第六話 貴婦人
「なんで……なんで……? 」
咄嗟にスマホの設定画面に目を通す。
ここはコンビニの休憩室。Wi-Fiぐらい繋がっているはず…だったが、
『ネットワークに繋がっていません』
『圏外エリアです』
頭の中が真っ白になった。
ダメもとで母親へのメッセージの送信を試みるが、エラーメッセージの連続でどうしようも出来なかった。
そういえばと思い、綺はまた設定画面を開いた。そして、普段設定していない位置情報システムをオンにして、万が一の時に親に自分たちはここにいる。と伝えられるように設定しようとした。
その刹那だった。
スマホの画面が真っ暗になった。綺は何かのバグで落ちたのではと思い、電源ボタンを押したがなにも反応はなかった。
「綺? 何かあったの? さっきからちょっと焦ってる感じだけど」
「……電話も、メールも、ネットも、位置情報も繋がらない……」
「え!? 」
「それどころか……スマホが……携帯が使えなくなっちゃった……」
「ちょ、ちょっと貸して! 」
晃が綺のスマホを握る。電源ボタンを何回押しても、何度長押しをしても、液晶の画面に光は灯らない。
「そんなぁ……。今日試合だったから携帯なんて持ってきてないし……」
明らかに晃は落ち込んでいる。そんなところに、扉が開く音がした。
晃と綺は警戒して部屋の奥へと体を動かすと、そこから出てきたのは
「おーっす! 帰ってきたぜ綺ちゃん! それに晃! 」
永介だ。そして後から丈弥と怜も帰ってきた。そしてもう一人、見知らぬ人が入ってきた。
一瞬見とれた。
服とロングスカートの柄は無地ではあるが、おろしてある長い金髪の髪の毛、何もついていない濃いピンクのカチューシャ、そしてなんといってもその顔。化粧などはしていないように見えるが、化粧をしているのかってぐらい綺麗な顔立ちの人だった。前髪が少しかかっていてもきれいなことに変わりはなかった。
「あの~……ここは~? 」
声もとっても透き通っていた。
「俺たちの仮の拠点みたいなところだ」
「あ、あの子たちがさっきあなた達がさっき話してくれていた子?」
女の人は綺と晃に近寄った。
「はじめまして~。天智 美香子っていいます~。あなた達のことはお兄さんたちから聞いたわ~。よろしくね~! 綺ちゃん~! 晃くん~! 」
微笑みながら話しかけてきた。
こっちも挨拶をし返そうとすると、また永介がいきなり動き出した。
「女の子が俺を呼ぶ声がするぅぅぅぅ!!!! 」
と言いながら、一人で休憩部屋を出て行ってしまった。