プロローグ(1/4) 志の高い女の子は好きですか?
『学年一、いや、学校一の美少女』
あたしのことだ。
『どんなスポーツをやっても様になる』
それもあたしのこと。
『試験では常に学年トップ十を維持している』
もちろん、あたしのこと。
『笑顔は世界一』『理想の後輩』『制服の着こなしが人とは違う』『誰よりも気遣いができる』『鈴を転がすような声の持ち主』エトセトラ、エトセトラ……
全部、そう全部。
――あたしのこと。
そう、あたし、尾崎志麻は華麗なる高校デビューを果たした。
なぜならあたしには目標があるから。
それは――みんなが憧れる黒髪ロングヒロインになること。
そんなあたしが生まれたのは、鹿児島県の東の端っこにある志布志市。
ネットで時に話題になる志布志市志布志町志布志。
ちなみにあたしの出生届が提出されたのは、その志布志市志布志町志布志にある志布志市役所志布志支所。
そろそろウザいかな?
ウザいよね。うん、知ってる。自分でもそう思う。
とにかく、「どれだけ志があるんだよ?」と、ツッコまれることもある、あそこであたしは生まれた。
そんな所に生を受けたこともあってなのかは分からないけど、あたしは自分のことを志の高い女の子だと思ってる。
だから、この春入学した鹿児島市中心部にある県立上之園高校で楽しい高校生活を送るため、入念に準備した。
中学生のころも勉強や運動は人並み以上に頑張っていた。
でも、見た目とかは別にどうでもいいと思ってた。
人にどんな風に見られるかなんて気にしても仕方ないって思ってたから。
もちろん、黒髪ロングヒロインなんて概念すら頭にはなかったよ。
両親と、お兄ちゃん、一つ下の妹の五人家庭で過ごす何不自由ない日々は心地よかったんだよね。
ほかの人なんて気にしないで、自分で納得できる生き方さえできていれば、それでいい、って思ってたんだ。
でも、それじゃ嫌になった。
きっかけは、中学校の卒業式の日のある出来事だった。