表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第伍章・時間潰しのスタンプラリー
70/101

第六十七話 経緯

「俺の……本当の名前……? 」

「そう。あなたが人間の頃の名前。嘘なんかついてないわ……」


 目から涙があふれ出てきた涙を、ハシヒトはリストバンドで拭いた。


「あなたの名前は石上(いそのかみ)豪輝(ごうき)。そして、私の人間の頃の名前は……皇女(ひめみこ)玲良(れら)

玲良(れら)……? 」


 アナホベはハシヒトの本当の名前に、酷く聞き覚えがあった。

 しかし、人間の頃の記憶が無いので、何故聞き覚えがあるのかは分からなかった。


「そう……なのか?……っていうか、その話が本当だとして、何でお前は俺の名前知ってんだよ」

「だって、私はあなたのか……」

「か? 」


 言葉を途中で区切ったハシヒトに、アナホベは首を傾げる。


 ハシヒトの顔が、泣き顔から赤面に変わっていった。


「彼女……だったのよ……? 」


 ハシヒトはアナホベから視線を逸らした。

 アナホベは「かのじょ? 」と呟きながら ? を浮かべていた。


 その時、遠くの方からカツカツと足音が近づいてきた。


「意外だなー。二人ってそんなアチュラチュな関係だったんだー! 」


 やってきたのは、聖間だった

 聖間の姿を見たアナホベとハシヒトは、慌てて膝をついた。


「あはは。膝なんかいちいちつかなくていいよ」

「いや……しかしご主人様の前なので……」

「大丈夫だって。それよりアナホベくん。ヨウダイちゃん食べられなかったの? 」


「そ、そうなんです!!!! こいつのせいで!!!! 」


 アナホベはハシヒトを指さした。


「そうなの? 」


 聖間はハシヒトの方を向いた。


「も、申し訳ございません!! でも……! 」

「あやまる必要なんてないよ。ハシヒトちゃんは人間の頃の記憶が残ってるからね」


 聖間はそう言うと、アナホベの方を向いた。

 ハシヒトは心の中で、「あれ? なんで私謝ってるの……? 」と思っていた。


「アナホベくん」

「はい!!! なんでしょうか!!!! 」

「ヨウダイちゃん食べたい? 」

「食べたいです!!! 」


 元気よく返事するアナホベに、聖間はクスッと笑った。


「じゃあ、そんなアナホベくんの願いが叶うように、僕が()()()()()してあげるよ」


 そういうと、聖間はアナホベの耳元である言葉を発した。



「ヨウダイちゃんたちを、食べてきなさい」



 聖間に言われた瞬間、アナホベは、自分の体内を流れる血の速さがあがったような気分になった。

 「うっ」と声を出した瞬間、アナホベの額や腕に血管が浮き出た。


「これは()()()()()()だよ。分かった? 」

「……分かりました。ご主人様」


 魂が抜けたような声で、アナホベは返事した。


「さてと、僕はそろそろ会議があるからおいとまするよ。またね! 」


 聖間はそのまま去っていった。

 去っていった聖間の背中をポカーンと見てから、ハシヒトはアナホベの方を見た。


「アナホベ? ご主人様に何て言われたの? 」

 

 ハシヒトには聖間の声が聞こえていなかったのだ。

 アナホベに尋ねるが、何も返事は返ってこなかった。


「ねえ、アナホベったら。聞こえてる? 」


 ハシヒトが顔を覗き込もうとすると、アナホベは突然動き出し、一人で走り去っていった。


「……どうしたのかしら」


 ハシヒトは不安そうに呟いた。

 そして、走り去っていくアナホベの後を追った。





 そして、現在に至る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