第十六話 探検 其の壱
「そうだ、探検しよう!」
綺がいきなり言い出す。
「どこかの番組のキャッチフレーズみたいなこと言い出していきなりどうしたの?」
「いやーね、こんなこと言うのもなんだけど暇なんだよ」
「確かに携帯とか使えないし暇よね~」
ちょっとやりたいことがあるんだよと言い、綺は話し出す。
・駅内放送で生存者を集められるか
・線路をたどって次の駅に行けば脱出できるのでは
ということだ。
確かに駅の出入り口が封じられていても、線路をたどればここから抜け出せるのではと思った。
晃は感心した。
晃は綺の探検の案に乗り、バットを持ち部屋を出ようとした。
「私もなんか武器欲しいなー」
「このパイプ使う?」
晃は永介たちが使っていたパイプを差し出した。
「冗談よしてよ…。なんか呪われてそう…」
綺は苦笑いした。
「私はここに残ってるわ~。気を付けてね~」
美香子が手を振って見送る。
改めて駅内を見渡してみるととても悲惨な状態だった。
辺りには腹を食い破られた屍の山。
壁には血痕がべっとりとついていた。
鼻をつく腐敗臭に、思わず鼻をつまんでしまう。
壁に貼ってある駅内の地図から、駅内放送の機材があるであろう場所を探し、晃と綺は向かった。
「あだぁっ!」
綺は足元にあった本に気が付かず、滑って尻餅をついてしまった。
「大丈夫? めっちゃ凄い音なったけど」
綺は立ち上がり大丈夫と言うと綺が踏んで滑った本の題名を見た。
【すぐ出来る!友達の作り方講座!第二巻】
綺は笑いそうになったのを変にこらえて、変な表情になった。
「第二巻ってことはシリーズ化してんだ…」
「どうでもいいわ」
「書いてる人陽キャ説」
「ちょっと中見てみようよ」
好奇心で本を手に取り、ページをめくる。
『友達を作るのに一番手っ取り早いのは相手を知ること、会話だ! 相手の反応をうかがって自分から話しかけていってみよう! あ、でもこの本読んでる時点で君友達いない陰キャラでしたねwwww人と話すのが苦手系人種でしょ! ご愁傷さまでーぇすwwwww! 』
綺は無言で本を元あったところに戻した。そして
「黙れ陽キャがぁぁぁぁぁぁ! こっちが陰キャって決めつけんなぁぁぁぁぁ!!! 」
本を何度も踏みつけた。
「女子って怖ぇぇ…」
「自称陽キャが陰キャ語んなよぉ~…。私だっていろんな人と会話してみたいのにぃ~…」
今にも泣きだしそうな顔になる綺。
そんなに深刻なのかと察し、綺を傷つけないように晃はしばらく黙った。
「これじゃない? 」
マイクのようなものがかかっているのが見え、綺は近づいた。
近くにはボリューム設定やオンオフのスイッチが付いている。
「早速やってみようよ」
「えー、壊さないでよ? 」
「多分大丈夫でしょ~」
綺はマイクを持ってオンオフスイッチを押した。
{あーあー。マイクテストーマイクテストー}
「…全然聞こえないよ? 」
「あれ? おかしいな…あっ」
放送機材の裏側を見ると、放送機材と繋がっているはずの配線が全て切れていた。
「…オワタやん」
綺は覚った。