第二十九話 成功例
「んじゃそういうことで! これからも死なないように頑張って生きてね~! 」
聖間が美香子と鐵昌に背を向け扉を開ける。
「攻略のヒントが欲しかったら…いつでも呼んでくれてかまわないからね?」
聖間は首だけを動かして美香子と鐵昌の方を見て喋る。
目を細め、ニヤニヤとしながら言った後、扉を通り閉めた。
「あらあら~! ちょっとまだ聞きたいことが~…」
美香子が扉を開ける。
しかし、聖間の姿は無かった。
あたりを見渡しても、人も、謎の生物バキュロすらいなかった。
「いなくなってる~…? 」
美香子はあたりを再度見渡した。
「…一旦晃たちの元へ戻ろう。このことは、一応言っておこうぜ」
「そ、そうですね~」
美香子と鐵昌は扉を通る。その時だった。
「ココガ、ゴシュジンサマガイッテタ『ドーゴヨクジョウ』? 」
「タブン、ソウダトオモウヨ」
突如聞こえた第三者、第四者の声。
美香子と鐵昌はその声を聞いて誰だと思いながらあたりを見渡す。
「デ、コノヒトタチダレ? 」
「コノヒトタチガ、ゴシュジンサマガイッテタ、ミカコと、テツアキジャナイノ? 」
声はすぐ近くから聞こえる。
ふと気づき、美香子と鐵昌は同時に足元を見る。
そこにいたのは、とても小さくお互い容姿が似ている双子の子供だった。
ただ、肌の色がバキュロと同じ、喋り方が片言なことから、この二人は人間ではないとすぐに察しがついた。
美香子は驚き、少し後退した。それを見てその子たちは、声を揃えて「ア、ヤットキヅイタ」と言った。
鐵昌は表情も行動もなにも変えなかった。そして、足元にいる子に向かって話しかけた。
「お前ら…人間なのか? 」
「オオ。ゴシュジンサマガイッテタトオリ、テツアキアタリツヨイ」
「ワタシタチ、ニンゲンジャナイヨ」
「そうか…やけに話し方に人間味がある感じがしてな…」
「デモ。ゴシュジンサマイッテタ。ワタシタチ、『セイコウレイ』ダッテ」
「ワタシタチ、ホカノヤツトクラベテ、ニンゲンニチカイカラ」
「人間に近いから成功例…? 」
鐵昌が腕を組む。
後ずさりしていた美香子が二人に近づき、話しかける。
「えっと~。ズバリ二人は~何者なのかしら~?」
「ソッカ。マダイッテナカッタ」
「ワタシハ、スイコ」
「ワタシハ、テンノ」
「ワタシタチハ、カンセンリョクガナクテ」
「ヒトニムガイナ、セイコウレイノバキュロ」
「「ッテ、ゴシュジンサマガイッテタ」」
息ぴったりの二人。
スカートを履いている方がスイコ。ズボンを履いている方がテンノ。
スカートかズボンか。それぐらいしか、二人を見分ける方法がなかった。
「ホントウニ、カンセンリョクナイ」
「カミツイテモ、ハダサワッテモ」
「ニンゲン、バキュロナンナイ」
「「ッテ、ゴシュジンサマガ・・・」」
「あーはいはい。もう分かった」
鐵昌が面倒くさそうにスイコとテンノのセリフを遮る。
「…お前らが言うご主人様ってのは、聖間 胡霧のことか?」
「ソリャソウダヨ」
「ワタシタチ、ウンデクレタヨウナヒトダモン」
「産んでくれたって…お前らは人造人間みたいなもんなのかよ」
「イヤチガウヨ? トイウカ、ニンゲンジャナイシ」
「モトモト、ワタシタチ、コノエキツカッテタ、ニンゲンダッタヨ」
「マア、ニンゲンダッタコロノ、キオクハナイケドネ」
「ワタシタチ、ノウミソ、クサッテルカラネ。ブツリテキニ」
「あらあら~。元々人間だったのね~」
美香子はスイコとテンノの顔をしゃがんで覗き込む。
「そろそろ戻ろうぜ。何気に時間結構経ってるしよ」
「そうね~。綺ちゃんたちお腹すかせて待ってるかもしれないしね~」
美香子が立ち上がり、鐵昌と一緒にその場を去ろうとする。
「ドッカイクノ? 」
スイコかテンノ。どっちかが訪ねてきた。
「私たちの拠点~? に帰るのよ~」
「ヒマダカライキターイ」
「ツイテイキターイ」
スイコとテンノが手を挙げながら言う。
美香子は「えっ」と声を出してから鐵昌の方を向いた。
鐵昌は何も言わず、ただ目を細めながらスイコとテンノを見ていた。
「モシカシテ、テツアキ…」
「ワタシタチノセイデ、ゴシュジンニ、イバショガバレルノ、シンパイシテル? 」
「…それも少しあるけど」
「シンパイスルヒツヨウナイヨ」
「ドウセゴシュジン、テツアキタチノキョテンシッテルシ。イマダッテ、ワタシタチノコト、ミテルシ」
スイコとテンノにそう言われ、鐵昌は小さく溜息を吐いた。
「…別に…ついてきても俺は構わねえけど・・・お前はどうだ? 」
「私もついてきていいと思ってるわよ~」
美香子と鐵昌の言葉に、スイコとテンノは同じ声のトーンで「「ワーイ」」と喜んでいた。
その次に、スイコとテンノが美香子と鐵昌に近づき、スイコが美香子の胸に。テンノが鐵昌の頭に飛び乗った。
体に見合わない驚異的な跳躍力に、鐵昌は少し驚いていた。
「アンナイシテー」
「アルクノ、メンドウクサーイ」
美香子は胸にしがみついているスイコを手の上に乗せた。美香子はスイコがかわいく見えた。
鐵昌の頭の上にいるテンノは体をうつ伏せにし、顔を前に向けながら鐵昌に「ススメー」と指示していた。
鐵昌は最初はすぐ頭からテンノを降ろそうかと思ったが、面倒くさくなりそのまま綺たちの元へ戻ることにした。
片仮名のセリフが分かりづらかったらごめんなさい。
セリフででスイコとテンノを表す方法を考えた結果、こうなってしまいました




