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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第伍章・時間潰しのスタンプラリー
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第五十八話 平行線

『それでは、シンキングタイムスタート!』


 そう言うと、聖間は紅茶をすすった。


「如月駅が開業した年?」

「全然わからないわ~」


 三人が頭を抱えて悩む。

 そんな姿を画面越しで見ていた聖間はフッと笑ってから、綺たちに助言した。


『前にチラッと言ったけど、もし困ったことがあったら()に聞いてみてごらん。色々知ってるから』


「彼…?」

「あ、そういえば…」


 何かを思い出した綺は、スタンプ用紙に書いてある地図を開いた。

「もしかして、これのことじゃない?」


 綺は地図上の現在いる飲食店の隣、『ショウアン』と書かれている場所を指さした。


「あー、そこのことか。確かにそんなこと前(第四十六話)に言ってたね」

「ここに行けば~何か分かるのかしら~?」


「すぐそこだし行ってみようよ」


 綺の意見に、晃と美香子は賛成した。


 飲食店を出ていく三人を、聖間は画面越しに『いってらっしゃーい』と手を振りながら見送った。


 その時、聖間は『ん?』と声を出して別の方向を向いた。


『…おー。凄いことになりそうだね』


 聖間は少し笑っていた。








 ヨウダイがアナホベに喰われそうになる。

 そこを鐵昌が回避させた。


 ヨウダイの腕を間一髪で引き、アナホベからの奇襲を避けたのだ。


 それと同時に左手で鉄パイプを持ち、ヨウダイを喰おうと開いていたアナホベに口に、鉄パイプを振った。


 アナホベの力は予想以上に強く、鉄パイプが当たった瞬間、鐵昌の左腕に千切れるような痛みが走った。


 だが、鐵昌も負けていなかった。

 鉄パイプが顔にクリーンヒットしたアナホベは、そのまま後ろに吹っ飛んでいった。


 壁に思いっきりぶつかったが、なんとか意識はあった。


「いってえええええ!!!! 歯折れたかと思ったぜ!!!」


 アナホベは頬を抑えていた。

 その言葉を聞いて、鐵昌は持っていた鉄パイプを見た。


 鉄パイプは、ぶつかった衝撃でくの字に折れ曲がっていた。

 接触した部分には、歯型のようなものがついていた。


 もし、この鉄パイプが人間だったら…と想像した鐵昌の背中に悪寒が走った。


「よくもやってくれたな!!! 次はぜってーに…!!」

「ちょっ! 待ちなさ…」


 ハシヒトが止める前に、アナホベは動いていた。


「喰う!!!」


 アナホベは、鐵昌とヨウダイに向かって突進してきた。

 どうすればいいのか分からず固まっていたヨウダイの腕を鐵昌が引き、二人ともアナホベを回避した。


 アナホベは勢いがあまり、そのまま床に衝突した。

 衝撃の大きさに、コンビニが轟く。


 床に大きな亀裂が走り、油断して歩いたら転びそうになる。


「…! 今です! 藤原さん! 命令してる感じで非常に恐縮ですが、今のうちにここから逃げてください!!」


「お、おう…」


 鐵昌はハシヒトとアナホベを見た。

 確かに、今逃げなければアナホベが起き上がり、再度鐵昌とヨウダイを襲う。


 頭の中で鐵昌が考えていると、ヨウダイの上に、スイコとテンノが乗ってきた。


「ナニボーットシテルノ!」

「ハヤク、ニゲロ!」


「ああ…って、前みたいにお前たちが殴れば時間稼ぎできるんじゃねえのかよ」

「イマ、ワタシタチ、オナカスイテル」

「ウゴキタクナ…、ウゴケナインダヨ」


「なんだそりゃ…」

 スイコとテンノにそう言われ、鐵昌とヨウダイは従業員部屋を出て行った。


 ハシヒトは鐵昌達の後姿を見て、「本当にごめんなさい…」と相手に聞こえないくらいの声量で言った。


 

「酷いわ…酷い…酷い…」

 コンビニ店内の様子を見て、ヨウダイが呟いた。


 シャッターは破壊され、商品棚は入り口側からドミノのように倒れ、中に置いてあった商品は床に散乱していた。


 入口の自動ドアやアイスケースなどは衝撃で割れ、ガラスの破片がそこらへんに散らばっていた。


 鐵昌とヨウダイは足元に気を付けながら、コンビニの外に出た。



「あれ!? あの美味そうなやつ奴どこ行った!?」


 床から上体を起こし、辺りを見渡す。


「もしかして…! 逃げられたのか!?  ちっくしょー! ぜってー喰ってやるからな!」

「アナホベ、やめなよ…。私たちだって元は人間・・・」


「あー? んなのいいだろ別に! 腹減ってるんだし! それより、とっととヨウダイ(あいつ)捕まえて、俺とハシヒトで山分けして喰おうぜ!!」


 アナホベは立ち上がり、一目散にドアのところへと行った。


「ん? 何してんだよ。早く追いかけに行こうぜ!」

「アナホベ…」


 ドアノブに手をかけ、ドアを開ける。


「っと、いけね。部屋を出る前に…失礼しました!!!!!」


 ハシヒトも言っていたが、こういうところはちゃんとするらしい。

 アナホベが出て行き、部屋に残されたハシヒトは、一人、切ない顔をしていた。



「本当に…何もかも忘れちゃったんだ…」



 そしてハシヒトは、アナホベの後を追った。

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