第六十四話 出立
※会話多めです
「私たちは休憩する? 」
「うーん、でもスタンプあと一個だし、取りに行っちゃった方がいいと思うけど…」
綺と晃がどうしようかと悩んでいた時、スイコとテンノが入ってきた。
「ツギイクトキハ」
「ワタシタチモ、ツイテイキターイ」
「まだ行くって決まったわけじゃ…」
と晃が言うと、後ろから右袖をクイッと引っ張られた。
振り向くと、引っ張っていたのはヨウダイだった。
「どうかしましたか? 」
晃は心の中で、ヨウダイに対して (可愛いな…) と呟いていた。
「私も…私も…駅…駅見たいわ…。ついて…行きたい…ついて…行きたいわ…」
ヨウダイもついていくと言い出した。
そのことに、スイコとテンノは一瞬「エッ」と声を漏らしたが、誰も反対はしなかった。
「じゃあ、ヨウダイさんもくるということで…」
「楽しみ…楽しみ…」
「私はどうすればいいかしら~? 」
美香子が綺たちに聞いた。
「ミカコハ、テツアキミテタラ? 」
「チリョウデキルシ、タタカエルシ」
「マサニ、」
「「サイショクケンビー」」
スイコとテンノが息を合わせて言った。
美香子は照れて、少し顔を赤くした。
「じゃあ~私は結局どうすれば~…」
「私もスイコとテンノと同じ意見です。残った方が、鐵昌さんも安心するかと思います」
「一人より二人の方が心強いでしょうし…」
「いや…俺は別に一人でも…」
鐵昌が言ったが誰の耳にも届いておらず、美香子は「…なら私は残るわ~」と言った。
「いつ行く? 」
「ヒマダカラ、イマスグイッチャオウヨ」
スイコが晃の肩に乗って言ってきた。
スイコに続いて、テンノも晃の肩に乗った。
「今すぐ…? 今すぐ…? いいわよ…行きたい…行きたい…」
心なしかヨウダイはワクワクしているように見えた。
「綺は大丈夫? 」
「大丈夫だよ」
綺は鉄パイプを握りながら言った。
「なら行っちゃおうか」
「うん。では美香子さん、鐵昌さん。行ってまいります! 」
「あ~綺ちゃんたち~。念のためにこれ持っていったらどうかしら~」
美香子が渡してきたものは、トランシーバーだった。
「何かあったらこれで教えてね~」
「ありがとうございます。それでは気を取り直して、美香子さん、鐵昌さん。行ってまいります! 」
綺が美香子と鐵昌に向かって、敬礼する。
美香子は手を振りながら「いってらっしゃい~」と見送った。
鐵昌は声を絞って「無理だけはするなよ…」と言ったが、また誰にも聞こえてなかった。




