第六十三話 応急処置
血生臭い通路を歩き、綺たちはコンビニのに着いた。
着いた途端、綺、晃、美香子は目を丸くした。
「え!? なにこれ!? 」
コンビニのシャッターが、大破していた。
足元に散らばっている商品に足を取られないように、慎重に従業員部屋に向かった。
そして、また目を丸くした。
従業員部屋の壁や床に、大きな亀裂が走っていた。
綺たちがいないときに、アナホベが襲撃してきた跡が残っていたのだ。
「アナホベがここに来たんだよ…。お前たちが出っててる間にな…」
「そうだったんですか!? 大丈夫でしたか? 」
「大丈夫だからここに居るんだろ…」
晃は鐵昌の腕をとって床に座らせた。
その時、美香子が晃に話しかけた。
「あ~晃くん~。腹部打撲なら~座らせるより寝かせた方がいいわよ~」
「そうなんですか? 」
「わざわざ寝っ転がらなくても、座ってりゃ治るだろ…」
鐵昌の発言に、美香子は少し眉をひそめて言った。
「見てないから分からないけど~、外部に目立った損傷がなくても~もしかしたら内臓は傷ついちゃってるかもしれないわよ~? 最悪の場合破裂しちゃってるかもしれないし~…」
内臓の破裂と聞いて、綺と晃は少し顔が青くなっていた。
鐵昌はなにも反応していなかったが「じゃあ一応…」と言って、亀裂のないところで横になった。
「あ~ちょっと待っててください~」
そういうと、美香子はテーブルのところからパイプ椅子を持ってきた。
鐵昌の足元に開いて置いた。
「ここに足を乗せてくれませんか~? 膝を曲げて~お尻は床につけたままでいいので~」
鐵昌は言われた通りの体制になった。
普通のパイプ椅子より少し低めだったので、ちょうどいい高さだった。
「…なんか意味あるのか? 」
「そのまま寝っ転がるよりも~こうした方がお腹がたるんで楽になるんですよ~」
「…確かに…少し楽だな」
「吐き気とかはあったりしますか~? 」
「…ある」
「それなら~顔を横に向けておいてください~。今は応急処置しか出来ないので~なるべく楽な姿勢をとるように心がけてください~。私~エチケット袋持ってきますね~」
美香子はコンビニの店内に行き、床に散らばっている商品の中からエチケット袋を三個と、ペットボトルの水を持ってきた。
「出そうになったら我慢しないで吐いてくださいね~? ここに袋置いておきますね~。後~お水も置いておきますね~」
「…恩に着るぜ」
美香子は一息ついて、テーブルの上に置いてあった水を飲んだ。
美香子の様子を見ていた綺と晃は、少しポカーンとしてから拍手した。
「美香子さん凄いです! 看護師さんみたい! 」
「医療関係の仕事でもしているんですか? 」
綺と晃が目をキラキラさせている。
水を飲み終わってから、美香子は答えた。
「看護師の資格は持ってるけど~。仕事は違うのをやってるわよ~」
「看護師…資格…。凄いわ…凄いわ…」
「シカクッテナニ? スゴイノ? 」
「シラナイ」
スイコとテンノは、あまり興味を示さなかった。




