桔梗もセレナも超が付く美形である。
その上、桔梗は身長が他の人たちより高く、さらに目立つのだ。
「♪」
しかし、桔梗はさすがに余裕である。
周りなど気にもせずに鼻歌など歌っている。
「//////////」
されど、セレナはそうはいかない様だった。
普段なら何とも思わないのだが、
まだ桔梗のことを君付けで呼んだ余波と、
桔梗と一緒に歩いているという事実から、
とんでもなく顔を赤くして緊張した面持ちで歩いていた。
そしてついに、
「き、桔梗君!あの店に入ろう!!」
周りの視線に耐えかね、適当な商店をビシシッと指差して、
桔梗を手を引っ張ってその商店に近づいていく。
「む?ええ、構いませんが、あそこですか?」
桔梗が何故か疑問の声を呈したが、
セレナは桔梗のその言葉も耳に入っておらず、
あっという間に、商店の扉を開いて中に入ってしまった。
「はぁ」
セレナはようやく、一息ついたが、
自分が桔梗と手をつないでいるのにいまさら気付き、
ボボッと顔を赤くする。
「あ、ご、ごめん!桔梗君!!//////////」
「いえ、構いませんが、しかし…」
言葉は何時もどおりだったが、
桔梗の表情は何時もとは全く違っていた。
訝しげに形の良い眉をひそめている。
「このような所に、何を買いにきたのですか?」
セレナは、桔梗のその言葉に前を見て、
「ぅ…」
小さな呻き声を洩らした。
というか、呻き声を洩らすことしか出来なかった。
商店の中は薄暗く、奥のほうは全く見えない。
その上、いたるところに蜘蛛の巣があった。
本当に営業しているのかどうかも怪しい物である。
「まぁ、こういう所にこそ良い掘り出し物があるのかもしれませんが…」
桔梗はそう言って、斜め方向に誤解する。
実際はなんの目的もなく、適当に選んだ商店で、
今回の場合完全なるハズレなのだが。
そして、それをセレナが言おうとしたのだが、
「すいません!店主はいらっしゃいませんか!!」
「っ!?」
それより先に、桔梗が店主を大きな声で呼んでいた。
「ちょ、桔梗君!!」
急いで止めようとしたセレナだが、
「ほいほい、私がこの店の店主じゃよ」
残念ながら遅かったようである。
優しそうなお爺さんが奥から姿を現した。
若干涙目になっているセレナを他所に、
桔梗は店主の老人と会話を始める。
「あぁ、あなたが店主でしたか、
あの、失礼ですがこの店は営業しているのですか?」
「勿論、営業しておる」
「そうでしたか、これは失礼なことを」
桔梗が丁寧に頭まで下げると、
店主の老人は実に人の良い笑みを浮かべた。
「いやいや、こんな見た目ではそう思うのが普通じゃよ。
もう歳でな、商品の手入れだけで精一杯なんじゃよ」
「そうなんですか」
桔梗はなにやら考える素振りを見せる。
セレナは店主の人柄に触れて、呻き声を上げるなんて
失礼なことをしたなと、反省していた。
そして、しばらく考えていた桔梗が顔を上げる。
「ならば、こうしましょう」
桔梗はそう言うと、店主の老人とセレナが、
疑問の声を上げるより先に指をパチンと弾く。
すると、
『ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!』
勢い良く物に火が付くような音がして、
一気に店内が明るくなった。
さらに、風が通り抜けたかと思うと、
蜘蛛の巣と埃が、跡形も無く消え去る。
「おぉ、これは…」
「凄い…」
店主の老人とセレナが驚きの声を上げる。
「魔法で特殊なコーティングを施しました、
これで店内が汚れることは無いはずです。
店内の明かりは消えろと唱えれば消えます。
逆に、灯れと唱えれば明かりがつきます。
こちらも特殊な魔法ですので、僕が解かない限り、
永久的に持続します。迷惑だったでしょうか?」
桔梗がそう言うと、しばらく驚いたまま固まっていた店主が、
「いやいや、迷惑どころかこれは、有難い事をして頂けました。
お礼には全く足りないかもしれませんが、
この店の商品を1つ、ただで差し上げましょう」
そう言って、また人の良い笑みを浮かべる。
「それは、ありがとう御座います」
桔梗もまた、笑みを浮かべて店内を見回して、
「おぉ!」
珍しく、その口から驚きの声が漏れた。
それを見て、セレナも店内を見回す。
「わぁ…」
そして、驚きと感嘆が混じったような声を出した。
店内はさっきと様変わりしていた。
まぁ、桔梗が魔法で掃除して、
明かりをつけたから当然変わりはするのだが、
自分でやったことに桔梗が驚くはずも無い。
その理由は、
「これは、見事ですねぇ」
「綺麗…」
光を反射して、様々な色に輝く商品たちである。
さっきの老人の言葉、商品の手入れだけで精一杯が、
決して嘘ではないことが分かる商品の手入れの良さであった。
この店は、装飾品を扱っているようで、
指輪や、ネックレス、ピアスなどの体に身につける装飾品から、
大きな時計や、見事な大理石のテーブルなどまで並んでいる。
そして、そのどれもが、見事なまでに手入れされていた。
