番外編茶番・壱 平和ボケしりとり
日常風景の端くれです。
「ねえねえ綺。しりとりしよ」
「いいよー」
特に何も派手なことが起こらないので、平和ボケで綺と晃はボーっとしていた。
少しでも暇をつぶすためにしりとりを始めた。
「じゃ僕から。しりとり」
「リンカーン」
「…終わったね」
「そうだね…」
ボーっとしながら間の抜けた声で会話する。
「次はもっと続けよ」
「分かった」
「しりとり」
「離婚」
「…」
綺がまた終わらせてしまった。
「綺」
「なに? 」
「僕がしりとりって言うから、その次綺は『りんご』って言って」
「えー。面白くないじゃん。なんで指定するの」
「逆にあなたはなんであなたはすぐ終わらせちゃうの」
晃が言い返す。
綺は反論するのが面倒くさくなり、りんごと言うと言った。
「じゃあ行くよ。しりとり」
「りんご」
「ごはん」
「…」
綺は黙った。
晃はゆっくりと下を向き、「ごめん」と呟いた。
綺は「いいよ」と晃を許した。
「…こうして暇なのも、平和だからいいことなのかもね~」
「平和…って言われたら何とも言えないかな」
状況が状況なので、晃はどうとも言えなかった。
「最初の言葉をしりとりから始めるからすぐ終わっちゃうんだよ」
綺が言った。
「ふーん。じゃどうすればいいの?」
「例えば…平和からしりとり始めるとかは?」
「いいんじゃない?」
晃は賛成した。
「んじゃ私から。平和」
「ワンタ…わに」
「にんじ…、にんにく」
「クエンさ…クリスマス」
「スリザリ…すっぴん。…あ」
終わった。
綺も晃も何とか最後に『ん』がつく言葉を回避していたが、綺がやらかしてしまった。
「最後に『ん』がつく言葉をポンポン出すって、ある意味才能じゃない?」
晃が呟く。
綺と晃は顔を見合わせた。
数秒の沈黙が走った後、二人は同時に床に寝転がった。
「やることないなら…」
「寝よ」
次の瞬間、綺と晃は眠った。
はたから見たら意味の分からない行動をずっと見ていた美香子と鐵昌は、綺と晃について話し出した。
「しりとりすぐ飽きるわ終わったと思ったらすぐ寝るわ、こいつらどんだけマイペースなんだよ」
「最近の中学生ってこんな感じなのかしら~?」
そう会話していると、綺が寝言を喋りだした。
「あー!他にも『す』から始まる言葉あったぞー!スプーン、スッポン、スペイーーーーーン…!」
綺がよだれを垂らしながら寝言をはく。
しかし、見事に全て『ん』で終わっていた。
胸を張って高らかに『ん』のつく言葉を言っているのを見て、美香子は顔がほころび、鐵昌は呆れていた。




