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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第参章・温泉という名の安全地帯
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第三十五話 温泉 壱

「うへぇ…広さヤバ…」

 綺は浴場に入った瞬間に、思わず言葉が漏れた。


「いつの間にこんなに広い浴場作ってたのね~」

 美香子が髪を束ねながら入ってくる。


 こんなに要らないだろと思ってしまうぐらいのシャワーの量。

 余計に広い温泉。壁には銭湯でよく見かけるような富士山の壁画。

 水風呂や桑拿(サウナ)まで完全装備されていた。


  綺の足元をスイコとテンノが通り、浴場に入っていく。

「オンセンダー」

 と言いながら温泉に飛び込み、ダイブする。

 綺が「こらこら」と言いながらシャワーのところの椅子に座る。


 シャンプー、コンディショナー、ボディソープが置かれていた。

 初めて見る容器だったが、書かれている言語が英語だったので、綺は特に根拠もないまま「高級な奴だ」と思っていた。


「うふふ~。眼鏡外した綺ちゃんも可愛いわね~」

 美香子にそう言われ、綺は照れた。

 その時だった。


「ネエネエ、アヤ、ミカコ」

 綺と美香子は声のした方を見た。


「どうかしたの? えーっと…テンノ? 」

 綺は服を脱いだスイコとテンノの見分けがつかず、自信なさげに名前を言った。

「イヤ、ワタシスイコダケド」

「あ、ごめんなさい」

「なにかあったのかしら~? 」


「テンノガ、スズンダママ、ウカンデ、コナクナッタ」


 スイコが淡々と言う。少し間が開いて、綺と美香子は驚きの声を発した。

「え!? それって、溺れてるってこと? 」

「大変じゃない~! 早く助けないと~! 」


 美香子と綺が立ち上がって浴槽へ駆け足で向かう。

 その時、綺は濡れた足で走っていたので尻餅をついて転んでしまった。

「痛ー!!! 」

「綺ちゃん~!? 大丈夫~!? 」

「うう~。(ここ)に閉じ込められてからよく転ぶな~」


 美香子がしゃがんで綺を立たせるのをエスコートしようとするが、綺は「私よりもテンノを助けてあげてください」と言った。

 美香子は一瞬悩んだが、綺の言葉に甘えて、テンノのところに向かった。


 浴槽に足を入れてテンノを探そうと思ったが、小さいテンノをもしも踏んでしまったら大変なことになるかもしれないので、まず浴槽に入る前に浴槽の外からテンノを探すことにした。


「ミカコ、アソコ」

 美香子のそばにいたスイコが浴槽を指さす。

 お湯がある中に一か所だけ泡がプクプクと出ている場所があった。

 まさかと思い目を凝らして見てみると、泡の真下に沈んでいるテンノの姿があった。


 見失わないように波を立てないよう心掛けながら浴槽に入る。

 手を入れてテンノをすくいあげる。


「シ、シヌカトオモッター」

「モウ、シンデルヨウナ、モノデショ」

「良かったわ~。無事だったわ~」

 美香子はヘナヘナとお湯に潜り込む。


「ミカコ、アリガトウ」

「どういたしまして~」


 そうこうしている間に、綺が起き上がって美香子に近寄る。

「…私、立ち上がって尻餅ついただけじゃん。なんも出来なかったよ…」


 綺は恥ずかしくなり、手で顔を覆った。






「鐵昌さん! ちょっと来てください! 」

 晃が鐵昌を手招きで呼ぶ。

「…なに? 」

「この『シャムポー』とか『リンケ』って、なんですか? 」

「…? 」


 英語で書かれたボトルを指さしながら晃は言った。

 鐵昌は、最初は晃が何を言っているのか分からなかったが、ようやく意味を理解した。


「…ああ、そういうこと。シャンプーとリンスってことだろ。なんでそのままローマ字読みしてんだよ」


 鐵昌はため息をついた。

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