光を反射して輝く銀製の指輪。
ピカピカに磨き上げられた大理石のテーブル。
見事な輝きを放つ、宝石が埋め込まれた髪飾り。
その光景はまさに幻想的なものであった。
「む?」
しかし、その中で1つだけ、桔梗が訝しげに眉を顰めた物があった。
それは、ぱっと見銀製の髪飾り、他の物と変わらず、
見事な銀の輝きを放っている。
しかし、どこか引っかかるのだ。
それに近づいて、手に取ってみる。
やはり、見事ではあるが、どこかが引っかかる。
そんな思いで髪飾りを見つめていると、
「おぉ、やはりそれに目を付けられましたか」
後ろから店主の老人の声がした。
老人はそのまま言葉を続ける。
「それは、今のままでも十分綺麗なのですが、
どうも、かなり強力な魔術的封印がされているようでして、
しかし、あなたなら」
その老人の言葉と共に、桔梗の訝しげな表情が、
何時もの涼しげな微笑に変わる。
「あぁ、なるほど。そう言うことでしたか。
これは、掘り出し物発見ですね」
「掘り出し物発見で御座いますな」
老人と桔梗はそう言って笑いあう。
セレナも、微笑を浮かべていた。
そして、桔梗が手に魔力を集め魔法を発動する。
「無属性、上級魔法、『封印解除』」
その言葉と同時に、髪飾りを中心に小さな魔法陣が展開。
そして、眩い光が弾けた。
「「おぉ」」
「わぁ」
店主、桔梗、セレナの3人全員が驚きの声を上げる。
封印が解除された髪飾りは、最早先ほどとは別物だった。
放つのは、銀の輝きではなく、
幻想的な七色の輝き。
虹と同じ七色の輝きをその髪飾りは放っていた。
「店主」
桔梗がそう言うと、老人は再び人の良い笑みを浮かべる。
「お見事、その髪飾りは、あなた達にこそ相応しい。
それは差し上げます」
「ありがとう御座います」
桔梗はそう言って、深々と頭を下げると
「セレナ、ちょっとこっちへ」
そう言って、セレナを呼ぶ。
そして、よってきたセレナの髪に髪飾りを付けてあげた。
「うん、良く似合ってるよ」
「お似合いです」
店主の老人と桔梗が揃って言う。
「そうかな?」
実際、その髪飾りはセレナにとてつもなく似合っていた。
「ああ、それは僕からセレナへのプレゼントだよ」
「ありがとう、桔梗君!」
セレナはそう言って、嬉しそうに笑みを浮かべる。
それに答えて桔梗も笑みを浮かべ、
店主の老人も、後ろのほうで微笑ましそうに見ていた。
その後も少々店の中を見たり、雑談したりしたのだが、
時間は有限である、いよいよ店を後にするときが来たのだった。
「本当にありがとう御座いました。こんないい物を頂いて」
「ありがとう御座いました」
桔梗とセレナが揃って頭を下げると。
「いやいや、こちらこそ、こんなに店を綺麗にしていただいて、
とても助かりました」
店主の老人が人の良い笑みを浮かべる。
「それでは、また機会があれば寄らせて頂きます」
そう言って、桔梗とセレナが扉に手をかける。
「ええ、いつでも御越し下さい。あなた達なら大歓迎です。
本日のご来店、真にありがとう御座いました。
それでは、またのご来店、心よりお待ちしております」
そう言って、店主の老人は最後まで人の良い笑みで、
桔梗とセレナを見送った。
商店からでると、再び人々の視線が2人注がれた、
セレナの髪飾りの効果も合って、さらに視線が増えたのだが、
今度はセレナも気にならなかった。
桔梗からとても綺麗な髪飾りをプレゼントされたことで、
周りのことなど眼中に無かったのである。
そして、最初はハズレだと思ったけど、大当たりだったなぁ。
なんて考えていると、
「最初はハズレだと思ったようですが、大当たりでしたね」
などと、桔梗が囁きかけてきた。
「ふぇ!?」
セレナがそれに対して驚きの声を上げると、
桔梗は面白そうにクスクス笑う。
「それほど意外でしたか?僕が気付いて事が。
戦闘能力だけが高いと思ったら大間違いですよ?
セレナの動揺の仕方などから考えて簡単に推理できます」
そう言って、さらに楽しそうに笑いながらズンズン歩く桔梗を、
「あ、ま、待ってよ!桔梗君!!」
「クスクス」
「笑わないでよー!!」
口では怒ったように言いながらも、
顔には笑顔を浮かべて追いかけるセレナと、
「若いと言うのはいいことじゃのう。
さて、商品の手入れでもするかの」
最後まで人の良い笑みを浮かべて見ている、
店主の老人であった。
さて、どうだったでしょうか?
今回は早く更新できるように頑張りました。
ですが、僕は日常話はどうも苦手なようで、
少々おかしい所があるかもしれません。
中盤からずっと三人称ですしね。
学院にいると、どうしてもセレナはあまり出せないので、
今回はセレナと桔梗の休日話です。
ちなみに次回まで続きます。
さて、感想や指摘お待ちしております。
それでは、また次回。
お会いしましょう。
次回予告!!
桔梗とセレナの優雅な(?)休日はまだ続く!!
やはり何かハプニングはあるのか?
そして、新たな展開!
お楽しみに!!