第五話 小さな絶望
謎の生物に見つからないかつ大人数でもいられる場所というのは、この如月駅内ではかなり限られた。
急いでたあまり部外者は普段絶対に入れないコンビニの従業員部屋に入ってしまった。
思っていた以上に広く、綺達五人が入ってもゆとりは十分あった。
「とりあえず自己紹介しようぜ。まず俺の名前だけど、俺は広崎 丈弥。今は大学生でフリーターだ」
「次俺の番! 俺の名前は宮本 永介! サバゲーが趣味な大学生! こいつらとおんなじ大学だ! 」
永介は二人の肩を組んだ。
「あ、因みに俺は決して変態じゃないからな! ただ女の子が好きなだけだー! 」
「あーはいはい。話長い。えーっと俺の名前は西谷 怜。ま、よろしく」
綺と晃は「よろしくお願いします」と頭を下げ、自己紹介をした。
「へー綺ちゃんって言うのか! いい名前だね! 」
永介が言ってきた。
丈弥や永介は綺や晃に色々話しかけてくるが、怜はだけは一人で休憩室に置いてあった本を眺めていた。
「むっ! 」
永介がいきなり立ち上がった。そのせいで隣に座っていた晃の椅子が揺れ、バランスを崩して。倒れた。
「痛! い、いきなりどうしたんですか?」
「すまない。でも今、確かに聞こえたんだ。どこかで女性が俺を呼ぶ声が! 」
「別にお前を呼んだわけではないだろうけど……。どこかでまた襲われてんのか? 」
丈弥が顎に手をあてて考え込む。綺は聞いてみた。
「どういうことですか? 」
「ああ、永介の言っていることはでたらめに聞こえて妙にさっきから当たっているんだ。さっきだってほら、綺たちと会った時も女性が奴らに食われていただろう? あれに気が付いたのは永介のおかげなんだ。ま、少し手遅れだったがな」
丈弥は永介と怜と少し話し合い、パイプを持って部屋の外に出ようとしていた。そこに晃が駆け寄った。
「あの、僕たちはどうすればいいんですか? 」
「おまえたちはここに残れ。被害を最小限に抑えるためだ」
怜が言った。そして三人は部屋から出ていった。
二人になって少しの沈黙があったあと、綺はバックの中を探った。
「私警察に電話してみる」
「おお! 確かに電話すれば解決だね! 」
二人の顔が明るくなった。綺は普段使わないダイヤルパットに110と打ち、耳にスマホをつけた。
しかし、そこから聞こえてきたのは
『おかけになった電話番号は現在使われていません』
綺の顔からサーっと血の気が引いた。何度かけなおしても繋がらない。そんな馬鹿なと、インターネットで【110番 繋がらない】と検索しようとすると画面には
『電波が繋がっていません』
と、書かれていた。
スマホの上の方を見てみると圏外の二文字があった。