第六十話 交わる
コンビニの外に飛び出し、辺りを見渡すアナホベ。
「っと…あ!! いた!! 待ちやがれー!!!! 」
コンビニから離れたところで歩いている鐵昌とヨウダイを、アナホベが発見した。
そして、走り出す。
「見つかった…見つかった…」
「チッ…! …とっとと走って逃げ…」
「テツアキ! アブナイ! 」
「ヨケテ! 」
スイコとテンノが言う。
一瞬のうちに鐵昌の背後に移動したアナホベが、拳を振りかざそうとしていた。
その拳を、間一髪で避けた。
さっきと同じように、アナホベが床に衝突し、床に亀裂が走る。
「…今のうちに、走るぞ」
「ああ…分かったわ…分かったわ…」
鐵昌とヨウダイはアナホベから離れるために走った。
真っ直ぐ走って距離を稼ごうとしたが、正面には大勢のバキュロが蠢いていた。
後ろからはアナホベが来ており、武器なども唐突のことで持ってくるのを忘れてしまったので、残された道はバキュロのいない右の通路へと曲がるしかなかった。
鐵昌とヨウダイはバキュロを避けるために右に曲がった。
「ショウアンさん。また来てしまってすみません」
「いえいえ。蘇我見様たちを手助けするのが、私の役目なので」
綺、晃、美香子は再びショウアンのところに来ていた。
「聖間社長の会社って、何年前に開業したんですか? 」
「会社というと…『ウマヤド』のことでございますね。少々お待ちを…」
そういうと、沈黙が流れた。
「…正確な年代は分かりませんでしたが、開業した年は一九八〇年代と分かりました。とすると、開業したのは今から約三十…いえ、四十年くらい前ということになるでしょう」
「約四十年かあ。意外と歴史浅いんだね」
「そうだね」
綺たちはお礼を言って、ショウアンの元を去ろうとしたその時だった。
「あっ、お待ちください」
「どうかしましたか?」
ショウアンに止められた。
「今通路に出るのは…」
そうショウアンが言ったとき、通路の方から タッタッタッという走っているような足音が聞こえた。
「…マジか」
鐵昌とヨウダイが曲がった先は、行き止まりだった。
左右に店があり、道の先にはシャッターが降りていた。
上から垂れ下がっている看板には、『如月駅 南出口』と書かれていた。
一気に走ったせいでヨウダイは息切れしていた。
「…大丈夫か?」
「ああ…だいじょ…だいじょうぶ…だいじょうぶ…」
その時だった。
「次こそ当たれえええええ!!!!!! 」
「しまっ…!」
アナホベが鐵昌の腹に向かい、右の拳を打ち込んだ。
とっさのことで回避もガードも間に合わずもろに喰らってしまい、体がくの字に折れ曲がった。
鐵昌は勢いを落とさないまま、店のガラスに体をぶつけた。
その衝撃でガラスにピシピシとヒビが入り、最終的にガラスは割れ、鐵昌はそのまま店の中に飛ばされた。
「あら~? なんか足音聞こえないかしら~? 」
「本当だ。あと、凄く聞き覚えのあるような声が聞こえてきたような…」
店の中からガラス越しに、通路の様子が見えるので、綺たちは振り向いて通路を確認しようとしたその時だった。
ピシピシッ、ガッシャァァァァァーーーーン!!!!。
突然ガラスが割れ、何かが店内に向かって飛んできた。
何が飛んできたのかは、一瞬で分かった。
「て、鐵昌さん!? 」
飛んできたのは、鐵昌だった。
アナホベの攻撃を受けて飛ばされた店は、ショウアンがいる店だったのだ。
「か、海外のアクション映画みたいな登場の仕方してきた!! どうしたんですか!? …あれ? 鐵昌さん? 」
綺が飛び込んできた鐵昌に近寄り話しかけた。
「…し」
「し? 」
「死んだかと…思った…」
そういうと、鐵昌は喋らなくなった。
美香子が鐵昌の手首を触る。
「大丈夫よ~。気絶しているだけだわ~」
「ああ…良かった…」
晃が胸を撫でおろす。
「にしても、何があったんだろ…って、あれ!! 」
綺は鐵昌が飛んで来た方を指さした。
晃と美香子が、その方向を見る。
通路にヨウダイと、アナホベがいた。
「いや…いや…こないで…こないで…」
「もう無理だ…!!! とっとと喰わせろ!! 」
アナホベは、ヨウダイの首を掴もうとした。




