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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第伍章・時間潰しのスタンプラリー
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第七十話 仲間割れ

「っぁ……!! 」


 突然のハシヒトの攻撃と手へのダメージにひるみ、アナホベは後ろへと下がった。

 ハシヒトは眉間に皺を寄せ、犬歯を見せながら歯ぎしりし、アナホベを睨んだ。


「アナホベのバカ!!! 豪輝(ごうき)のバカ!!! そんなことして、()()()()()()()()()()が、()()()()が……!! 喜ぶとでも思ってるの!? いい加減にしなさい!!!! 」


 ハシヒトは感情に任せて叫んだ。

 アナホベは一瞬ポカーンとしていたが、頭に血が上って正常な判断が出来なくなっていた。


 聖間の命令を受け、血の流れが活発化し、アナホベの体温は上がっていた。

 そのせいで脳が混乱し、アナホベは普段通りの行動が難しくなっていたのだ。


 ハシヒトの言葉を聞いて、アナホベは言い返した。


「……うるせえ!! 俺の名前が豪輝だの、ばあちゃんだの父ちゃんだの、んなもん覚えてるわけねえだろ!! それより!! 邪魔すんじゃねえよ!!! 俺は綺たち(そいつら)を喰えって言われてんだよ!!! 分かったらさっさとどけ!!! 」


 柄にもなく反論するアナホベに、ハシヒトは一瞬、憐みの目を向けた。


「……嫌よ」

「あ? 」


「嫌って言ってるのよ!! 蘇我見さんたちは食べられてほしくないし、あなたにだって人を食べてほしくない!! 」


 ハシヒトは腕を広げ、綺たちをかばう仕草をした。


「てめえ……ふざけるのもいい加減にしろよ」

「そっくりそのまま、その言葉返すわ」


 反論するハシヒトに対し、アナホベは一回舌打ちをした。


「どかねえってなら、お前もろとも殺すぞ!! 」

「いいわよ」


 予想外の発言に、綺と晃、そしてアナホベも驚いた。


「蘇我見さんたちは食べさせない……!! 食べたいなら、私を殺してからにしなさい!!! 」


 ハシヒトの声は、静まり返っていた駅内に(こだま)した。


 数秒後、アナホベは折れていない左手の指をパキパキと鳴らし始めた。


「上等だ……。ぜってーてめえを殺して!!! ご主人様の命令を果たす!!! 」 

「かかってきなさいよ!!! 蘇我見さんたちは絶対に死なせない! そして!!! あなたの記憶を、蘇らせてみせる!!! 」


 ハシヒトは折れてない方の手を出し、構えた。


 アナホベとハシヒト。両者が睨み合う。

 その場の雰囲気に気圧(けお)され、綺と晃は鳥肌が立っていた。


「わ、私たちは、どうすれば……」


 綺が呟くと、ハシヒトが振り返って答えた。


「危ないですので、蘇我見さんたちはどこか安全な場所へお逃げください」


 ハシヒトは綺たちを安心させるためか、微笑みながら言った。

 ハシヒトが綺たちの方に振り向いた瞬間、アナホベがハシヒトの方に迫ってきた。


 左手の爪を立て、腕を振ろうとしていた。


 アナホベに気づいた晃が、「ハシヒトさん! 後ろ! 」と言ってる途中に、ハシヒトは動いていた。


 綺たちへ微笑んでいた表情が一転し、ハシヒトは目つきを変えてアナホベの奇襲を避けた。

 そして、無防備になっていたアナホベの腹に、ハシヒトは腕を曲げ、(ひじ)を打ち込んだ。


 アナホベの体はくの字に折れ、そのまま後ろへ飛ばされた。


「では、ちょっと失礼します」


 ハシヒトは再度微笑んでから綺たちに会釈をし、アナホベの方へと向かった。



「……僕たちは、ここから離れた方がいいかな? 」

「イイジャン、ミテコウヨ」

「オモシロソウダシ」

「面白そうって、あんたらねえ……」


 場違いな発言をするスイコとテンノに、綺は溜息を吐いて呆れていた。


 足でブレーキをかけ、なんとか転ぶことは避けたアナホベ。

 その前に、ハシヒトが立った。


 何回か咳をしてから、アナホベは話し始めた。


「不意打ちしたのに逆に不意打ち受けちまったな……」

「あらごめんなさいね。お腹ががら空きだったのでつい」


 ハシヒトは下目使いで言った。


「分かってると思うけど、今のは余興、つまりジャブよ。本番はこれから。……私も、殺すつもりでやるわよ」


 ハシヒトはアナホベと同じく、折れてない方の手の指を、パキパキと鳴らした。


「嘗めやがって……! 」


 アナホベは歯を剥き出しにして、ハシヒトを睨んだ。

 そこから、アナホベとハシヒトの殺し合いが始まった。

小説でバトルシーン書くの難しい(切実)

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