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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第伍章・時間潰しのスタンプラリー
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第五十一話 前ぶれ

「そういえば、アナホベくんがいないけどどうしたの?」

「あ、はい。アナホベなら蘇我見さんたちを探してて二手に分かれて行動していました。今はどこにいるか分かりませんが、多分私と同じようにそのヨウダイ…さん?  の匂いにつられてやってくると思いますけど…」


「ア、アナホベってあの騒がしい犬〇家のバキュロのことですか?」

 晃が鐵昌の方を見て聞いた。

 晃の中ではアナホベ=犬〇家という数式(?)が出来ていた。


 鐵昌は犬〇家という言葉を聞いて、呆れながら「そうだろうな」と返答した。


「そろそろ綺たちの元へ戻りませんか? あんまり遅いと外に出てきてしまうかもしれないので」

「…そうだな」

 そう晃に言った後、鐵昌は小さな声で「早くこんな奴と離れたいし」と、聖間を横目で睨みつけながら言った。

 聖間は鐵昌のその言葉が聞こえなかったらしく、特に何も言ってこなかった。


「晃くんたち戻っちゃうの? じゃあねー! また今度! スタンプラリー、頑張ってねー!」

 聖間が屈託のないような笑顔で手を振って晃と鐵昌を見送る。


 鐵昌は一刻も早く聖間と別れたかったので、聖間の見送りを無視してズカズカとコンビニに入っていった。


「入っていってしまいましたね…」

「んもう鐵昌くんったら、会釈ぐらい返してくれればいいのに」

 聖間は腕を組んでふくれっ面になる。


「では、僕もこれで…」

 と言ってから、晃もそそくさとコンビニに入っていった。




 従業員部屋に入って、綺たちと合流する。

「あれ? 鐵昌さんは…」

 

 と言いかけた時、部屋の隅で鐵昌が壁の方を向いて寝っ転がっているのが見えた。

「さっき部屋に入ってきたかと思ったら『イラつくのにはとっくに飽きた』、とか呟いてそのまま寝ちゃったんだよ。なにかあったの?」

 綺が晃に話しかける。


「あーうん。ちょっとね」

「ていうか、さっきからスイコとテンノがヨウダイさんが匂う、って変なこと言ってるんだけど晃は何か匂い感じる?」


「匂い? …ってああ。その匂いの正体なら、さっき社長から聞いたけど…」

「あらあら~? 社長にあったのかしら~?」


 美香子の問いに晃は「はい」と答え、スイコたちバキュロだけが嗅ぎ取れる匂いの元は、『ミホトケ』を使用し副作用が現れたヨウダイだということを教えた。


「それでもって、改めてスタンプラリーに挑戦しますかって社長に聞かれて、鐵昌さんがやるって言ったんですよ」

「それ言っちゃったら、もうやらないわけにはいかないじゃん」

「そうね~。まあでも~、使ったとしてもバキュロに食べられちゃうわけじゃないし~、持っているだけでも保険になるんじゃないかしら~」


「鐵昌さんもそれと全く同じようなこと言ってましたよ」

「まあでも、どうせ暇だしやってみようよ」

「暇って…。でもやることないし、やってみようか」


 綺たち三人で会話が盛り上がっていた様子を、ヨウダイは見ていた。


「あたし…? あたし…せい…? あたしの…せい? みんな…たべられちゃうの…?」

 感情が上手く表せないのか、表情も声のトーンも変わっていなかったが、その声が震えていることだけは分かった。

 責任を感じているのだろうか。


「そ、そんなことないですよ! ヨウダイさんは何も悪くありませんよ!」

「誰もヨウダイさんが悪いなんて一言も言っても思ってもないですよ」


 綺と晃が、ヨウダイをフォローする。

 それを聞いたヨウダイは「ありがとうね…。ありがとうね…」と言った。 

次回からスタンプラリー開催。

リアルの方で色々あるので、更新遅れます。

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