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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第伍章・時間潰しのスタンプラリー
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第六十三話 応急処置

 血生臭い通路を歩き、綺たちはコンビニのに着いた。

 着いた途端、綺、晃、美香子は目を丸くした。


「え!? なにこれ!? 」


 コンビニのシャッターが、大破していた。

 足元に散らばっている商品に足を取られないように、慎重に従業員部屋に向かった。


 そして、また目を丸くした。

 従業員部屋の壁や床に、大きな亀裂が走っていた。

 綺たちがいないときに、アナホベが襲撃してきた跡が残っていたのだ。


アナホベ(あいつ)がここに来たんだよ…。お前たちが出っててる間にな…」


「そうだったんですか!? 大丈夫でしたか? 」

「大丈夫だからここに居るんだろ…」


 晃は鐵昌の腕をとって床に座らせた。

 その時、美香子が晃に話しかけた。


「あ~晃くん~。腹部打撲なら~座らせるより寝かせた方がいいわよ~」


「そうなんですか? 」

「わざわざ寝っ転がらなくても、座ってりゃ治るだろ…」


 鐵昌の発言に、美香子は少し眉をひそめて言った。


「見てないから分からないけど~、外部に目立った損傷がなくても~もしかしたら内臓は傷ついちゃってるかもしれないわよ~? 最悪の場合破裂しちゃってるかもしれないし~…」


 内臓の破裂と聞いて、綺と晃は少し顔が青くなっていた。 

 鐵昌はなにも反応していなかったが「じゃあ一応…」と言って、亀裂のないところで横になった。


「あ~ちょっと待っててください~」


 そういうと、美香子はテーブルのところからパイプ椅子を持ってきた。

 鐵昌の足元に開いて置いた。


「ここに足を乗せてくれませんか~? 膝を曲げて~お尻は床につけたままでいいので~」


 鐵昌は言われた通りの体制になった。

 普通のパイプ椅子より少し低めだったので、ちょうどいい高さだった。


「…なんか意味あるのか? 」


「そのまま寝っ転がるよりも~こうした方がお腹がたるんで楽になるんですよ~」

「…確かに…少し楽だな」


「吐き気とかはあったりしますか~? 」

「…ある」


「それなら~顔を横に向けておいてください~。今は応急処置しか出来ないので~なるべく楽な姿勢をとるように心がけてください~。私~エチケット袋持ってきますね~」


 美香子はコンビニの店内に行き、床に散らばっている商品の中からエチケット袋を三個と、ペットボトルの水を持ってきた。


「出そうになったら我慢しないで吐いてくださいね~? ここに袋置いておきますね~。後~お水も置いておきますね~」

「…恩に着るぜ」


 美香子は一息ついて、テーブルの上に置いてあった水を飲んだ。


 美香子の様子を見ていた綺と晃は、少しポカーンとしてから拍手した。


「美香子さん凄いです! 看護師さんみたい! 」

「医療関係の仕事でもしているんですか? 」


 綺と晃が目をキラキラさせている。

 水を飲み終わってから、美香子は答えた。


「看護師の資格は持ってるけど~。仕事は違うのをやってるわよ~」



「看護師…資格…。凄いわ…凄いわ…」

「シカクッテナニ? スゴイノ? 」

「シラナイ」


 スイコとテンノは、あまり興味を示さなかった。

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