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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第伍章・時間潰しのスタンプラリー
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第五十九話 彼

 隣の店の入り口側の壁は全面ガラス張りだったので、外から内側の様子が見えた。

 元の面影はなかった。


 看板は廃れ、店内は何とは言わないが赤い液体や、朱色の塊が転がっていた。


「ここに‘‘ショウアン,,って人がいるの?」

「いると思うけど…あ、あそこ」


 綺が店の奥を指さした。

 人影のようなものが見えたのだ。


 綺たちは店の奥へと歩を進めた。


 そこに、()は居た。


 店の奥の床のところで、正座をしている影が一つ。


 袖丈の長い無地の服を着ていた。

 帽子を被っており、つばの部分から布が垂れ下がり、顔を見ることは出来なかった。


 垂れ下がってる布の裏から、長いひげが垂れているのがみえた。


「この人~…? が、社長が言ってたショウアンさん~…?」


 美香子が首を傾げる。

 顔は見えなかったが、膝の上に置いてある手の色が、バキュロと同じ肌色だったのだ。


 三人は襲われないか心配になったが、様子を見ていても一向に動く気配のないショウアンに、ついにこっちから話しかけることにした。


「あの…すみません。ショウアンさん…ですか?」


 晃が訪ねるも、ショウアンは動く気配がない。


「…まず、生きてるのかな?」

 と言いながら、綺はしゃがんで、つばから垂れ下がってる布に手をかけた。

 その時だった。



「生きてますよ…」



 ショウアンと思われる声が聞こえた。

「うおっ! 喋った!!」


 綺は驚いて、少し後ずさりした。

「おお…意外とおじさんな声…」


 綺はそう言って立ち上がった。

 おじさんな声といっても、気迫のあるような感じではなかった。

 簡潔に言えば、『普段は全く怒らないけど、ブチギレたら絶対に怖いタイプのおじさん』といった感じだった。


「あなたは…」

「紹介が遅れましたね。瞑想していたもので。(わたくし)はショウアンという者です。ご主人様の(めい)で、あなた様方の手助けをする者でございます。以後お見知りおきを…」


 ゆっくりと手を床につけてお辞儀するショウアン。

 その行動につられて、三人もお辞儀する。


「お三方の名前は承っております。蘇我見綺様、物岐晃様、天智美香子様。お待ちしておりました」


「えへへ、なんか照れるな…」

 晃が頬を掻く。


(わたくし)は、この体になった瞬間に、ご主人の全てが流れ込んできました」


「全て~…ですか~?」

「左様です。ご主人様がお持ちになっておられる知識、技術、思い出。そして…脊椎動物対応型バキュロウイルスを開発をした()()など…」


「目的…? 社長がそんなことをした目的って、なにかあるんですか?」

「…それだけは、口が裂けても言えません。ただ一つ言えることは、ご主人様は、目的のない行動はしない…ということだけ…」


 聖間について、ますます謎が深まった瞬間だった。


「ところで、なにかご用件がおありでこちらに来たのでは?」

「あ、そうです」


「この如月駅は~、西暦何年に開業したのですか~?」

「この駅の・・・開業した年・・・」


 数秒間の沈黙が走った。


「明治四十二年、十二月六日…西暦に直すと、一九〇九年ということになります」


「早!」

「本当にあってるんですか!?」

「もし違っておられたら、ご主人様の記憶の方に支障があるかと…」


 ショウアンの言葉に晃がクスッと笑ってから、三人は飲食店の聖間が映るモニターの前に戻った。



「「ヘイしゃちょー!」」


 綺と晃が画面に向かって声を合わせて言う。

 それと同時に、画面に聖間の姿が映る。


『それ流行ってるの? 僕人工知能じゃないんだけど』


 若干苦笑い気味で話す聖間。

「答えが分かりました~」


『おっ、てことは、彼に会ったんだ』


「答えは~…西暦一九〇九年です~」

『ファイナルアンサー?』

「はい~」


『せいかーい! 一九〇九年十二月六日に、この駅は開業しましたー!』


 画面の向こうで、聖間は拍手する。

 美香子はホッと胸を撫でおろした。


『この調子で、最後の問題いっちゃう~?』


「あ、そっか。全部で五問だから、もう次が最後なんだ」

「行っちゃいましょうよ」

「そうね~。社長~! 最後の問題出してくださーい~!」


『了解! それじゃ、最終問題! 僕の会社、ウマヤドは、今年で開業約何十年目でしょうか! 一の位は言わなくていいよ! 約何十年かだけ答えてね! それじゃ、シンキングタイムスタート!』


 聖間は新しいコップにメロンソーダをついで、一気飲みしていた。


「駅の次は会社…だけど、今度は開業してから何年目か…」

「美香子さんが子供のころには、もうありましたか?」


「あったわよ~。小さい頃はよく怪我してたから~かなりお世話になってたわよ~」


 「となると二十五年以上前…」と綺は考えていたが、そもそもいつもお世話になっている会社でも、この会社は開業何年だろうなんて考えたこと無かったので、考えただけ無駄だった。

 それは、晃も同じだった。


「これはまた…」

「ショウアンさんのところに行かなきゃ分かんないね…」


 そういうと、綺たちは再度ショウアンのところへと向かった。

色んな用語や人名が出てきてゴチャゴチャしてきているので、いつか用語集とか作りたいと思います

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